陰陽道(Onmyōdō)――その名だけで、日本の古代から中世にかけての神秘的な世界を彷彿とさせるものがある。歴史的背景、信仰、そしてその中心人物である安倍晴明をはじめとする陰陽師たちの生き様。これらのテーマを中心に、近年の研究や文化的関心の中で、陰陽道の真実に迫る5冊の書籍を紹介する。この記事を通して、陰陽道の奥深さや、その背後に隠された歴史や信仰についての理解を深めていただきたい。それでは、古の日本の魅惑的な世界へと、一緒に旅を始めよう。

安倍晴明の一千年

法蔵館
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安倍晴明という名前を聞くと、多くの日本人が平安京のスーパー陰陽師(Onmyoji)としての彼のイメージを思い浮かべるでしょう。この書籍『安倍晴明の一千年』は、田中貴子著によるもので、2023年7月7日に法蔵館から初版が出版されました。

書籍の核心は、安倍晴明という歴史的な人物が、いかにして現代の日本人の間で神秘的かつ魅力的なキャラクターとして知られるようになったのかを解明することにあります。特に、晴明が平安時代に実際にどのような存在として生きていたのか、中世の『今昔物語集』や「狐の子伝説」、歌舞伎、近代・現代の伝奇小説、マンガ、映画、アニメまで、様々な時代や文化を通じて、彼のイメージがどのように変化してきたのかを詳細に追跡しています。

書籍の内容は複数の章に分かれており、それぞれが特定のテーマや時代に焦点を当てています。例えば、第一章では「帝都物語」を皮切りにして、平成時代の晴明ブームについて深堀りしています。一方、第二章では院政期における「晴明現象」を詳しく探るなど、幅広い内容が網羅されています。

また、書籍では平安京が「四神相応の地」として、風水(Feng Shui)的な思想に基づいてデザインされていたかどうかについての議論や、晴明自身の事跡、彼が直面した敵役たちについての詳細な解説も含まれています。

著者の田中貴子は、1960年に京都で生まれ、広島大学大学院で博士課程を修了。現在は甲南大学の教授として活動しており、専門は中世国文学や仏教説話。過去にも『中世幻妖――近代人が憧れた時代』や『いちにち、古典――〈とき〉をめぐる日本文学誌』などの著書を手掛けており、その独自の視点と深い知識で、読者を歴史の奥深さへと誘います。

この書籍は、安倍晴明という人物を単なる伝説や神話としてではなく、歴史的背景や時代背景をもとに多角的に解析することで、晴明の魅力を再認識させるものです。興味深いテーマや視点で紡がれる晴明の物語は、古代から現代までの日本文化の中で、彼がどのように評価され、変化してきたのかを理解するのに非常に役立つ一冊と言えるでしょう。

呪術と学術の東アジア: 陰陽道研究の継承と展望

編集:陰陽道史研究の会
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陰陽道(Onmyōdō、道教や仏教、古代の日本の伝統的な占術や占星術を元にして成立した日本独自の信仰や宗教的な体系)は、古代から日本の文化や歴史に深く関わる存在であり、様々な研究がなされてきました。この書籍は、陰陽道史研究の会によって編集され、最新の研究動向や見解をまとめたものとなっています。

本書は、陰陽道がどのようにして災害や病気の原因となるものを避けるための普遍的な方法や知恵として発展してきたか、またその知恵や文化が日本文化史に与えた影響についての深い洞察を提供しています。朝廷や幕府などの権力者との関係から、民間の信仰や習慣に至るまで、陰陽道の影響は非常に広範囲に及びます。

