古代ローマの栄光と滅亡は、私たちが住む今の世界にも多くの示唆を持っています。彼らの技術、文化、政策、そして日常の生活。それは単なる歴史の1ページではなく、現代社会においても参考になる知恵や教訓が詰まっています。この記事では、古代ローマに関する5冊の書籍をピックアップし、その深遠なる魅力と学びを紐解いていきます。帝国の建設者から一般市民まで、さまざまな角度からローマを探求し、その魅力を再発見する旅へとあなたを誘います。

古代ローマ ごくふつうの50人の歴史 ―無名の人々の暮らしの物語

古代ローマの生活と文化に関心を持つ方々には、河島思朗著の『古代ローマ ごくふつうの50人の歴史 ―無名の人々の暮らしの物語』が心からおすすめしたい一冊です。この本は、2000年前の古代ローマの日常生活と文化を豊かに描き出しています。

多くの古代ローマに関する書籍は、大統領や将軍、哲学者などの著名な人物たちを中心に描写されていますが、この本は異色です。なぜなら、主役は古代ローマの一般市民、いわゆる「無名の人々」です。彼らの生活や文化、仕事や日常の悩みなど、庶民の視点から古代ローマを再現しています。

具体的には、クリーニング屋の店主や居酒屋の女将、人気のパン屋、美食家、そして美容師やモザイク職人、さらには図書館司書や助産師など、50人の異なる職業の人々が取り上げられています。これらの人々を通して、読者は古代ローマの生活や文化、社会の様子を垣間見ることができます。

また、本書はローマが大きな変革を遂げた共和政末期から帝政初期の時代を中心に描写しています。この時期は、ローマが最も栄えた時代とも言えるでしょう。

内容としては、ローマの歴史や日常の衣・食・住、さまざまな職業の人々、そして学術や技術を担う者たちに焦点を当てた5つの章で構成されています。特に注目すべきは、カラー写真16ページが含まれている点です。これにより、テキストだけでなく、実際の写真や図版を通しても古代ローマの日常を感じることができます。

著者、河島思朗(かわしま・しろう)氏は、1977年群馬県生まれの西洋古典学者。彼は京都大学大学院文学研究科の准教授として活動しており、これまでに多数の著作や編著書を手掛けています。特にラテン語やギリシャ語、西洋の古典文学に関する研究や教材の制作に携わってきました。その専門的な知識と深い愛情をもって、古代ローマの一般市民の生活や文化を読者に伝えてくれるのです。

本書を手に取れば、古代ローマのリアルな日常と文化、そして一般市民の生活が目の前に広がります。歴史好きな方はもちろん、日常生活や文化、社会に関心を持つ方々にも、この本は大変価値があると言えるでしょう。

古代ローマ 饗宴と格差の作法

著:祝田 秀全
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古代ローマ(Ancient Rome)の魅力と複雑さを探るなら、祝田秀全(Shiota Hidezane)監修の『古代ローマ 饗宴と格差の作法』が絶好の選択です。この書籍は、一般的に知られているカエサルやアウグストゥスといった偉大な指導者や暴君だったカリグラやネロのような歴史的人物たちではなく、古代ローマの文化的な側面に焦点を当てています。

古代ローマというと、西洋史の中でも特に影響力のある時代として知られています。しかし、その背後にはどのような生活や文化、そして習慣があったのでしょうか。本書では、地中海全域にわたる大帝国として栄えた古代ローマの実像を描き出しています。特に「テルマエ(Thermae)」と呼ばれる公衆浴場や、贅沢を極めた饗宴の背後にある格差など、リアルな暮らしの様子が詳細に紹介されています。

この時代のローマは、古代西洋最大の帝国として、多様な文化や習慣を持っていました。本書には300点以上の豊富なイラストが収録されており、それらを通じて古代ローマの日常がビジュアルで伝えられています。例えば、2世紀前半のハドリアヌス帝の治世を中心に、帝都ローマが100万人以上の人口を抱え、先進的な文化を持っていたこと、公衆浴場や円形闘技場のコロッセウム(Colosseum)がどのような役割を果たしていたのかなど、魅力的な内容が詰まっています。

また、古代ローマ帝国の文化は「西洋文明の土台」とも評され、現代においても多様性が求められる中、その背景や考え方を知ることは、相互理解のために非常に有益です。『古代ローマ 饗宴と格差の作法』は、西洋的な考え方を文化的な側面から知るための一冊として、読者に新しい視点を提供してくれることでしょう。

