修験道(Shugendō)―この古代から続く日本の宗教的修行の道は、多くの神秘と奥深さを秘めています。山の自然を背景に行われる厳しい修行や儀式、そしてそれを取り巻く豊かな歴史や文化。しかし、その実態や背景を知ることは容易ではありません。今回のブログでは、修験道の世界に足を踏み入れ、その魅力や深淵を探るための5冊の書籍を紹介します。これらの書籍は、初心者から研究者まで、修験道に関心を持つすべての人々にとっての宝物となることでしょう。一緒に、この古くから続く修行の道の魅力を探求してみましょう。

修験道入門 (ちくま学芸文庫)

著:五来重
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「修験道入門 (ちくま学芸文庫)」は五来重(ごらい・しげる)著として筑摩書房から2021年6月14日に発売された書籍である。本書は、日本という国土の八割が山であることを背景に、修験道(Shugendō)という独特な宗教がどのようにして生まれ、そして発展してきたのかを詳細に追っている。

書籍の概要

日本には、独特な山岳宗教が存在する。この宗教は、仏教(Buddhism)や民間信仰と結びつきながら、修験道として形成されてきた。修験道は、霊山の開祖や山伏の修業など、深い宗教的な背景を持つ。特に、山伏の修業を通じての験力の獲得や、特別な服装や持物の背後にある意味など、修験道の精神を理解する上での鍵となる要素を、五来重は平明かつ詳細に解説している。

本書の構成

  1. 序章:修験道の全体的な背景と導入部。
  2. 第一章:山伏の開祖:大峯、彦山、出羽三山など、各地の霊山の開祖についての解説。
  3. 第二章:山伏の入峯修行:山伏が季節ごとの峯入りを通じて験力を得る過程。
  4. 第三章:山伏と聖火:修験道における聖火の意味や、高野山での聖火の実践について。
  5. 第四章:山伏の服装:兜巾や篠懸など、山伏特有の服装の起源と意味。
  6. 第五章:山伏の持物:山伏の特別な持物、如く金剛杖や法螺貝の背後にある意味とその起源。
  7. 第六章:山伏の文化:修験道に関連する美術や芸能についての探求。

著者について

五来重は1908年から1993年まで生きた日本の著名な学者。茨城県出身で、東京帝国大学及び京都帝国大学を卒業後、高野山大学や大谷大学で教鞭をとりながら、日本民俗学や宗教史において数々の著作を手掛けてきた。彼の著作は、日本の宗教や民俗に関する深い洞察をもたらすものとして、多くの読者から高く評価されている。

本書「修験道入門」は、五来重の豊富な知識と研究に基づいて、修験道という日本特有の宗教文化を、広く一般の読者にも分かりやすく解説している。日本の宗教や文化に関心を持つ者にとって、非常に有益な一冊と言えるだろう。

修験道の経・講式・和讃・唱言

著:宮家 準
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修験道(Shugendō)は、日本独特の宗教的伝統を持つ山岳信仰であり、宮家 準氏の著書『修験道の経・講式・和讃・唱言』はこの伝統の中心となる経文や儀式、称賛、そして唱言に焦点を当てています。この著書は、修験道の信者や修行者がどのような経文を採用し、どのような儀式や祈願を行っているのかを詳細に網羅しています。

修験道は、大乗仏教の経典(Mahayana Buddhist scriptures)を基盤としており、それに加えて修験道独自の経や勤行集が存在します。また、山の中での修行や祈願に関する経や唱言も特有のものがあります。本書では、これらの経文や唱言、そして神仏を讃える講式(lecture ceremonies)と和讃(Japanese hymns)について、その背景や意味、そして現代語訳とともに詳細な解説を行っています。

特に注目すべきは、採(柴)灯護摩の儀式中の問答に関する部分です。これは修験道の実践の中で重要な役割を果たす部分であり、その深い意味や背景を理解することで、修験道の哲学や信仰についての理解が深まります。

著者の宮家 準氏は、修験道に関する多岐にわたる研究を行ってきた権威であり、東京大学や慶應義塾大学での教授経験、さらに日本山岳修験学会名誉会長や修験道管長としての役職を持つなど、その知識と経験は非常に豊富です。本書も彼の多くの著書の中で、修験道の核心に迫るものとして高く評価されています。

