春がやって来ると、新しい生活が始まるこの季節に、心も身体もリフレッシュしたくなりますよね。そんな春の訪れを感じながら、日本全国の博物館や資料館を巡ってみませんか?今回のブログ記事では、東日本を中心とした13箇所の博物館や資料館で開催される「春の博物館巡り!魅力溢れる考古・人文系展示を巡ろう【東日本編】」をご紹介します。
博物館は、地域の歴史や文化、アイデンティティを伝えるだけでなく、都市再生やまちづくり、観光開発や企業のイノベーションにも役立ちます。さらに、SDGsの実現や文化多様性の促進、生涯学習や社会包摂の拠点としても大きな潜在力を持っています。
今回ご紹介する博物館企画展では、アイヌ民族の文化や縄文時代の遺跡、古墳時代の土器、地上絵の謎、戦国時代の朝倉氏の文化など、多様なテーマが取り上げられています。これらの展示を通じて、地域の歴史や文化を深く理解し、新たな発見や感動を得ることができます。
この春、博物館巡りを通じて、歴史や文化の魅力に触れ、日本の豊かな伝統と文化を再発見しましょう。そして、地方自治体や地域の人々とともに、博物館の潜在力を活かし、より魅力的な地域創造につなげていくことが大切です。さあ、博物館の扉を開けて、春の博物館巡りを楽しみましょう!
あわせて、「春の博物館巡り!魅力溢れる考古・人文系展示を巡ろう【西日本編】」も、是非ご覧ください👇
地域から見たアイヌ文化展 アカント ウン コタン — 阿寒湖畔のアイヌ文化 —
第4回テーマ展示「地域から見たアイヌ文化展 アカント ウン コタン — 阿寒湖畔のアイヌ文化 —」は、国立アイヌ民族博物館(北海道白老郡白老町若草町2丁目3番1号)で2023年3月14日から5月14日まで開催されます。本展では、阿寒湖畔におけるアイヌ文化の魅力とその独自の発展を紹介します。
阿寒湖畔のアイヌ文化は、伝統を受け継ぐだけでなく、民族の違いを越えた協働によって新しい文化も生み出しています。観光業に携わる人々が、民具や土産品の製作や芸能、儀礼を通じてアイヌ文化を発展させ、アイヌ語も現在も身近なものとして存在しています。
この展示は、「地域からみたアイヌ文化展」というシリーズ展示の第2回目で、アイヌ文化の独自性や多様性を地域単位で紹介していく試みです。ぜひ、この展示を通して阿寒湖畔のアイヌ文化に触れ、現地での体験を通じてアイヌ文化の魅力を深く知るきっかけにしていただければと思います。
さんまる速報展!2022
さんまる速報展!2022が、三内丸山遺跡センターのギャラリー(青森県青森市三内字丸山305)で、令和5年3月11日から7月2日まで開催されます。特別史跡三内丸山遺跡では、平成7年度から継続して発掘調査が行われており、集落の全体像や生活環境の解明を目的としています。
令和4年度には、南の谷北側で第46次調査と南の谷南側で第47次調査が実施され、竪穴建物跡をはじめとする遺構の広がりが明らかにされました。本展示では、最新の発掘調査成果や見つかった土器や石器などの展示を通じて、三内丸山遺跡の魅力とその重要性をお伝えします。
ぜひ、この展示を訪れて三内丸山遺跡の最新の調査成果を体感し、縄文時代の生活や文化について深く学ぶ機会をお楽しみください。
打越遺跡~富士見市のもう一つの縄文時代前期・大規模集落跡~
企画展『打越遺跡~富士見市のもう一つの縄文時代前期・大規模集落跡~』が、水子貝塚資料館展示室(埼玉県富士見市大字水子2003番地1)で、令和5年3月18日から6月18日まで開催されます。打越遺跡は、50年前から本格的な調査が行われ、縄文時代前期の大規模な集落跡であることが明らかになりました。
この展示では、打越遺跡の調査成果を紹介し、周辺地域との関わりについても詳しく展示します。富士見市の縄文時代前期の歴史や文化を知る上で貴重な資料となるでしょう。
この機会に、水子貝塚資料館展示室で開催される『打越遺跡~富士見市のもう一つの縄文時代前期・大規模集落跡~』を訪れ、地域の歴史や縄文時代の生活について深く学びましょう。
土浦の遺跡28 武者塚古墳と古代焼き物のさと
テーマ展「土浦の遺跡28 武者塚古墳と古代焼き物のさと」が、上高津貝塚ふるさと歴史の広場考古資料館(茨城県土浦市上高津1843)で、令和5年3月18日から5月7日まで開催されます。令和4年度に筑波大学と合同で行われた武者塚古墳の発掘調査の成果を紹介するとともに、当館所蔵の国指定重要文化財「茨城県武者塚古墳出土品」が公開されます。
また、令和2・3年度の発掘調査成果から、市北部の山麓にある小野窯跡で奈良・平安時代の須恵器の窯跡が広がる”焼き物のさと”の様子が明らかになっています。この展示を通して、土浦市の歴史や古代土器生産の様相に触れることができます。
是非この機会に、上高津貝塚ふるさと歴史の広場考古資料館で開催される「土浦の遺跡28 武者塚古墳と古代焼き物のさと」展に足を運んで、地域の歴史や古代文化を学びましょう。
新発見!さがみはらの遺跡
考古企画展「新発見!さがみはらの遺跡」が、相模原市立博物館(神奈川県相模原市中央区高根3-1-15)で3月18日から4月16日まで開催されます。今回のテーマは「新発見」で、市内の遺跡から発掘された出土品が展示されています。
