数千年にわたる歴史を持つ中国は、その文化の深さと多様性において世界でも類を見ない国であります。その壮大な歴史は、絶え間ない発掘や研究を通じて日々新たな発見がもたらされています。中国の歴史や考古学に興味があるなら、どこから始めれば良いのでしょうか?今回は、初心者から専門家まで、中国の深遠な歴史と考古学を探究するための5冊の書籍をご紹介します。これらの書籍は、中国の神秘的な過去を解明する鍵となるでしょうか。さあ、一緒に時の中を旅して、中国の驚異の歴史を探求しましょう。

中国考古学のてびき

著:飯島 武次
¥2,090 (2023/09/15 08:49時点 | Amazon調べ)

『中国考古学のてびき』は、飯島武次(Iijima Taketugu)著による、中国の旧石器時代から唐代までの歴史と考古学的意義を体系的に学べる書籍です。出版社は同成社(Douseisha)で、2015年8月5日に発売されました。

本書は、序章で中国の考古学の基本的な背景とその重要性について触れ、中国の人文地理、歴史の概要、考古学から見る中華文明史の流れを紹介しています。こうした基礎的な知識を持つことで、後の詳細な時代ごとの考古学的探求をより深く理解することが可能となります。

第1章では、中国の石器時代に焦点を当て、旧石器文化と新石器文化の特徴や遺跡、遺物について解説しています。その後、夏・殷時代(青銅器時代Ⅰ)や西周時代(青銅器時代Ⅱ)など、次々と歴史的な時代を追い、それぞれの時代の都城、墓、土器、青銅器、窖蔵など、考古学的な視点からの中華文明の発展を詳しく解説しています。

特に春秋戦国時代や秦・漢時代、魏晋南北朝時代、そして隋・唐時代は、中国考古学の中でも非常に重要な時期であり、それぞれの時代の特色や遺跡、遺物、文化について豊富な図版写真を交えて平易に紹介されています。

付録部分では、考古学で使用される専門用語や器物の名称などが解説され、初心者でも本書を読む上での理解を深めるためのサポートが提供されています。

著者の飯島武次は、1943年東京生まれで、駒澤大学や東京大学での研究と教育活動を経て、駒澤大学文学部教授として活躍。現在は駒澤大学名誉教授として、中国考古学の分野での長年の経験と専門知識を持つ権威として知られています。

全体として、『中国考古学のてびき』は、中国の歴史や考古学に興味を持つ初心者から研究者まで幅広くおすすめできる一冊です。

春秋戦国時代 燕国の考古学

著:石川 岳彦
¥11,000 (2023/09/15 08:51時点 | Amazon調べ)

春秋戦国時代における燕国(Yan Kingdom)の役割とその考古学的研究について研究した本、『春秋戦国時代 燕国の考古学』をご紹介します。

この本の主旨は、燕国の文化編年と年代を詳細に探求することで、日本列島への鉄器流入時期の既存の理論を再評価することにあります。これが、弥生時代研究(Yayoi period research)に新しい風をもたらす要因となっています。

春秋戦国時代における中国の大国、燕国は紀元前11世紀から紀元前3世紀にかけて現在の北京周辺を中心に存在していました。多くの人々がその名を聞いたことがあるでしょう。しかし、実際に燕国に関する詳細な文献は限られています。例えば、古代の歴史書『史記』(Shiki)にも燕国の歴史についての詳しい記述は少ないのです。

しかしながら、考古学的な研究により、燕国が東アジア古代文化の発展において中心的な役割を果たしていたことが明らかになってきました。燕国はその勢力を東方に拡大し、現在の中国東北地方南部、朝鮮半島、そして日本列島にまで影響を及ぼしました。この影響の中でも最も注目すべきは、鉄製の製品の流入と普及であり、これがそれぞれの地域の鉄器時代の始まりを触発しました。

この書籍は、20世紀後半からの考古学的調査の進展を基に、燕国に関する新しい情報を提供しています。これにより、文献の不足が補完され、燕国の歴史と文化に新しい光が当てられています。

『春秋戦国時代 燕国の考古学』は二部構成となっており、第I部では春秋戦国時代の燕国の青銅器、土器、貨幣、鉄器などの遺物に焦点を当て、その変遷や特徴を詳述しています。第II部では、これらの遺物の変遷を基にして、燕国の拡大の様相や年代を明らかにしています。