本書の内容は大きく三つの部分に分かれています。

  1. 呪術としての陰陽道: 陰陽道の実践者や信者がどのようにしてまじないや呪術を使用し、民俗信仰と結びつけながら災難を避けるための方法を見つけてきたかについての詳しい説明や研究が含まれています。この部分では、具体的な呪術の手法や実践、さらにはそれに関する伝説や伝承についても深く掘り下げられています。
  2. 学術としての陰陽道: 陰陽道はただの迷信や信仰だけでなく、独自の学問や研究としても発展してきました。この部分では、古代から近世にかけての陰陽師や学者たちがどのような研究や認識を持っていたのか、またその研究が日本の学術や文化にどのような影響を与えてきたのかについて詳しく解説されています。
  3. 東アジアという視点: 陰陽道は日本独自のものではありますが、その起源や影響は中国や朝鮮半島などの他の東アジアの国々とも深く結びついています。この部分では、東アジア全体の視点から陰陽道の独自性や影響について、さらには他の国々との比較や関連性についても詳しく説明されています。

この書籍は陰陽道に関する最新の研究や認識を提供するだけでなく、その歴史的背景や影響についての深い理解を得るための重要な資料となっています。陰陽道に関心を持つ人々にとって、この書籍は必読のものと言えるでしょう。

近世陰陽道の研究

著:林 淳
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近年、陰陽道(Onmyōdō)という古代日本の神秘的な宗教・哲学が再び注目を集めています。林淳著の『近世陰陽道の研究』は、この複雑で多様な学問の近世における実態を詳細に解き明かす貴重な研究書です。吉川弘文館から2022年10月3日に出版された本書は、近世日本の政治・宗教的背景と、陰陽道の役割と発展を中心に取り上げています。

近世の日本において、幕府の権力は陰陽師、つまり、宇宙の力を読み解き、未来を予知する能力を持つと信じられていた者たちを利用しました。特に、幕府は宗教者や芸能者を支配・統治する戦略の一環として、土御門家(Tsuchimikado family)に陰陽師としての支配の許可を与えました。この土御門家の権限は非常に強力で、占い師(fortune-tellers)、易者(diviners)、神子(shrine maidens)、そして多種多様な芸能者たちを取り込み、全国的な組織を形成していったのです。

しかし、この権力の背後にはさまざまな争論や葛藤が存在していました。土御門家の配下を増やすための策略として、修験(ascetic practices)を行う者たちや舞太夫(traditional dancers)との間で行われた争論などが取り上げられています。さらに、江戸幕府の陰陽道政策を通じて、近世陰陽道の未知の側面や真実が明らかにされています。

この著作は、近世陰陽道の深層を探求するための宝庫であり、日本の文化や宗教、そして政治の交差点にある陰陽道の真の役割と影響を理解するための必読の書籍です。

安倍晴明: 陰陽師たちの平安時代

陰陽道(Onmyōdō)は古代日本の神秘的な宗教・哲学であり、その中心人物として知られるのが、平安時代を代表する陰陽師、安倍晴明です。繁田信一著の『安倍晴明: 陰陽師たちの平安時代』は、この謎に満ちた人物、安倍晴明の実像に迫る注目の一冊として吉川弘文館から2022年10月3日に出版されました。

晴明という名は現代でも多くの人々に知られており、妖怪や怨霊を退治する「超人」としてのイメージが強く持たれています。しかしながら、安倍氏は古来から陰陽師を輩出してこなかった家系であり、そこには一体どのような背景や物語が隠されているのでしょうか。この書籍は、古記録を基にした繁田信一の緻密な研究により、晴明が現代に伝えられる超人的イメージよりも、むしろ出世や栄達を切望する中級貴族としての、人としての葛藤や生き様を浮き彫りにしています。

著者、繁田信一は、1968年東京都生まれ。東北大学・神奈川大学の大学院を修了後、現在は神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学国際日本学部非常勤講師として活躍しています。彼の主要著書には、『陰陽師と貴族社会』や『平安貴族と陰陽師』など、陰陽師や平安時代の貴族社会に関する研究書が多数含まれています。これらの著作からも彼の深い知識と情熱が伺え、『安倍晴明: 陰陽師たちの平安時代』もその集大成とも言える作品であることがわかります。

平安時代の複雑な宮廷文化や宗教観、そして陰陽道との関連性を知りたい読者、また、安倍晴明という人物に興味を持つ読者にとって、この書籍は必読の一冊となるでしょう。

陰陽道 術数と信仰の文化

著:山下克明
¥3,740 (2023/10/19 14:23時点 | Amazon調べ)