最後に、この著書は修験道に関する知識を深めたい方だけでなく、日本の宗教文化や民俗に関心を持つすべての読者にとって、非常に有益であることは間違いありません。宮家氏の詳細な研究と現代語訳による解説は、修験道の奥深さとその魅力を新たな角度から感じ取ることができるでしょう。

修験道の文化史 (論集修験道の歴史) 

著:川崎剛志
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川崎剛志氏による『修験道の文化史 (論集修験道の歴史)』は、修験道(Shugendō)の文化的背景とその影響を深く探求する重要な著作です。岩田書院からの最新刊行で、本書は修験道の広がりと多様性を、文学、芸能、考古学、美術という異なる角度から捉えることを試みています。

1975年から1984年にかけての『山岳宗教史研究叢書』の後、1980年代後半以降に公刊された修験道に関する主要な論文を集めており、それらの文献の解説や再評価が行われています。このような編纂は、修験道に関する学問の進展や変遷を理解するための貴重な資料として位置付けられます。

特筆すべきは、本書が取り上げる8つの基本文献の再録です。それぞれの文献は、修験道のさまざまな側面に焦点を当てており、著名な研究者たちによって執筆されています。例として、源 健一郎氏の「語り本系『平家物語』〈康頼熊野詣〉の位相」は、寺門派修験とその動向を探るものであり、久野 俊彦氏の論文では、奥会津の地域文化を通じての修験道の影響を詳細に検討しています。

また、宮家 準氏が筆頭する他の論文は、修験道の仏教との関係やその遺物、さらには重要な遺跡である大峯山寺の発掘、修験道山伏の歴史、熊野曼荼羅図の考察、中道町円楽寺の役行者像についての研究を扱っています。

川崎剛志氏自身による「修験道の文学と芸能」の解説と、時枝 務氏による「修験道の考古と美術」の解説は、それぞれのテーマにおける修験道の文化的な位置付けや影響を概説しており、読者にとっての理解を一層深める手助けとなるでしょう。

総じて、『修験道の文化史』は、修験道の歴史的・文化的背景を総合的に理解するための鍵となる著作です。この書籍は、修験道に関する研究や興味を持つ全ての読者にとって、欠かせない一冊と言えるでしょう。

修験道とその組織 (論集修験道の歴史)

著:川崎剛志
¥6,380 (2023/10/19 14:52時点 | Amazon調べ)

川崎剛志氏が著した『修験道とその組織』は、修験道(Shugendō)の組織的な構造とその変遷に関する深い洞察を提供する書籍です。岩田書院からの刊行となるこの著作は、1975年から1984年にかけての『山岳宗教史研究叢書』に続いて、1980年代後半以降に公刊された修験道の主要な論文を集成しています。本書の目的は、それらの論文の収載の意図や、現状の研究状況、そしてその意義を明らかにすることにあります。

主要目次から見て取れるように、複数の専門家による様々な角度からの研究が集められています。特に注目すべきは、中世の熊野三山検校や修験道本山派、そして当山派の形成過程やその背景に焦点を当てた論文です。

酒井彰子氏の論文は、中世園城寺の門跡と熊野三山検校職の相承について、具体的に常住院から聖護院への移行を中心に探求しています。高橋修氏や徳永誓子氏は、熊野三山検校とその関連性についての研究を展開し、修験道の組織的な側面を詳しく解説しています。

増山智宏氏や花尻千秋氏の論文は、中世の修験道本山派の形成過程や、室町期の熊野先達と熊野三山検校との関連に焦点を当てています。一方、神谷文子氏や徳永誓子氏は、興福寺堂衆とその時期の修験道当山派の関連性についての研究を提供しています。

近世や明治時代、さらには一九二〇年代の修験道の動向も、首藤善樹氏や青谷美羽氏、石黒智教氏によって詳しく調査されています。

徳永誓子氏の解説「修験道とその組織」は、本書全体の内容を総合的にまとめ、修験道の組織的な側面とその歴史的背景を概観する役割を果たしています。

『修験道とその組織』は、修験道の組織構造、その変遷、および各時代の背景を理解するための鍵となる著作です。この書籍は、修験道に関する研究や興味を持つ読者にとって、非常に有益な一冊と言えるでしょう。