著者、石川岳彦氏は、東京大学をはじめとする複数の学歴を持ち、国立歴史民俗博物館や東京大学での研究活動を経て、この著作を執筆しました。石川岳彦氏の研究は、物証を基にして、歴史の新たな側面やダイナミクスを描写することを目的としています。

中国古代の歴史や燕国からの鉄器文化の影響を受けた朝鮮半島や日本列島の古代文化に興味を持つ読者にとって、この『春秋戦国時代 燕国の考古学』は非常に価値のあるものとなるでしょう。

中国考古学概論

著:飯島 武次
¥19,800 (2023/09/15 08:58時点 | Amazon調べ)

飯島武次著の『中国考古学概論』は、中国考古学における近20年の著しい発掘成果とその進展を総合的にまとめ上げた一冊です。この時期の新しい発見や研究の専門化は、中国の原始・古代史の理解を一段と深めるものとなっています。

多くの概説書が複数の執筆者により記述されている中、飯島は、一人の研究者の目線で通史としての統一性を持った概論が重要だと考えました。彼は22年間の講義経験をもとに、本書で自らの考古学的歴史観を示しています。

本書は以下の8章で構成されています:

  1. 中国考古学研究:中国の人文地理、考古学研究史、考古学的遺物の概要。
  2. 中国の旧石器文化研究:中国の旧石器文化の発展過程、それぞれの時代(前期、中期、後期)の特徴と重要性。
  3. 新石器時代:中国の新石器文化と、黄河流域における各時代の文化の詳細。
  4. 青銅器時代1(夏殷時代):夏文化、二里頭文化、殷代の考古学的成果や文化の詳細。
  5. 青銅器時代2(西周時代):西周の文化、考古学的研究、墓、土器、青銅器などの特色。
  6. 青銅器時代3から鉄器時代1へ:春秋戦国時代の考古学的区分、東周の都城や墓の研究、土器、陶器、瓦當などの特徴。
  7. 鉄器時代2(秦漢時代):黄河と長江の文明の終焉、秦漢時代の到来、秦咸陽城や漢長安城の調査、秦始皇陵や兵馬俑坑、秦漢の王陵や文化の研究。
  8. 中国考古学のまとめ:旧石器文化、新石器文化の総括、中国古代文明の要約、考古学的問題点の提起。

飯島武次の『中国考古学概論』は、中国考古学の深い理解を求める読者にとって、貴重なガイドブックとして機能します。一人の著者の独自の視点からの総合的な概説は、中国の長い歴史とその多様な文化を理解するための鍵となるでしょう。

中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝

『中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝』は、著名な考古学者、宮本 一夫先生によって著された重要な一冊です。この本は、中国古代文明の深遠な背景と発展を探るための入門書として、多くの読者にとって魅力的な内容を提供しています。

中国古代文明というと、かつては「黄河文明」(Yellow River Civilization)だけを指すことが多かったのですが、宮本先生は、中国の文明はただ一つの川沿いの文明にとどまらず、長江流域(Yangtze River Basin)など多くの地域で独自の展開を見せていたと説明します。この多元的な文明の展開は、アワ・キビ農耕、稲作農耕(rice cultivation)、牧畜(animal husbandry)、遊牧(nomadism)、そして狩猟採集(hunting and gathering)といった多様な生活様式から成り立っていました。

さらに、本書では、これらの生活様式がどのように組み合わさり、中国の初期国家形成の土台となったのかを詳細に探る内容となっています。特に、神話として語り継がれる「三皇五帝」(Three Sovereigns and Five Emperors)や「盤古伝説」(Pangu Legend)といった古代中国の物語が、実際の史実とどのように関連しているのか、そして最古の王朝とされる夏王朝(Xia Dynasty)と二里頭文化(Erlitou Culture)との関係性を明らかにする試みは、非常に興味深いものとなっています。

本書は元々2004年から2005年にかけて講談社の創業100周年企画として出版された全集「中国の歴史・全12巻」の一部として刊行されました。そして、その学術的価値は高く、中国や台湾でも翻訳されて累計で150万部を超えるベストセラーとなりました。