総じて、祝田秀全監修のこの書籍は、古代ローマに興味がある読者や、西洋文化の深層を知りたい読者にとって、欠かせない一冊となっています。

古代ローマ軍の土木技術

著:ジェラール・クーロン, 著:ジャン=クロード・ゴルヴァン, 翻訳:大清水 裕
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古代ローマはその絶頂期において広大な領土を有していましたが、その帝国全体を支えていたのは、ただの兵士ではなく、複数の技能を持った兵士たちでした。ジェラール・クーロン(Gérard Coulon)とジャン=クロード・ゴルヴァン(Jean-Claude Golvin)による著書『古代ローマ軍の土木技術』は、戦時だけでなく平和の時にも活躍していたローマの兵士たちの日常と、彼らがどのように帝国全体のインフラを築き上げていったのかを詳しく解説しています。

ローマの兵士たちは戦争がないときも無駄に過ごすことはありませんでした。司令官たちは、兵士が無為に過ごす時間を減少させるため、彼らを土木事業に動員しました。この結果、トンネルの掘削、街道の建設と繋がり、橋や水道の構築など、多岐にわたる大規模な公共事業が行われました。これはローマ帝国が大都市として発展する基盤を作った重要な要因の一つとされています。

この著書の中では、古代ローマの兵士たちがどのような環境や立場のもとで土木工事を行っていたのか、そして彼らが使用していた具体的な技法や技術について詳しく解説されています。特に詳細なイラストが掲載されており、読者はまるで当時の工事現場にタイムスリップしたかのような体験ができるでしょう。

著書の内容は、ローマの建築家としての兵士たちの役割や、大規模な土木事業が兵士の精神状態にどのように影響したのか、ローマの栄光を象徴する事業など、多岐にわたっています。具体的な事例としては、マリウスやコルブロの運河、ネロのコリントス地峡開削の試み、イタリアやガリアでの水道建設、小フラミニア街道の建設と修復、ライン川やドナウ川での橋の建設、鉱山や採石場での兵士たちの役割、そして新しい都市や植民市の創設などが詳細に解説されています。

著者のジェラール・クーロンは文化遺産の主任学芸員としてローマ期のガリアに関する多くの著書を持つ学者であり、ジャン=クロード・ゴルヴァンは建築家でありながら、古代遺跡の復元図制作の第一人者として知られています。そして、この著書を日本語に翻訳したのは、ローマ帝国の専門家である大清水裕氏です。

総じて、この著書は古代ローマの土木技術とその背景にある兵士たちの活動を深く理解するための絶好のガイドと言えるでしょう。

教養としての「ローマ史」の読み方

著:本村 凌二
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本作『教養としての「ローマ史」の読み方』は、東京大学名誉教授であり、古代ローマ史の専門家である本村 凌二(ほんむら りょうじ)によって執筆された著作です。出版されたのは2018年3月20日で、PHP研究所より発行されました。

この書籍は、なぜローマが帝国として栄えることができたのか、そしてなぜその強大な帝国は滅びることとなったのか、という大きな問いに答える形で古代ローマの歴史を解説しています。ローマの歴史は、王政(Roman Monarchy)から共和政(Roman Republic)、そして帝政(Roman Empire)へと変遷し、多神教から一神教へと宗教的な背景も変化しました。

本書では、以下の4つの大きなテーマを中心にローマ史が展開されます。

  1. なぜ、ローマは世界帝国へと発展したのか – ここでは、地中海の統一や強大な敵であったカルタゴの滅亡、共和政の選択やローマ軍の強さに秘密があるのかという点に焦点を当てています。
  2. 勝者の混迷、カエサルという経験 – グラックス兄弟の改革やユリウス・クラウディウス朝の終わり、英雄カエサルの役割やローマ皇帝の誕生など、共和政の末期と帝政の初期についての深い洞察が示されています。
  3. 「世界帝国ローマ」の平和と失われた遺風 – 五賢帝の時代や悪帝ドミティアヌスの出現、そして人類史上で最も幸福とされる五賢帝の時代に焦点を当て、ローマ帝国のピークとその後の混乱について解説されています。
  4. ローマはなぜ滅びたのか – 軍人皇帝時代、三世紀の危機やキリスト教の登場など、ローマ帝国がどのような要因で滅びたのかを詳細に探る章です。

本書は、ローマ史だけでなく、それを通じて現代社会や世界史をより深く理解するための一冊としても位置づけられています。ローマの歴史は、建国時の混乱から異民族の侵入、文明の変質まで多岐にわたるため、その歴史を通じて現代の問題や課題にも新しい視点を提供してくれます。

