水中に眠る遺跡は、人類の歴史と文化を解明するための重要な鍵となります。その発掘と研究は、一見、手の届かない深海の奥底に秘められた謎を解き明かす冒険のようなものです。今回は、その冒険を可能とするフィールド、水中考古学に焦点を当て、その魅力と深淵を探るための5つの本を紹介します。これらの本は、古代の都市から沈没船、地中海の遺跡まで、水中に眠るさまざまな文化遺産について詳しく解説しており、考古学者の視点からの語り口が特徴です。あなたもこれらの本を手に取ることで、海の底に隠された歴史の興奮と発見の旅に出発することができるでしょう。

『水中考古学 地球最後のフロンティア』

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『水中考古学 地球最後のフロンティア』は、佐々木ランディ著の先鋭的な考古学の一分野である水中考古学についての魅力と課題を紐解く一冊です。著者の佐々木ランディは日本出身で、海事考古学の博士号を持つ研究者で、「水中考古学の父」とも呼ばれるジョージ・バス氏の下で学び、アジアの水中遺跡調査に多く参加しています。

『水中考古学 地球最後のフロンティア』は、水中考古学の素晴らしさとその深層を読者に伝えるために書かれました。それは、かつて海や湖の底に沈んだ遺物や遺跡から得られる歴史的な発見が、我々の理解する歴史を塗り替える可能性を持っているからです。海底にはまだ発見されていない遺跡が数多く存在し、それらは「地球最後のフロンティア」とも称されています。

しかし、日本は海洋国家でありながら、水中考古学の分野では世界に比べて大きく後れを取っています。その結果、貴重な水中遺跡が十分に保護されず、失われてしまうという悲しい現状が生まれています。この問題を解決するため、佐々木ランディが立ち上がり、水中考古学の価値と魅力を伝える使命感からこの本を書きました。

『水中考古学 地球最後のフロンティア』の内容は、水中考古学の美しさと神秘性を写真で示すセクションから始まり、水中考古学への冒険のガイド、そして、具体的な研究例として蒙古襲来の真実を解き明かす章や、海底探査の歴史、日本と世界の水中遺跡についての章、そして最後には、興奮させる水中遺跡の”偏愛”ランキングまで、読者を広範で深い知的探求の旅へと導きます。

『水中考古学 地球最後のフロンティア』は、水中考古学についての広範囲な知識を提供するだけでなく、その分野に対する熱意と使命感も伝えることで、読者が「日本人なら水中考古学」と叫びたくなるほどの興奮を感じることでしょう。歴史への新たな視点を求める読者や、考古学に興味のある方にとって、この『水中考古学 地球最後のフロンティア』は必読の一冊と言えるでしょう。

『図説 世界の水中遺跡』

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『図説 世界の水中遺跡』は、深海や湖底に眠る遺跡や物品を紹介し、それらを通じて太古の文化や生活を解き明かす貴重な一冊です。著者である小野林太郎氏と木村淳氏は共に海洋考古学の専門家で、地球上の水中遺跡の解明と保存に一生を捧げています。この『図説 世界の水中遺跡』は彼らの研究と知識が凝縮された一冊と言えます。

海底や湖底に沈む船や建築物は、太古の人々の暮らしや文化を物語っています。そのような水底の遺跡や引き上げられた様々な物品から、当時の暮らしや文化の謎を解き明かすことが本書の主題です。それらは全て美しい水中写真と詳細なイラストによって描かれており、その映像美はまさに「リアルなファンタジーの世界」です。

予想外の地域で見つかった予想外の生産地の陶磁器などの遺物から、かつて海が世界のインフラの中心であったことを読み取ることができます。その他にも、淡水湖の底に眠る遺跡の紹介や、大昔の人々の生活と文化を解説する章も含まれています。これらの章は、遺跡の専門家や水中写真家による詳細な解説と共に展開されます。

著者の小野林太郎氏は上智大学院から地域研究の博士号を取得し、海洋学の教授として活躍しています。また、木村淳氏はフリンダース大学大学院で博士号を取得し、現在は東海大学海洋学部の特任講師として活躍しています。彼らの深い専門知識と経験がこの一冊に集約されています。

