博物館や美術館は、歴史や文化、芸術、科学といった多岐にわたる知識を広め、世界の理解を深めるための重要な場所です。その中心にいるのが、様々な展示やイベントを企画し、運営し、教育的なプログラムを提供する学芸員です。彼らの仕事は、私たちが博物館を訪れるときに見る美しい展示の裏側にある、見えない努力と情熱の結晶です。
学芸員という職業について深く探るために、本日は5つの注目すべき書籍を紹介します。それぞれ『これから学芸員をめざす人のために』、『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』、『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』、『学芸員になるには (なるにはBOOKS)』、『博物館と学芸員のおしごと』というタイトルで、学芸員としてのキャリア、彼らの日々の生活、職務についての理解を深めることができます。
学芸員を目指す人、博物館や美術館が大好きな人、あるいは一般の読者であっても、これらの書籍は、この職業の奥深さと魅力を理解するための貴重なリソースとなるでしょう。さあ、一緒に学芸員の世界を探訪しましょう。
『これから学芸員をめざす人のために』
『これから学芸員をめざす人のために』という本は、学芸員(Curator)という職業に興味を持つ人、特に未来の学芸員を目指す人々に向けた本音の就職ガイドです。この本の著者は、杉本 竜氏で、桑名市博物館の現役館長です。
学芸員の採用は限られていて、その門は非常に狭いと言われます。しかし、杉本氏が率いる桑名市博物館では、アルバイト職員を数多く採用しています。本書では、杉本氏が、大学で学べない学芸員の目指し方と、仕事内容の細部までを伝授します。それは決して夢見がちな内容ではなく、就職した後に挫折しないための現実的なアドバイスが詰まっています。このような視点から、本書は令和の時代に博物館学芸員として生き抜くための指南書として、非常に役立つ一冊と言えるでしょう。
『これから学芸員をめざす人のために』の目次を見ると、学芸員という職業について網羅的に解説しています。第1章では学芸員を目指すためのステップが、第2章では実際に学芸員になったら何をするのか、具体的な仕事の内容が、そして第3章では学芸員としてのキャリアや将来の展望について語られています。これらの章では、学芸員の一日の流れ、ミュージアムの仕事、講演会の運営、学芸員のライフハック、出世の道、そしてレコーディングミュージアム(Recording Museum)のススメなど、多岐にわたるトピックがカバーされています。
杉本氏自身は、幼少期から博物館や城跡に興味を持つという背景を持っており、その後、関西大学と立命館大学で学び、北九州市立小倉城庭園博物館で学芸員のキャリアをスタートしました。その後、桑名市博物館で学芸員として働き、2017年にはその館長に就任しています。
この『これから学芸員をめざす人のために』は、博物館や美術館などの学芸員を目指す人々にとって、業界の本質を理解するための一助となり、また、成功するための具体的なステップを示す実用書とも言えます。学芸員を目指す人々だけでなく、博物館や美術館に関心がある人々にも、この本は大いに役立つでしょう。
『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』
『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』という書籍は、学芸員(Curator)の職務や彼らの日々の仕事を描いた一冊です。その中には、展示の作成、物品の収集、調査、整理といった彼らの日々のタスクが詳しく描かれています。この本は、文学通信から2023年2月に出版されました。
この『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』の特徴的なところは、その描写がほのぼのとしたトーンで描かれた四コマまんが(four-panel comic)形式であることです。これは、公立博物館で働く様々な役割を持った人々と、それぞれがどのように日々奮闘しているのかを生き生きと描き出しています。
書籍化を待ち望んだファンにはうれしいニュースで、元々はSNSで連載されていた作品です。そして、書籍化にあたり、新たなコラムが追加され、学芸員の仕事についてより深く理解できるようになっています。また、四コマ「【外伝】学芸員の就活日記」という特別編も収録されています。
これは博物館の仕事への理解を深めるための優れたガイドであり、また学芸員になりたいと考えている人々にとっての必読書です。それは、業界の内側から見た現実的な視点と、ほのぼのとしたユーモラスな描写がうまく組み合わさった一冊で、業務についての深い洞察と共に、業界の人間性を理解する機会を読者に提供します。
著者の滝登くらげさんは、様々な規模と種類の博物館を経験し、現在はとある博物館に落ち着いています。彼女のペンネームは、山口県の秋芳洞にある鍾乳石の名所「くらげの滝のぼり」から取られています。この一冊は、楽しみながら学芸員の仕事について学びたい人々にとって、非常に魅力的な読み物となるでしょう。
『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』
『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』は、著者鷹取ゆうさんが自身の体験を基に書いた、博物館の資料整理の裏側で起こる物語です。この本は、河出書房新社から2021年1月に出版されました。
『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』では、郷土資料館での資料収集、管理、調査の過程が詳細に描かれています。その中で、著者は、学芸員(Curator)の仕事について、読者が通常見ることのできない一面を垣間見せてくれます。学芸員の「細かすぎる日常」が描かれており、一般的には見過ごされがちな、資料整理に対する真剣な取り組みや情熱を感じ取ることができます。
