琉球列島(Ryukyu Islands)は、南日本の熱帯地域に浮かぶ美しい島々ですが、その美しさは自然だけに留まりません。琉球には古くからの独自の文化と歴史が息づいており、それを探る鍵となるのが「考古学」です。考古学は、文字による記録がない過去を探る道具であり、土の下に眠る遺物や遺構を通じて、私たちの先祖の生活や思考、文化を解明します。今回の記事では、琉球の考古学に関する5つの興味深い著書を紹介し、その魅力を多角的に掘り下げます。初心者から専門家まで、琉球の深い歴史に触れ、その魅力を共有しましょう。

琉球の考古学 (ヒスカルセレクション6) 

著:宮城弘樹
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『琉球の考古学 (ヒスカルセレクション6)』は、宮城弘樹氏が著した、琉球列島(Ryukyu Islands)の豊かな歴史と考古学的成果に焦点を当てた書籍です。2022年4月13日に敬文舎から出版された本書は、日本列島での最古の全身人骨発見から太平洋戦争期の戦争遺跡まで、様々な時代を網羅しています。

本書の特徴は、考古学の最新の成果を提示しつつ、豊富なカラー写真や図版を用いて、その内容をわかりやすく解説している点にあります。

内容としては、以下の章立てで構成されています。

  1. 第1章 蒼海に列なる島々 – 琉球列島の基本的な地理や自然環境についての紹介。
  2. 第2章 旧石器時代の琉球列島 – 旧石器時代(Paleolithic period)に焦点を当てた琉球の歴史。
  3. 第3章 奄美・沖縄諸島の貝塚文化 – 貝塚文化(Shell Midden Culture)として知られる文化の展開。
  4. 第4章 宮古・八重山諸島の新石器時代︱有土器から無土器へ – 新石器時代(Neolithic period)における土器の進化や変遷について。
  5. 第5章 グスク時代、そして琉球王国の誕生 – グスク時代と後の琉球王国(Ryukyu Kingdom)の誕生・展開に関する詳細な検討。

著者、宮城弘樹氏は、1975年に沖縄県名護市で生まれ、沖縄の歴史や考古学に関する多くの研究や著書を持つ学者です。現在は沖縄国際大学総合文化学部社会文化学科で准教授として教鞭をとっています。彼の主要な著書には、「首里城にいたるまでのグスク」や「中世の銭と琉球王国」などがあり、琉球の歴史や文化に関する深い知識を持つことが伺えます。

総じて、『琉球の考古学 (ヒスカルセレクション6)』は、琉球列島の歴史や考古学に関心を持つ読者にとって、非常に有益な情報を提供する一冊となっています。

ものがたる近世琉球: 喫煙・園芸・豚飼育の考古学

『ものがたる近世琉球: 喫煙・園芸・豚飼育の考古学』は、石井龍太氏による、近世の琉球文化史を探求した注目の書籍です。この書籍は、2020年11月17日に吉川弘文館から発売されました。

本作の主題は、日本列島が江戸時代(Edo period)を迎えていた当時、琉球諸島(Ryukyu Islands)において、どのような文化や風習が存在していたのか、という問いへの探求です。この期間、琉球は周辺地域の影響を受けつつも、その独自性を保ちながら文化的に発展していました。特に、本書は喫煙(smoking)、園芸(gardening)、豚飼育(pig farming)という、三つの具体的な事象を中心に探究しています。

これらの事象を通して、石井氏は歴史考古学(historical archaeology)の手法を駆使し、当時の琉球の人々の日常生活、思想、風習、制度、行動、価値観などを深く掘り下げています。本書は近世遺跡の発掘調査の成果を基に、琉球文化史への新しいアプローチを提示しており、読者には往時の琉球の生活や文化を身近に感じることができるでしょう。

著者、石井龍太氏は1979年に千葉県で生まれ、東京大学大学院で考古学を学びました。現在は城西大学経営学部の准教授として活動しています。彼の過去の研究や著書、特に『島瓦の考古学』や「近世琉球王国と東アジア交流」などからも、琉球に関する深い知識と研究への情熱が伺えます。

