歴史の深みを感じ、過去の人々の生活や思考を想像するための一つの道具として、考古学は私たちに貴重な視点を提供します。特に、朝鮮半島の考古学は、その地理的位置と歴史的経緯から多種多様な文化交流の痕跡を辿ることができ、深遠な歴史を持つ朝鮮半島の興味深い一面を明らかにします。今回は、そんな朝鮮半島の考古学に焦点を当てた5冊の書籍を紹介します。

それぞれの書籍は、朝鮮半島の異なる時代やテーマを深く掘り下げ、読者に対して新たな知識や洞察を提供します。『概説 韓国考古学』から『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』まで、これらの書籍は、あなたが朝鮮半島の歴史と文化、そしてその地域が持つ豊かな遺産を理解する旅を始めるための出発点となることでしょう。

『概説 韓国考古学』

編集:韓国考古学会, 翻訳:純一, 武末, 翻訳:慎矢, 庄田, 翻訳:孝文, 山本
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『概説 韓国考古学』は、韓国考古学会が全力を挙げて取り組んだ全体像を描き出す書籍です。この書籍は日本語による全訳版であり、武末純一、庄田慎矢、山本孝文という研究者によって翻訳されました。発行は2013年9月25日で、出版元は同成社です。

韓国の経済発展に伴い、その土地からは多大な発掘・研究成果が生まれました。それらの知見を盛り込んだ改訂版であるこの書籍は、韓国考古学の概要と進化を総括する一冊となっています。第一章では、韓国考古学の形成と発展、韓半島と韓国文化の関連性、研究の空間や時代区分の確立、現在の研究状況、そして未来の展望について述べられています。

『概説 韓国考古学』は、韓国の歴史と文化の変遷を明確な時代区分により理解するため、古代から近世までの各時代を詳細に解説しています。それぞれの章は、旧石器時代から新石器時代、青銅器時代、初期鉄器時代、原三国時代、三国時代、そして統一新羅と渤海時代までを含み、それぞれの時代に特有の文化や生活様式、地域差、遺跡、遺物等について詳しく説明しています。

翻訳者たちは、それぞれ独自の視点と経験を持つ専門家であり、彼らの知識と視点が本書の解説に深みを加えています。武末純一は福岡大学人文学部教授、庄田慎矢は国立文化財機構奈良文化財研究所研究員、そして山本孝文は日本大学文理学部教授です。

『概説 韓国考古学』は、韓国の考古学的な側面を包括的かつ詳細に解説した作品であり、その領域について深く理解したい読者や専門家にとって、価値ある一冊となるでしょう。

『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】 』

著:渡辺 誠
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『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】』は、渡辺誠によって著され、名古屋大学出版会から2022年5月10日に発行された書籍です。

この『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】』は、日本と朝鮮半島の間の持続的な交流の実体を、長年にわたる精力的なフィールドワークと物質資料の比較を通して解明し、新たな物質文化史の構築を試みています。その範囲は縄文時代のドングリ食と漁業から弥生時代の卜骨(oracle bones)と鳥形木製品、さらには近世の瓦と木綿までに及びます。これは1995年に初版が出版された時からの持続的な探求の成果です。

『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】』は、各章で特定のテーマに焦点を当て、日韓の交流とそれが両国の物質文化に与えた影響を掘り下げています。第一章では、日韓でのドングリ食と縄文土器の起源について調査し、第二章では朝鮮海峡における漁民の交流を、第三章では全羅南道郡谷里貝塚から出土した卜骨を、第四章では韓国の蘇塗(古代の塗装技術)と弥生時代の鳥形木製品を検討します。第五章と第六章では、それぞれ滴水瓦と木綿の伝播の国際的背景について深く探求しています。

渡辺誠は1938年に福島県で生まれ、慶應義塾大学大学院文学研究科の博士課程を満期退学後、名古屋大学文学部教授となりました。彼の研究は縄文時代の生活に重点を置き、その間に発行した著書には『縄文時代の漁業』、『縄文時代の植物食』、『縄文時代の知識』、『よみがえる縄文人』、『よみがえる縄文の女神』などがあります。

『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】』は、日韓の長期間にわたる交流を詳細に解析し、その結果として新たな物質文化史の構築を試みる渡辺の精神的遺産であり、その研究と視点は考古学と日韓の文化交流の理解を深めるための重要なリソースとなっています。

『「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書) 』

『「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書)』は、高田貫太によって著され、KADOKAWAから2019年9月20日に発行された書籍です。

この『「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書)』は、日本独特の墳墓である前方後円墳(keyhole-shaped tumuli)の謎を解き明かすことを試みています。前方後円墳は、一般的に日本列島で築かれ、その地域は大まかにヤマト政権の支配範囲と一致しているとされてきました。しかし、なぜそれらが朝鮮半島西南部の栄山江流域まで広がっているのか。この地域はヤマト政権の支配下にあったのか、それとも倭(古代の日本)の一部だったのか。本書はこれらの疑問を提起し、朝鮮半島に残るすべての「異形」の前方後円墳を探訪し、これまでの通説とその課題を見直しています。