著者の鷹取ゆうさんは、漫画家&イラストレーターであり、自身の博物館勤務経験を元にこの作品を描き上げました。彼女は、2013年から博物館の資料整理を描いた漫画を同人誌即売会で発表してきました。現在では、博物館の企画展のポスターイラストや博物館関連の漫画を手掛けています。
『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』は、学芸員の職務に興味がある人、博物館の裏側を覗きたいと思っている人、または博物館が大好きな人など、様々な読者に向けて書かれた一冊です。そして、鷹取ゆうさんの豊かな描写力によって、日常的な仕事が鮮やかに描かれ、読者に新たな視点を提供します。
『学芸員になるには (なるにはBOOKS)』
『学芸員になるには (なるにはBOOKS)』は、美術館や博物館で働く学芸員(Curator)の仕事に焦点を当てた、横山佐紀著のガイドブックです。これは、美術館や博物館の舞台裏での作業について詳しく解説しており、これらの施設での職業について興味を持つ読者にとって有益な情報が詰まっています。
この本は、学芸員の多岐にわたる業務を包括的にカバーしています。それには、展示や企画の立案から、作品の収集、情報の管理、保存修復、調査研究などが含まれます。また、自然科学、歴史、芸術、民俗といった様々な分野の取り組みを取り上げており、公立と私立の施設の違いも指摘しています。
本書は「なるにはBOOKS」シリーズの110巻で、2002年の初版以来の全面改訂版です。その内容は、博物館や美術館で働く学芸員がどのように資料を収集、保存、展示し、教育プログラムを運営するのかという幅広いトピックを取り扱っています。また、これらの業務を通じて「モノ」と「知識」の専門家としての彼らの仕事を理解することを目指しています。
著者の横山佐紀さんは、京都大学と名古屋大学で学び、名古屋大学で教育学の博士号を取得しました。彼女は、国立西洋美術館での主任研究員を経て、現在は中央大学文学部の准教授として活躍しています。他の著書には『ナショナル・ポートレート・ギャラリー その思想と歴史』があります。
『学芸員になるには』は、学芸員という職業に興味がある人、または美術館や博物館に関わる仕事に興味がある人にとって有益なガイドブックです。その詳細で広範な内容は、読者に深い理解と専門的な知識を提供します。
『博物館と学芸員のおしごと』
『博物館と学芸員のおしごと』は、柴正博著による一冊で、彼が博物館の学芸員として36年間に渡り経験してきたことを詳細に描いた作品です。この本は、博物館と学芸員の仕事について網羅的かつ深い洞察を提供し、学芸員の職務についての理解を深めるための理想的なテキストとなります。
『博物館と学芸員のおしごと』は、著者が長年にわたって一生懸命やってきた仕事、十分にできなかった仕事、失敗経験などを包み隠さずに紹介します。それは、博物館と学芸員の仕事を再度整理し、再学習する機会を提供します。さらに、最新の博物館や学芸員の業務状況についても探求し、これらの情報を組み合わせて本書は作られました。特に、この本は学芸員資格取得課程の「博物館概論」のテキストとしても利用することを目指しています。
著者の柴正博は、1952年生まれで、東海大学大学院海洋学研究科を修了し、理学博士の学位を持っています。彼は、東海大学海洋学部博物館の学芸担当課長・学芸員を務めた経歴を持ち、現在はふじのくに地球環境史ミュージアムの客員教授として活躍しています。また、東海大学海洋学部および東京農業大学の非常勤講師としても教鞭をとっています。彼の著作には『地質調査入門』、『駿河湾の形成』、『モンゴル・ゴビに恐竜化石を求めて』などがあります。
『博物館と学芸員のおしごと』は、現場の経験と洞察に基づいた豊富な情報を提供します。学芸員を目指す人、博物館や美術館に興味を持つ人、あるいは博物館学について更なる知識を求める人にとって、この本は必読の一冊と言えるでしょう。
まとめ
ブログ記事にて5つの書籍を紹介しました。それぞれ『これから学芸員をめざす人のために』、『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』、『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』、『学芸員になるには (なるにはBOOKS)』、『博物館と学芸員のおしごと』で、これらの本は学芸員という職業について多面的な視点から理解を深めるのに非常に役立つものとなっています。
これらの書籍は、それぞれ学芸員という職業について異なる視点から描かれており、様々な業務や課題、挑戦、成功体験や失敗経験について詳しく解説しています。『これから学芸員をめざす人のために』や『学芸員になるには (なるにはBOOKS)』は学芸員になるための具体的な手順や必要なスキルを明示的に指南している一方、『学芸員の観察日記: ミュージアムのうらがわ』や『ただいま収蔵品整理中!: 学芸員さんの細かすぎる日常』はより日常的な視点から学芸員の仕事を描いています。そして、『博物館と学芸員のおしごと』は、長年の経験に基づく豊富な洞察とともに、博物館と学芸員の業界についての深い理解を読者に提供します。
これらの書籍は、学芸員を目指す人だけでなく、博物館や美術館への興味を持つ一般の読者にとっても非常に有益です。それぞれの本は、博物館や美術館の舞台裏を描くことで、我々が普段見ることのできない世界への理解を深め、文化や歴史、芸術への新たな視点を提供します。これらを読むことで、読者は博物館や美術館を訪れるたびに、展示物の背後にある物語や、その展示を可能にするための尽力をより深く理解できるでしょう。