総じて、『ものがたる近世琉球: 喫煙・園芸・豚飼育の考古学』は、琉球の文化や歴史に関心を持つ読者にとって、非常に価値のある一冊といえるでしょう。

琉球国成立前夜の考古学

同成社
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『琉球国成立前夜の考古学』は新里亮人氏による、琉球国成立史の考古学的再構築に取り組んだ著作です。2018年10月25日に同成社から出版され、早々に学術の世界で高い評価を受け、第13回九州考古学会賞や第10回日本考古学協会奨励賞を受賞しています。

本書の核心は、「琉球国はいかにして成立したのか」という問いへの探求です。新里氏は、琉球列島(Ryukyu Islands)で出土した在地土器(local pottery)や貿易陶磁器類(trade ceramics)の詳細な分析を行い、各島嶼(individual islands)の経済的動向と社会・文化との関係を明確にしています。

特に注目すべきは、各章で取り扱われるテーマの緻密さと多様性です。例えば、第1章ではグスク時代(Gusuku period)開始直前の考古学的状況を概観し、続く章では、在地土器の変容、舶来品(imported goods)の受容、窯業技術(pottery techniques)の系譜、食器類の歴史動向など、琉球列島の歴史的変遷に関連するさまざまな側面を深く探っています。特に舶来煮沸具や供膳具の受容、窯業生産や陶器流通の特質を詳細に考察することで、琉球国成立前夜の社会の様相や動きを明らかにしています。

著者新里亮人氏は、1977年沖縄県生まれ。熊本大学大学院社会文化科学研究科を修了し、学位として博士(文学)を持つ。彼の背景や学び、そして本書に込められた情熱は、伊仙町教育委員会学芸員としての現職を通じても伺うことができます。

総じて、『琉球国成立前夜の考古学』は、琉球の歴史や文化、考古学に関心を持つ読者にとって、非常に有意義で深い洞察を提供する一冊となっています。

奄美・沖縄諸島 先史学の最前線

著:高宮 広土, 著:北野 堪重郎, 著:具志堅 亮, 著:黒住 耐二, 著:呉屋 義勝, 著:篠田 謙一, 著:新里 亮人, 著:新里 貴之, 著:高梨 修, 著:高橋 遼平, 著:竹 盛窪, 著:樋泉 岳二, 著:野﨑 拓司, 著:南 勇輔, 著:山崎 真治, 編集:高宮広土
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2018年に南方新社より出版された『奄美・沖縄諸島 先史学の最前線』は、奄美および沖縄諸島の先史時代における独特な文化や生活についての深い探求を描いた学術書です。島々の環境の中で数千年にわたり狩猟・採集生活が続いたことは、世界的にも類例の少ない事例であり、この特異性が多くの考古学者や研究者の目を引いています。

本書は、先史学の最新の研究成果や調査を網羅し、考古、人類、遺伝といった多岐にわたる分野から、日本人の起源や歴史的背景に与える影響を緻密に解説しています。

具体的には、貝塚時代(Shell Midden Period)の土器文化、グスク時代(Gusuku period)における食器類との関連、南西諸島の集団のDNA、奄美の遺跡から出土する貝や、先史時代の食料資源利用などを詳しく探る章が配置されています。特に注目すべきは、植物や動物の資源利用に関する考察で、これらが先史時代の人々の食生活や文化、技術の発展にどのように影響したかを明らかにしています。

また、書籍内に配置されたコラムでは、沖縄の旧石器人、与論の遺跡、喜界島の歴史、食料運搬に関するDNA解析といったテーマを取り扱い、先史時代の生活や技術、文化を多角的に解析しています。

本書の執筆陣は、国内外での高い評価を持つ専門家たちで構成されており、それぞれの専門領域からの知識や視点が詰まっています。中でも新里亮人氏や新里貴之氏は、沖縄考古学の先駆者としての実績を持つ著名な研究者であり、彼らの寄稿によって本書の価値は一層高まっています。

総じて、『奄美・沖縄諸島 先史学の最前線』は、沖縄や奄美の先史時代に関心を持つ研究者や学生、一般読者にとって貴重な情報源となること間違いありません。

南島考古入門―掘り出された沖縄の歴史・文化

著:沖縄考古学会
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『南島考古入門―掘り出された沖縄の歴史・文化』は、沖縄考古学会 (Okinawa Archaeological Society) が出版した、沖縄の豊かな考古学的成果を総括する入門書です。ボーダーインク (Border Ink) によって2018年に刊行され、総勢70名の著者がその執筆に貢献しています。この書籍は、沖縄の歴史と文化の深さと多様性を網羅的に、かつアクセスしやすい形で紹介しています。

