古代の息吹が現代に蘇る瞬間、私たちの心は歴史の深みに引き込まれます。日本の古墳文化は、単なる過去の遺産ではなく、現代の私たちにも多くのメッセージを伝えています。特に、高松塚古墳とキトラ古墳の極彩色壁画は、その美しさと謎に満ちた存在で、多くの人々の関心を集めています。文化庁は、奈良県明日香村のキトラ古墳壁画と高松塚古墳壁画(いずれも国宝、7世紀末~8世紀初め)を一般公開しますね。今回のブログでは、これらの古墳と壁画に関する最新の書籍5冊を紹介し、古墳の魅力とその保存の重要性について深く探求してみたいと思います。歴史の響きを感じ、古墳の世界への扉を開きましょう。

極彩色壁画の発見 高松塚古墳・キトラ古墳

著:廣瀬 覚, 著:建石 徹
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『極彩色壁画の発見 高松塚古墳・キトラ古墳』というタイトルからもわかるように、本書は日本国内でのみ存在する二つの壁画を持つ古墳、高松塚古墳とキトラ古墳の発見とその意義について深く掘り下げた一冊です。これらの壁画は、いつ、どのようにして築かれたのか、壁画を描く背景や目的など、多方面からの最新の研究成果を通して、その奥深さを解明しています。

第1章では、極彩色で知られるこれら古墳の壁画の発見について詳細に触れています。高松塚古墳とキトラ古墳の壁画がどのような経緯で明るみに出たのか、それぞれの古墳の名称の由来にもスポットを当てて解説しています。

第2章は、これらの壁画発見がもたらした影響や変化について述べています。具体的には、古墳の特徴や、考古学以外の学問分野への影響、さらには飛鳥時代の文化や歴史に対する関心が高まる「飛鳥ブーム」の到来についても触れています。

第3章では、壁画の保存に関する話題を取り上げています。高松塚古墳とキトラ古墳の壁画が、どのような経緯で取り外されたのか、また、それらの保存のための技術や方法についての詳細を語っています。

第4章は、近年の調査成果に基づく新事実にフォーカス。古墳の構築過程、石室の構築技術、その他の考古学的成果、そして考古学以外の成果について、深く掘り下げた内容となっています。

最終的に第5章では、これらの古墳の歴史的意義と、未来の世代へどのように伝えるべきかについて考察しています。

本書は、高松塚古墳・キトラ古墳の保存・修理・整備に関わった両著者、廣瀬覚(ひろせ・さとる)と建石徹(たていし・とおる)の専門的な視点から書かれています。廣瀬氏は、古代王権の形成や埴輪生産に関する研究など、多数の著作を持つ考古学者であり、建石氏もまた文化財の保存や修理に関する多くの研究や著作を持つ専門家です。

まとめると、『極彩色壁画の発見 高松塚古墳・キトラ古墳』は、これらの古墳の壁画の発見から保存、そして未来に伝えるまでの全過程を、考古学をはじめとする多角的な視点から詳細に解説した、最高の解説本となっています。

キトラ・高松塚古墳の星宿図

著:武, 泉
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キトラ古墳と高松塚古墳は、日本の古代史において非常に注目される遺跡の一つです。特に、これらの古墳の壁画に描かれた星宿図が古代日本の宇宙観を示しているとされ、多くの研究者の興味を引きつけています。泉 武著の『キトラ・高松塚古墳の星宿図』は、これらの星宿図の成立の背景や意味を探るための詳細な調査と考察を行った一冊となっています。

本書の第Ⅰ部では、天武天皇と天命思想に焦点を当てています。天命思想は、天からの命令や意志を受けて行動するという考え方で、中国の古代哲学や宗教観に深く根ざしているものです。この部分では、壬申の乱や簒奪王権の正当化といった歴史的背景とともに、天命思想が日本にどのように導入されたのか、また天武天皇の皇位の正当性と天命思想との関係が詳しく解説されています。

第Ⅱ部では、キトラ・高松塚古墳の天文図を中心とした壁画古墳の成立について詳述されています。中国や高句麗(Kokuri, Korean ancient kingdom)の壁画墓に描かれた天文図との比較を行いながら、キトラ・高松塚壁画の統一的な理解を試みています。また、飛鳥南西部の葬地や野口王墓古墳との関連性も考察されています。