著者の高田貫太は、1975年に福岡県で生まれ、岡山大学文学部史学科を卒業後、大韓民国慶北大学校考古人類学科の博士課程を修了しました。彼は現在、国立歴史民俗博物館研究部の准教授として働き、総合研究大学院大学文化科学研究科の准教授を務めています。他の著書には、『古墳時代の日朝関係―新羅・百済・大加耶と倭の交渉史―』(2014年 吉川弘文館)、『海の向こうから見た倭国』(2017年 講談社現代新書)があります。

『「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書)』は、前方後円墳が日本列島だけでなく朝鮮半島にも存在することを探求し、その歴史的な背景と意味を理解するための必読の書籍となっています。高田氏の専門的な視点と広範な調査は、古代の日韓の交流を理解するための新たな視点を提供します。

『古代朝鮮の国家体制と考古学』

著:孝文, 山本
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『古代朝鮮の国家体制と考古学』は、山本孝文氏によって著され、吉川弘文館から2017年11月15日に発行された書籍です。

この『古代朝鮮の国家体制と考古学』は、三国時代の韓半島に流入した中国式の政治制度が、遺跡から出土する物質資料にどのように反映されているのかを探求しています。墳墓と葬制、土器様式の変化、文書行政の開始、そして服飾に見られる身分表象など、発掘資料を通じて古代朝鮮の国家体制を追究しています。これまで文献史学の研究対象だった古代の政治史に対し、山本氏は考古学的な手法を取り入れ、新たな視点からアプローチしています。

具体的な内容としては、百済と新羅の墓制の変質と古墳築造の統制、東アジアにおける土器様式の変化と文書行政、帯金具と服飾の画一化と身分表象などが詳細に検討されています。これらを通じて、古代国家の成熟と法制度について深く考察しています。

著者の山本孝文氏は、1974年に長野県で生まれ、2005年に大韓民国釜山大学校大学院考古学科の博士課程を修了しました。現在は日本大学文理学部の教授として教鞭をとり、文学博士の学位も有しています。

『古代朝鮮の国家体制と考古学』は、物質資料から古代朝鮮の政治体制を解明しようとする意欲作で、古代朝鮮史を理解するための新しい視点を提供します。考古学に興味のある方や、古代朝鮮の歴史について詳しく知りたい方にとって、必読の一冊と言えるでしょう。

『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』

著:早乙女 雅博
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『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』は、早乙女雅博氏により著された一冊で、2000年7月1日に同成社から発行されました。

『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』は、現在調査研究の第一線に立つ研究者が描き出す、朝鮮半島考古学の新たな概説書です。著者の早乙女氏は、平易な語り口と豊富な写真・図版を駆使して、高句麗・百済・新羅の世界を鮮やかに描き出しています。

第二次世界大戦後から現在に至るまで、朝鮮半島では精力的に発掘調査と研究が進められており、その最新の情報をもとに、旧石器時代から原三国時代、そして高句麗、百済、新羅、そして統一新羅までを、本書は平易に解説しています。

各章では、1章で旧石器時代、2章で櫛目文土器時代、3章で無文土器時代、4章で原三国時代と楽浪郡、5章で高句麗、6章で百済、7章で加耶、8章で新羅、そして9章では統一新羅について詳しく解説されています。

朝鮮半島はアジア大陸の東端に位置し、南北に長い半島であり、古代から多様な文化が生まれ、発展してきました。その独自の歴史と文化を、考古学的な視点から描き出すこの『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』は、朝鮮半島の歴史に興味を持つ人々にとって、新たな知識を提供する一冊となることでしょう。

まとめ

A lot of recent vast excavation and research results
近年の膨大な発掘調査・研究成果が盛りだくさん

これら5冊の書籍を通じて、私たちは韓国、特に朝鮮半島の考古学について深く探求することができました。『概説 韓国考古学』では、韓国考古学の概観と最新の研究動向を理解することができ、『日韓交流の民族考古学【リ・アーカイヴ叢書】 』では、古代からの日韓間の交流と影響を、考古学的証拠を通じて調査しました。

さらに、『「異形」の古墳 朝鮮半島の前方後円墳 (角川選書) 』では、朝鮮半島のユニークな墓制としての前方後円墳を、考古学の視点から詳細に見てきました。これにより、私たちは朝鮮半島の死者への敬意と信仰の形態について新たな視点を得ました。

『古代朝鮮の国家体制と考古学』では、中国式の政治制度が三国時代の朝鮮半島にどのように影響を及ぼしたかについて研究しており、その結果が墳墓や葬制、土器様式などの物質文化にどのように反映されたかを探求しています。

最後に、『朝鮮半島の考古学 (世界の考古学)』は、旧石器時代から統一新羅時代まで、朝鮮半島の歴史と文化の変遷を豊富な写真と図版を交えながら詳細に説明しています。

これらの書籍は、それぞれ異なる視点から朝鮮半島の考古学を解説しており、朝鮮半島の深遠な歴史と文化を理解するための貴重なリソースとなっています。それぞれの時代とテーマによって異なる洞察を提供するこれらの書籍を読むことで、私たちは朝鮮半島の過去が現在の社会や文化にどのように影響を与えているかについて、より深い理解を得ることができるでしょう。これらの書籍は、歴史や考古学に興味がある方々にとって、一読の価値があるでしょう。