著者の本村凌二は、東京大学や一橋大学などでの教職を経て、早稲田大学国際教養学部の特任教授を務めるなど、古代ローマ史の第一人者として知られています。彼の研究成果や執筆活動は高く評価されており、『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞を受賞しています。

佐藤優氏の推薦文にもあるように、『教養としての「ローマ史」の読み方』は、ローマ史の中に人間の英知や歴史の教訓が詰まっていることを再認識させてくれる一冊と言えるでしょう。

完全版 ローマ人への質問

著:塩野 七生
¥935 (2023/09/16 10:21時点 | Amazon調べ)

古代ローマに関する話題の書籍『完全版 ローマ人への質問 (文春新書 1411)』は、塩野七生(Shiono Nanami)の手による全面改稿で2023年6月20日に文藝春秋から発売されました。この著書は前回の20万部を超えるベストセラーをさらに磨き上げた一冊として注目されています。

本書は古代ローマの歴史を、現代の問題やリーダーシップ、国家運営などの観点から分析・考察しており、異民族の流入、経済の格差拡大、そして衰退の兆しといった現代と重なる課題に対する答えや示唆を、ローマの歴史を通じて読者に提供しています。

「ローマは一日して成らず」という格言からもわかるように、ローマの歴史は一千年の間に多くの危機とその克服が繰り返されてきました。カルタゴとの抗争や、天才カエサルによる帝政への移行、そして「パクス・ロマーナ(Pax Romana)」の確立など、多くの出来事がこの時代には生じています。

本書の大きな特徴は、質問形式で古代ローマに関する様々なトピックを取り上げている点です。ローマとギリシアの関係、富の格差、カルタゴとの対決、ローマ法、都市計画、女性や奴隷、そしてローマの滅亡に至る原因など、20の質問を通じてローマ史の核心に迫っています。

著者の塩野七生は、1937年東京生まれの著名な歴史作家で、イタリアの歴史や文化に関する著作を多数手がけています。彼女の代表作『ローマ人の物語』は、06年に全15巻が完結し、その他にも多数の賞を受賞していることから、その筆力と研究の深さは確かなものと言えます。

このように、『完全版 ローマ人への質問』は、古代ローマの歴史と現代の問題を繋げ、人間の営みや国家運営の本質を問い直すための一冊となっています。ローマ史を学ぶことで、現代社会の理解をより深め、新たな視点での解決策を模索する手助けをしてくれるでしょう。

まとめ

From the founding of the country to the glory of antiquity, from the time of the popes to modern times.
建国から古代の栄光、教皇たちの時代から近代まで

古代ローマの歴史は、その千年以上にわたる発展と衰退を通じて、我々に多くの学びと示唆を提供しています。以下の5冊は、ローマに関する多様な視点と深い洞察を提供し、この古代の帝国を多面的に捉えるための鍵となるものです。

  1. 『古代ローマ ごくふつうの50人の歴史 ―無名の人々の暮らしの物語』: この書籍は、偉大な指導者や将軍たちではなく、一般的なローマ市民の生活に焦点を当てています。彼らの日常の中で、ローマの社会、文化、経済がどのように機能していたかを垣間見ることができ、大帝国の裏側の生活を理解する手助けとなります。
  2. 『古代ローマ 饗宴と格差の作法』: ローマの食文化と社会的格差を中心に探るこの書籍は、饗宴(feast)の重要性とそれがもたらす社会的影響に焦点を当てています。食を通じて、当時のローマ社会の階層性や富の分配、そして人々の価値観を理解することができます。
  3. 『古代ローマ軍の土木技術』: ローマはその軍事技術だけでなく、土木技術においても非常に先進的でした。この書籍では、ローマ軍がどのようにして橋や道路、水道などの巨大な構造物を建設したのか、その技術と知恵を詳細に紹介しています。
  4. 『教養としての「ローマ史」の読み方』: ローマの歴史を教養としてどのように理解し、現代にどのように適用すべきかを説く一冊。歴史の事実だけでなく、その背後にある意味や、それが我々に何を教えてくれるのかについての指南書として役立ちます。
  5. 『完全版 ローマ人への質問 (文春新書 1411)』: 塩野七生(Shiono Nanami)の手によるこの著作は、20の質問を通じてローマの歴史の核心に迫ります。現代の問題やリーダーシップ、国家運営など、多様な視点からローマを捉えることができる一冊です。

これらの5冊を通じて、古代ローマの歴史、文化、社会、そして技術を包括的に理解することができます。各書籍が提供する視点や知識は、古代ローマを単なる過去の帝国としてではなく、現代に生きる我々の人生や社会にも適用可能な普遍的な教訓として捉える手助けとなるでしょう。