付論では、壁画の顔料や漆喰の産地を推定する研究が紹介されています。これにより、当時の技術や物資の流通に関する新たな知見が得られるでしょう。

著者、泉 武氏は、奈良県生まれの考古学者であり、特に高松塚壁画に関する研究で知られる専門家です。高松塚壁画館の学芸員としても活動し、奈良県立橿原考古学研究所の共同研究員としても多くの研究を行っています。

『キトラ・高松塚古墳の星宿図』は、古代日本の宇宙観や王権の正当化、さらには技術や文化の交流を理解する上で非常に貴重な情報を提供する書籍と言えるでしょう。

高松塚・キトラ古墳の謎

著:山本 忠尚
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山本 忠尚著の『高松塚・キトラ古墳の謎』は、古代日本の文化と歴史に深く関わる高松塚古墳とキトラ古墳についての詳細な研究書です。これらの古墳はその鮮やかな壁画で知られており、その象徴的な意味や背景を理解することは、古代日本の宇宙観や王権の正当性、さらには当時の国際関係を読み解く鍵となるとされています。

本書では、壁画に描かれた四神(Four Gods)の姿勢や青龍・白虎(Azure Dragon & White Tiger)の指の本数、人物群像の服装、そして十二支像(zodiac signs)の配置など、さまざまな要素が中国考古学の視点から詳しく分析されています。特に、両古墳の成立とされる7世紀末から8世紀の歴史的背景は、持統天皇と唐の武則天という2人の女帝を通して考察されています。これら2人の女帝は、古代アジアの政治と文化の中心として活躍し、彼女らを通しての考察は両古墳の背後にある歴史的な文脈を理解する上で非常に有益です。

また、古い時代と新しい時代の要素が融合・混在する高松塚・キトラ古墳の独特の特徴や謎についても詳細に読み解かれています。

著者、山本 忠尚氏は、日本の考古学界での長い経歴を持つ研究者です。彼は東京で生まれ、国際基督教大学や京都大学での学びを経て、奈良国立文化財研究所や天理大学での研究や教鞭をとるなど、多くの実績を持っています。彼の主要な著書には『日英対照 日本考古学用語辞典』や『日中美術考古学研究』などがあり、日本の考古学研究において重要な位置を占める存在となっています。

『高松塚・キトラ古墳の謎』は、古代日本の文化や歴史に関心を持つ読者にとって、深い洞察や新たな知見を提供する一冊となるでしょう。

特別史跡 高松塚古墳発掘調査報告

編集:文化庁, 編集:奈良文化財研究所, 編集:文化財研究所奈良文化財研究所=, 編集:奈良県立橿原考古学研究所, 編集:橿原考古学研究所=, 編集:明日香村教育委員会
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『特別史跡 高松塚古墳発掘調査報告』は、日本の古墳文化を代表する高松塚古墳に関する緻密な調査と研究をまとめた著作です。文化庁、奈良文化財研究所、奈良県立橿原考古学研究所、および明日香村教育委員会による共同編纂であり、同成社から2017年に出版されました。

本書は、高松塚古墳の石室解体事業に伴う発掘調査の成果を集約した報告書で、3巻のうちの第一冊目として位置付けられています。これには、石室の詳細な構造や壁画の劣化原因といった重要な記録が収められています。

第1章「序言」では、発掘調査に至った背景やその位置、環境について紹介されています。第2章「調査の方法と経過」は、調査の計画や具体的な調査内容、日々の進行を記録した日誌について述べられています。

第3章「墳丘の調査」と第4章「埋葬施設の調査」では、古墳の構造や出土した遺物、石室や墓道などの埋葬施設に焦点を当てた研究結果が紹介されています。特に石室の構造や石材加工技術についての詳細な分析が行われています。

第5章「壁画保存環境の調査」では、地震による古墳の損傷状況や石室の周りの汚れの状況、旧調査区との関連について検証されています。第6章「関連調査」は、最新の技術や手法を取り入れた詳細な調査結果を収録しており、特に三次元レーザースキャニングや地震考古学の所見、さまざまな分析技術を用いた調査結果が盛り込まれています。