『図説 世界の水中遺跡』は、海底や湖底に眠る遺跡から人類の歴史を探究するための指南書と言えます。これらの遺跡が語る太古の文化や暮らしを理解することで、私たち自身の生活や文化に対する理解を深める手助けになるでしょう。

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』

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『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』は、水中考古学者である山舩晃太郎による情熱と冒険の物語で、世界各地の海底での考古学的発掘の記録を紹介しています。この『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』は、様々な場所での発掘活動とその結果を通じて、読者に水中考古学の魅力と困難を理解する機会を提供します。

山舩氏は、英語力ゼロの青年から10年かけて水中考古学者へと成長する道のりを描き出しています。それは、言語の壁を乗り越え、新しい環境と技術に適応し、困難に立ち向かうことで得られた充実感と達成感を体験することについての物語です。この本は、彼がトレジャーハンターから学者へと進化する過程を描いています。

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』は、興味深いエピソードと深い洞察に満ちています。たとえば、水中遺跡を「タイムカプセル」と比較し、陸上遺跡を「ミルフィーユ」と表現するなど、考古学的発見の視点を提供しています。これらの視覚的なメタファーは、水中考古学が時間を遡り、歴史の層を剥がし、人間の過去について新しい理解を提供する方法を説明します。

山舩氏はまた、考古学的発掘が恋とカオスという形で現れることも共有します。現場での予期せぬ問題、焦り、驚きの発見、そして解明の喜びといった多くのエピソードが織り交ぜられています。彼のエピソードは、読者に対して現場の困難さとその報酬の大きさを伝えます。

さらに、山舩氏は自身の研究を通じて、科学の力で過去を解き明かすことの重要性を示しています。彼の研究は、水中考古学がどのようにして人類の過去を理解する助けとなるかを描いています。彼がエーゲ海から「臭いお宝」を引き上げ、ドブ川でレア古代船を掘り出し、カリブ海で正体不明の海賊船を追い、バハマでコロンブスの影を探し、ミクロネシアでゼロ戦に出会うといった一連の旅は、この分野の学者が直面する挑戦と達成の両方を生々しく描いています。

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』は、水中考古学という、多くの人々が知らない世界へのガイドブックとも言えます。山舩氏の熱意と冒険心に満ちた旅は、読者に対して、この分野が歴史の理解にどのように貢献しているかを示すだけでなく、その過程がいかにエキサイティングであるかを教えてくれます。

『元軍船の発見 鷹島海底遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」150)』

『元軍船の発見 鷹島海底遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」150)』は、中田敦之と池田榮史によって共著された一冊の書籍です。中田敦之は松浦市立水中考古学研究センター所長であり、池田榮史は國學院大學研究開発推進機構教授であることから、彼らはその分野の専門家と言えます。

『元軍船の発見 鷹島海底遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」150)』は、鎌倉時代の元の大軍が九州北部に来襲したときに遭遇した大暴風雨と、その後の壊滅的な被害を詳述しています。それらがどのように発生し、結果として元軍船が沈んだのかを、調査結果と発見した証拠をもとに描いています。特に、伊万里湾の鷹島周辺で発見された元軍船の写真と実測図を豊富に収録しており、海底考古学という特殊な分野の興奮を共有する機会を提供しています。

第1章では、蒙古襲来とその時代背景について説明しています。モンゴルの台頭と、日本に対するその影響を詳細に掘り下げています。第2章では、伊万里湾と鷹島という、この物語の舞台となる地域を詳しく解説し、地域の伝説も紹介しています。

第3章では、海底調査の試行錯誤のプロセスを解説し、読者に現場の困難さと興奮を体感させています。第4章と第5章では、元軍の痕跡と元軍船の発見に焦点を当て、それらがどのように確認されたのか、どのような証拠が見つかったのかを解説しています。

最終章では、この海底遺跡調査の未来について考察しています。元軍船の引き揚げについても触れており、考古学者や歴史愛好家、一般の読者にとって非常に興味深い内容となっています。

著者たちはそれぞれ自身の経験と研究成果を活かし、この興味深い歴史的出来事を詳細に描き出しています。彼らの専門的な視点は、読者がこれらの出来事を理解するのに大いに役立つでしょう。そのため、この『元軍船の発見 鷹島海底遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」150)』は水中考古学や日本の歴史に興味がある人々にとって、一読する価値がある一冊と言えます。