沖縄考古学は、過去の先史時代だけでなく、グスク時代 (Gusuku period)、琉球王国時代 (Ryukyu Kingdom period)、近・現代といった様々な時代を対象として研究が行われています。考古学 (archaeology) の学問の進展により、一昔前にはわずか千年の歴史しか探ることができなかった沖縄の歴史が、現在では数万年前に遡ることができるようになりました。

本書は、四十年前に沖縄考古学会が出版した『石器時代の沖縄』の続編として位置づけられます。それ以来、沖縄考古学の研究は劇的に進展し、研究者の数も大幅に増加。これを受けて、本書の出版が企画され、最新の研究成果を市民へ伝えるための普及書として完成しました。

内容としては、沖縄の地理的環境や考古学の歩みを紹介する章から始まり、旧石器時代から新石器時代、グスク時代、琉球王国時代、近・現代の考古学まで、時代ごとの考古学的発見や研究を深く探る章が構成されています。さらに、興味深いコラムや、主要な遺跡、重要人物、博物館の紹介も盛り込まれています。

沖縄の土地には、過去数万年前からの悠久の歴史が埋もれており、本書はその歴史を掘り起こす鍵となるでしょう。読者は、考古学的な知識や技術によって、沖縄の先人たちの生活や文化、社会について深く理解することができます。この一冊を通して、沖縄の過去と未来、そしてその豊かな文化遺産に触れることができるでしょう。

まとめ

The Okinawa Archaeological Society was established on September 21, 1969 to promote archaeological research in Okinawa.
沖縄考古学会は1969年9月21日沖縄の考古学研究を推進する目的で設立された学会.

琉球列島(Ryukyu Islands)の歴史と文化は、多岐にわたる時代と背景を持つ独特のものです。本文では、5つの著書『琉球の考古学 (ヒスカルセレクション6)』、『ものがたる近世琉球: 喫煙・園芸・豚飼育の考古学』、『琉球国成立前夜の考古学』、『奄美・沖縄諸島 先史学の最前線』、および『南島考古入門―掘り出された沖縄の歴史・文化』を通して、琉球の考古学的側面を紹介し、その奥深さを探ります。

  1. 『琉球の考古学 (ヒスカルセレクション6)』
    • この著作は、琉球の考古学の基本的な枠組みと発展を解説しています。琉球列島の古代からの連続性と変遷、それを支える考古学的証拠を基に、読者に琉球の豊かな歴史を導入します。
  2. 『ものがたる近世琉球: 喫煙・園芸・豚飼育の考古学』
    • 琉球の日常生活の中の3つの特定の側面、喫煙(smoking)、園芸(gardening)、および豚飼育(pig farming)を中心に、近世琉球の生活様式と文化を探求しています。これらの要素は、琉球の社会経済や文化におけるキーとなる要素を示しており、考古学的研究を通じてこれらの側面が明らかになっています。
  3. 『琉球国成立前夜の考古学』
    • この書籍は、琉球国の成立に先立つ時代、特にその政治的・文化的背景に焦点を当てています。考古学的証拠を基に、琉球列島の統一国家としての成立のプロセスとその背後にある力動を解明します。
  4. 『奄美・沖縄諸島 先史学の最前線』
    • 奄美と沖縄諸島の先史時代に焦点を当てたこの著作は、この地域の最古の歴史と文化を探るものです。考古学的発掘と研究の最新の成果を通じて、これらの島々の初期の住民や文化の発展を紹介しています。
  5. 『南島考古入門―掘り出された沖縄の歴史・文化』
    • この書籍は、沖縄の考古学を総合的に紹介する入門書です。沖縄の地理、歴史、文化など、多岐にわたるトピックを包括的に扱っています。初心者でも理解しやすいように、歴史と文化の背後にある考古学的な要素を解説しています。

総括: 琉球の考古学は、その地域固有の文化と歴史を理解するための鍵となるものです。これらの著書を通して、琉球列島の深い歴史、多様な文化、そしてその発展の過程を学び取ることができます。特に、日常生活の側面から、国の成立の背後にある力動まで、幅広い視点で琉球の過去を探ることが可能です。