入定する霧島修験~島津氏帰依僧の『日録』に見る近世修験道の変容~

この書籍は、森田清美(Morita Kiyomi)著の『入定する霧島修験〜島津氏帰依僧の『日録』に見る近世修験道の変容〜 (みやざき文庫145)』を中心に紹介します。出版は鉱脈社(Koumyakusha)によって2021年に行われました。

修験道(Shugendō、山岳修行に基づく日本の宗教実践)に対する深い理解を持つ著者は、島津氏の帰依僧『空順法印目録』を通して、その複雑な生涯、島津家や庶民との関わり、そして入定(Nyūjō、修験道の実践の一部としての死の瞬間の瞑想)に至るまでのドラマを描写しています。

著書は以下の節に分かれています:

  1. 『空順法印日録』と空順の生涯
  2. 出自や師についての考察
  3. 高野山学侶派・理観房における修行
  4. 巡礼行や薩摩の名僧に関する考察
  5. 験力(宗教的なパワーや能力)を発揮しての人々の信望獲得
  6. 帖佐から桜島への移住や入定窟建立
  7. 各地での験力発揮を通じた憑きもの、火災、疱瘡、噴火との関連
  8. 都城不動堂再建と不動堂縁起
  9. 隼人獅子尾への入定石室移設前後の出来事
  10. 入定の準備に入る空順
  11. 身体は滅びても、空順の思想
  12. 久しき世を願っての入定

著者、森田清美は鹿児島県薩摩川内市出身で、多くの研究歴や受賞歴を持つ。彼女の研究対象は主に霧島や薩摩の山岳信仰や民俗に関するもので、これまでにも多数の著書や論文を発表しています。

この書籍は、修験道や島津氏との関わり、そして近世の修験道の変容を理解するための鍵となる一冊です。空順法印の生涯を通じて、読者は修験道の深い宗教的実践とその時代の背景を洞察することができるでしょう。

まとめ

Mountain worship in ancient Japan mixed with elements of Buddhism (esoteric Buddhism) and Taoism (kujikiri)
古代日本において山岳信仰に仏教(密教)や道教(九字切り)等の要素が混ざりながら成立

修験道(Shugendō)は日本の独特な宗教的修行の道で、その深淵な歴史や実践を知るには多岐にわたる資料や文献に触れる必要があります。今回紹介した5冊の書籍は、修験道を学ぶ上での鍵となる情報を提供しており、それぞれが異なる角度からこの宗教的修行を解明しています。

『修験道入門 (ちくま学芸文庫)』は、修験道の基本的な概念や歴史、実践に関する情報を提供しています。初心者向けの一冊として、修験道に関する総体的な知識を得るのに適しています。

次に、『修験道の経・講式・和讃・唱言』は、修験道の実践としての経文や講式、祈祷文などの詳細に焦点を当てた書籍です。これは修験道のリチュアルや儀式を深く理解するための重要な文献となっています。

『修験道の文化史 (論集修験道の歴史)』と『修験道とその組織 (論集修験道の歴史)』は、歴史的背景や組織的構造を探求するための書籍です。これらの論集を通して、修験道がどのようにして発展してきたのか、また、その組織の構造や運営方法についての深い洞察を得ることができます。

最後に、『入定する霧島修験島津氏帰依僧の『日録』に見る近世修験道の変容 (みやざき文庫145)』は、近世の修験道の変遷と、島津氏との関わりを中心に探るものです。具体的な例として、空順法印の生涯を通じて、修験道がどのように庶民や有力な家系と関わってきたのかを詳しく知ることができます。

これらの書籍を通して、修験道の歴史、実践、文化、組織、そして特定の時代や人物を通じた変遷を学ぶことができます。興味を持った読者は、これらの書籍を基にさらなる研究や探求を進めることで、修験道の深遠なる世界に触れることができるでしょう。