陰陽道(Onmyōdō)は、古代日本の神秘的な宗教・哲学として知られていますが、山下克明著の『陰陽道 術数と信仰の文化 (王朝時代の実像)』は、その奥深い実像に新たな視点から迫る作品として、臨川書店から2022年8月8日に発売されました。

本書は、占術から祭祀、そして都市から地方へと広がる陰陽道の発展のプロセスを綿密に描写しています。中国の術数や道教との結びつき、さらに呪術宗教としての陰陽道の特性、そして顕密仏教との関係性についての議論を深めることで、従来の研究では取り上げられなかった部分を明らかにしています。

主要な目次を見ると、本書は王朝時代の陰陽師の役割やイメージを序章で取り上げ、続く第一章では陰陽道の技術や術数と、陰陽寮(Onmyōryō、陰陽道を監督する官庁)に焦点を当てています。第二章では陰陽道の成立の過程を、第三章では王朝貴族との関係性を詳しく探る。第四章では、陰陽道の宗教的側面を中心に、そして第五章で都市と地方における陰陽師の役割や影響を詳述しています。終章では『簠簋内伝』という古文書を中心に、中世から近世にかけての陰陽道の変遷を検討しています。

澤田瞳子氏、古瀬奈津子氏、そして井上章一氏の推薦を受けるこの好評シリーズは、学者だけでなく、陰陽道や古代日本の文化に興味を持つ一般読者にも広く読まれることでしょう。山下克明の新たな視点と綿密な研究に基づく本書は、陰陽道の理解をさらに深めるための貴重な一冊となっています。

まとめ

Special exhibition "Who are the Onmyoji - Uranai, Magi, Koyomi wo Tsukuru" at the National Museum of Japanese History, starting October 3.
国立歴史民俗博物館で10月3日から「陰陽師とは何者か ーうらない、まじない、こよみをつくるー」

陰陽道(Onmyōdō)は、古代日本の神秘的な宗教・哲学として長い間注目されてきました。その歴史と影響、特に安倍晴明という名の陰陽師の役割と影響については、多くの学者や研究者が深く探求してきました。紹介した5冊の書籍は、陰陽道に関する最新の研究成果や視点を提供しており、この領域の理解をさらに深めるための絶好の参考資料となっています。

『安倍晴明の一千年』は、安倍晴明の生涯と彼が遺した遺産を概観する作品で、彼の哲学や実践に対する深い洞察を提供します。彼の生涯は平安時代を代表する陰陽師としての役割を持つだけでなく、その後の一千年間の日本の文化や哲学にも影響を与え続けています。

一方、『呪術と学術の東アジア: 陰陽道研究の継承と展望 (アジア遊学 278)』は、東アジア全体における陰陽道の発展とその他の宗教や哲学との関係を探求しています。この書籍は、陰陽道が日本だけでなく、中国や朝鮮などの近隣諸国との相互関係の中でどのように発展してきたのかを詳しく解説しています。

『近世陰陽道の研究』は、近世の日本における陰陽道の発展と影響を中心にした研究で、特に土御門家や江戸幕府との関係を中心に議論しています。この時代の陰陽道は、権力と密接に結びつき、国家の政策や方針に大きな影響を与えました。

『安倍晴明: 陰陽師たちの平安時代 (215) (歴史文化ライブラリー)』は、安倍晴明の生涯と彼が平安時代の社会や文化に与えた影響に焦点を当てています。特に、彼が中級貴族としての役割や出世をどのように追求してきたのかについての新たな視点が提供されています。

最後に、『陰陽道 術数と信仰の文化 (王朝時代の実像)』は、陰陽道の技術や宗教的側面を中心に議論し、都市から地方に至るまでの影響を詳細に描写しています。王朝時代の陰陽師やその後の変遷についても詳しく取り上げられています。

これらの書籍を通じて、陰陽道の深い歴史や文化、哲学についての理解を深めることができます。それぞれの書籍が提供する独自の視点や研究成果は、陰陽道に関する研究や興味を持つ読者にとって、非常に価値ある情報源となるでしょう。