『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』

『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』は、豊富な知識と経験を持つ中西裕見子と片桐千亜紀の著作です。この本は、ギリシャ、イタリア、マルタの主な水中文化遺産について、鮮明な写真とともにわかりやすく解説しています。また、水中遺跡の保存と活用の現況についても詳しく述べられています。

この『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』が扱うテーマは、人間活動の痕跡を探り、人類史の真相を明らかにするという考古学の基本的な仕事です。地中海沿岸の国々、特にギリシャ、イタリア、マルタの海底には、多くの文化遺産が沈んでいます。これらの文化遺産は、かつての人々の生活や文化、技術、交易、信仰などを物語る重要な情報源であり、水中考古学の調査によってその内容が明らかにされてきました。

『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』は、これらの調査結果を基に、地中海の歴史を紐解く試みと言えます。地中海地域は古代から交易や文化交流の中心地であり、多くの文明が生まれ、発展、衰退してきました。海底に沈んだ文化遺産から得られる情報は、この地域の複雑で多様な歴史を理解するための重要な手がかりとなります。

また、水中遺跡の保存と活用についても、本書では詳しく解説しています。遺跡の保存は、歴史的・文化的遺産を次世代に伝えるために重要な仕事です。しかし、海底の遺跡は水流や塩分、海生生物などによるダメージが大きいため、その保存は容易ではありません。本書では、そうした現実的な課題についても触れ、適切な保存策の模索や、地域社会と協働して遺跡を活用する取り組みについても紹介しています。

著者の一人、中西裕見子は、ケンブリッジ大学大学院で考古学と文化遺産管理を学び、現在は大阪府教育庁文化財保護課の総括主査として活躍しています。また、もう一人の著者である片桐千亜紀は、沖縄国際大学文学部社会学科を卒業後、現在は沖縄県立埋蔵文化財センターの主任専門員として活躍しています。それぞれの豊富な経験と専門知識が、本書の鮮やかで詳細な描写と洞察に繋がっています。

『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』は、地中海の深い歴史とその水中文化遺産に興味がある人、また水中考古学について深く理解したい人にとって、理想的なガイドブックとなるでしょう。それぞれの文化遺産が語る物語とその保存・活用の現況を通じて、読者は人類の過去と未来、そして自然と文化が交差するポイントについて新たな視点を得ることができます。

まとめ

Underwater archaeology is recommended for those who love the sea!
海が大好きな人には水中考古学がおすすめ!

今回ご紹介した5冊の本は、水中考古学とその奥深い世界を探求するのに最適な選択肢となるでしょう。

『水中考古学 地球最後のフロンティア』は、海底に眠る歴史の痕跡を探求する水中考古学の興奮と魅力を伝える作品です。この本は、海底に眠る文化遺産が明かす人類の歴史や文化への深い洞察を共有することを目指しています。

次に『図説 世界の水中遺跡』は、世界各地の海や湖に沈んだ多様な文化遺産を紹介し、それぞれが語る歴史や人々の生活について描写しています。遺跡の写真や図解を豊富に取り入れているため、遺跡の現状を視覚的に理解することができます。

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』は、沈没船の調査を通じて歴史の謎を追求する情熱的な物語です。この本は、読者に水中考古学の現場での体験と挑戦をリアルに伝え、その興奮と困難を共有します。

『元軍船の発見 鷹島海底遺跡 (シリーズ「遺跡を学ぶ」150)』では、戦時中に沈んだ日本の元軍船の発見とその調査について詳しく解説します。この本は、過去の戦争と現代社会とのつながりを考察するうえで、貴重な視点を提供します。

最後に『地中海の水中文化遺産 (25) (世界の考古学)』は、地中海地域の水中文化遺産とその保護・活用について深く掘り下げる一冊です。読者には、人類の過去と未来、そして自然と文化が交差するポイントについて新たな視点を提供します。

それぞれの本が提供する視点は異なりますが、それらは全て水中考古学というフィールドの広がりと深みを示しています。これらの本は、歴史、考古学、海洋学、文化遺産保護などに興味がある読者に対して、新たな知識と理解を提供します。これらの本を通じて、私たちは海底に眠る過去を探求し、その中で人類の歴史と文化が如何に形成され、進化してきたかを理解する旅に出ることができます。