著者の宮本 一夫先生は、1958年松江市生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程を修了した後、多くの学術的業績を持つ学者として、現在は九州大学大学院人文科学研究院の教授を務めています。先生のこれまでの著書、研究成果を見るだけでも、中国古代文明に関する深い知識と洞察力を持つことがわかります。

『中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝』は、中国古代文明を学ぶうえで、非常に参考になる一冊と言えるでしょう。宮本先生の詳細な研究と鋭い分析に基づいた本書を手に取れば、中国の歴史の深層に触れることができるはずです。

中国の城郭都市 ――殷周から明清まで

中国の古代都市は、その壮大な城壁で知られています。四千年以上の歴史を持ち、さまざまな変遷を経てきた城郭都市の歴史について詳しく知りたい方におすすめの書籍が『中国の城郭都市 殷周から明清まで』(筑摩書房、2023/9/11発売)です。

本書は、愛宕 元(Otagi Hajime)著によるもので、邯鄲古城、長安城、洛陽城、大都城など、中国の主要な城郭都市の構造やその機能の変遷を、史料・考古資料をもとに詳細に解説しています。角道亮介氏の解説にもあるように、この本は中国の城郭都市に関する入門書としての位置づけがされています。

都市の城壁は、しばしば数十キロの長さや十メートル以上の高さを持つものであり、それが全体の都市を囲む巨大な構造物として存在しています。これらの城壁は、四千年以上前から作られ、一部は戦乱を経て、増改築されながら現在まで受け継がれてきました。本書では、古代の殷から清代までの主要な城郭都市の構造や、それにまつわる歴史を史料や考古資料をもとに紹介しています。

目次を見ると、新石器時代の城郭遺址から始まり、春秋・戦国時代、秦漢、魏晋南北朝、隋唐、宋、遼・金・元、明清と、時代を追って中国の城郭都市の変遷が詳しく解説されています。これにより、政治や戦争、人々の暮らしといった背景とともに、城郭都市の発展の歴史を深く理解することができます。

著者の愛宕 元は、1943年から2012年までの間に、京都大学や帝京大学での教職を経て、多数の著書や訳書を手がけた中国史の専門家であり、その豊富な知識と研究成果をもとにこの本が執筆されました。

『中国の城郭都市 殷周から明清まで』は、中国の都市や文化、歴史に関心のある方には、非常に価値ある情報を提供する一冊となっています。城壁が語る激動の四千年史を、この書籍を通して体験してみてください。

まとめ

Archaeology of Yan State, Mythological Period, and the Transition of Castle Cities from the Xia Dynasty to the Ming and Qing Dynasties
燕国の考古学、神話時代、夏王朝から明清までの城郭都市の変遷

中国の歴史と文化は、長い年月を経て形成された多層的なものであり、その深さと広がりを理解するためのガイドとして、以下の5冊の書籍は非常に価値があります。これらの書籍を通して、中国の考古学と古代から近代までの歴史の変遷を段階的に学び、深く探求することができます。

  1. 『中国考古学のてびき』: これは考古学を学ぶための入門書で、基本的な考古学の技法や方法論、中国考古学の特有の特徴や発展の概要を学ぶことができます。
  2. 『春秋戦国時代 燕国の考古学』: この書籍は特定の時代、春秋戦国時代(Spring and Autumn and Warring States Period)に焦点を当て、燕国という国の考古学的な研究を深く掘り下げています。これにより、特定の地域や時代の文化や歴史の背景を詳細に学ぶことができます。
  3. 『中国考古学概論』: 一方、この書籍は、中国考古学全般の基本的な概念や理論、歴史的背景を網羅的に解説しており、幅広い視点から中国の考古学を学ぶことができます。
  4. 『中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝』: 神話時代から夏王朝(Xia Dynasty)までの時代を取り扱っており、中国の最も古い時代の歴史や文化、信仰を学ぶ上での基礎となります。
  5. 『中国の城郭都市 殷周から明清まで』: 古代の殷から近代の明清までの都市の歴史や構造を詳細に探求し、中国の政治や社会、文化の変遷を都市の視点から捉えることができます。

これらの書籍を通じて、読者は中国の考古学と歴史の両面から、その多様性と豊富な背景を段階的に学ぶことができます。これらの書籍は、中国の歴史や文化に興味を持つすべての読者にとって、貴重なガイドブックとなるでしょう。