最後に、第7章「考察」で、古墳の構築過程や石室の構築技術、土器を通じた古墳の築造時期などについての総合的な考察が展開されており、古墳の背後にある文化や技術、社会の様子を読み解く手助けとなる内容となっています。

『特別史跡 高松塚古墳発掘調査報告』は、古墳研究や日本の古代文化に関心を持つ読者にとって、貴重な情報と洞察を提供する一冊となるでしょう。

高松塚古墳と墓室壁画の保存

著:松田 真一
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『高松塚古墳と墓室壁画の保存』は、松田真一(まつだ しんいち)著による、高松塚古墳に関する研究と壁画保存の課題に焦点を当てた書籍です。本書は、2022年に雄山閣から出版され、高松塚古墳の壁画が時間の経過とともにどのような要因で劣化してきたのか、そして古墳壁画を今後どのように現地で保存していくためにはどんなアプローチが必要かについて詳しく探求しています。

本書の中心的なテーマは、高松塚古墳の壁画が劣化した要因と、その保存のための具体的な方法論です。半世紀以上にわたる高松塚古墳の研究経緯を通じて、壁画の保存に関する課題や方針を再考し、それを基に今後の保存活動の方向性を示唆しています。さらに、高松塚古墳だけでなく、周辺地域の墓室壁画の現状も取り上げられており、総合的な視点で古墳壁画の保存策を検討しています。

著者の松田真一は、奈良県出身で、奈良県立橿原考古学研究所の調査研究部長や同附属博物館長を務めた経歴を持ち、現在は天理大学附属天理参考館の特別顧問や香芝市二上山博物館参与として活躍しています。彼の主な著書や寄稿には、『吉野仙境の歴史』や『重要文化財橿原遺跡出土品の研究』など、多岐にわたる考古学や歴史に関する研究があります。

総じて、『高松塚古墳と墓室壁画の保存』は、古墳文化や壁画の保存に関心を持つ読者にとって、深い洞察と具体的な方法論を提供する貴重な一冊と言えるでしょう。

まとめ

The Agency for Cultural Affairs will open the Kitora and Takamatsuzuka burial mounds (both national treasures, late 7th - early 8th centuries) in Asuka Village, Nara Prefecture, to the public from October 14.
文化庁は、奈良県明日香村のキトラ古墳壁画と高松塚古墳壁画を10月14日から一般公開する。

近年、古墳文化とその壁画の保存が日本の学術界や一般市民の間で再び注目を集めています。特に、高松塚古墳とキトラ古墳の発見や研究は、この動きの中心に位置しています。今回紹介した5つの書籍は、これらの古墳の極彩色壁画や星宿図の魅力、謎、そしてその保存技術に関する総体的な知識を提供するものです。

『極彩色壁画の発見 高松塚古墳・キトラ古墳』は、古墳の壁画が発見された瞬間の興奮や感動を伝えるとともに、それらが持つ歴史的・文化的価値を解説しています。次に、『キトラ・高松塚古墳の星宿図』は、古代の天文観念や宗教観を反映した壁画の中でも特に注目すべき星宿図に焦点を当て、その解釈や背景を探求しています。

『高松塚・キトラ古墳の謎』は、これらの古墳が持つ未解明な点や研究の進展を通じて、古墳文化や当時の社会をより深く理解するための手引きとなるでしょう。一方で、『特別史跡 高松塚古墳発掘調査報告: 高松塚古墳石室解体事業にともなう発掘調査』は、具体的な発掘調査の結果や方法論を詳しく報告し、学術的な深化を図っています。

最後に、『高松塚古墳と墓室壁画の保存』は、壁画の劣化要因や現地での保存方法についての議論を展開し、今後の保存活動の方向性を示唆しています。

これらの書籍を通じて、高松塚古墳とキトラ古墳は、単なる考古学的な遺跡ではなく、現代においても多くの学びや発見を提供してくれるものと確信できます。興味を持った方は、これらの書籍を手に取り、古墳文化の魅力に深く触れてみることをおすすめします。