開発などにより発掘調査が行われた遺跡の内容は、発掘調査報告書として刊行されます。相模原市立博物館は、これらの遺跡からの出土品を郷土資料として受け入れ、収蔵しています。本展では、近年博物館に収蔵されたものを中心に、旧石器時代から戦国時代までの出土品が展示されます。
この機会に相模原市立博物館で開催される「新発見!さがみはらの遺跡」展を訪れて、地域の歴史や文化に触れ、新たな発見を楽しみましょう。
地上絵の謎と保護~挑戦する研究者たち~山形大学ナスカ研究所の10年展
特別展「地上絵の謎と保護~挑戦する研究者たち~山形大学ナスカ研究所の10年展」が、山形大学附属博物館(山形県山形市小白川町1丁目4番12号)で2023年3月15日(水)から5月12日(金)まで開催されます。
2022年に設立10周年を迎えた山形大学ナスカ研究所は、日本およびペルーの研究者とともに、地上絵の実態解明に取り組んできました。学際的な研究と発展する研究手法の成果は、現地での地道な調査を経て、地上絵の謎の解明と保護活動に結びついています。
本展では、ナスカ研究所の歩みや現在の研究者たちの姿をパネルや動画で紹介します。地上絵がいつ、なぜ作られたのかなどの謎に迫りつつ、現在も破壊が進む地上絵の保護活動についても知ることができます。
この展覧会を通じて、地上絵の謎と保護活動に関心を持ち、研究者たちの挑戦に共感する機会を得ましょう。
構築される「遺跡」:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの
慶應義塾ミュージアムKeio Museum Commons(KeMCo)では、2023年3月6日(月)から4月27日(木)まで、特別展示「構築される『遺跡』:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの」が開催されます(東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス東別館)。
遺跡は一般に、歴史的過去に属する人々の活動の痕跡が存在する場所とされます。発掘は遺跡の内容を明らかにするために必要な行為であり、この展示では慶應義塾がKeMCo建設にあたり実施した発掘調査の成果を紹介します。縄文時代から江戸時代にかけてのさまざまな痕跡が見つかり、多くの成果が得られました。
しかし、すべての痕跡が発掘対象となったわけではありません。自然現象の痕跡や近代以降の痕跡は対象外とされました。発掘は選択を伴う行為であり、「遺跡」と「歴史」はその選択によって構築されるものです。
この展覧会では、選択によって得た成果だけでなく、選択しなかったものにも目を向けます。構築された枠組みを一度外して、「遺跡」と「歴史」のあり方を再考する機会を提供します。展示を通じて、「遺跡」と「歴史」に対する新たな視点を得ることができます。
印章-刻まれてきた歴史と文化
山梨県立博物館では、令和5年3月11日(土曜)から5月8日(月曜)まで、企画展「印章-刻まれてきた歴史と文化」が開催されます(山梨県笛吹市御坂町成田1501-1)。
印章は、日本の歴史と文化に深く関わっており、金印はその象徴的存在です。中央や地方の支配者によって使用されていた印章は、現在では広く一般の人々の生活にも浸透しています。山梨県は印章との関わりが特に深く、武田氏の時代に印判状による支配が整えられ、篆刻家の高芙蓉も山梨出身であり、「印聖」と称されました。また、山梨は印章産業が盛んで、現在では全国一位の生産量を誇っています。
本展では、印章の役割やその変遷を歴史的・文化的・芸術的な視点から紹介し、山梨の印章産業の発展をたどります。また、印章と人々の関係やその未来についても考察します。この展示を通じて、印章の持つ歴史的・文化的な価値を深く理解し、山梨県と印章の強い結びつきを感じることができます。
狭山丘陵 谷戸の自然と共生-後ヶ谷戸遺跡の古環境-
武蔵村山市立歴史民俗資料館では、令和5年3月11日(土曜日)から令和5年4月16日(日曜日)まで、企画展「狭山丘陵 谷戸の自然と共生-後ヶ谷戸遺跡の古環境-」が開催されます(東京都武蔵村山市本町五丁目21番地の1)。
本展では、狭山丘陵の谷戸地形と自然環境に焦点を当て、谷戸の地形がどのように成り立っているのか、そして谷戸と人々の関係性や自然環境の特徴を紹介します。展示の中心となるのは、後ヶ谷戸地区にある市内唯一の低地遺跡である後ヶ谷戸遺跡です。
この企画展を通じて、狭山丘陵の谷戸地形がもたらす自然と人々との共生について理解を深めることができます。また、後ヶ谷戸遺跡を通じて、過去の環境と人々の生活がどのようにつながっていたのかを知ることができるでしょう。
いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-
国立歴史民俗博物館では、2023年3月7日(火)から5月7日(日)まで、企画展「いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-」を開催します(千葉県佐倉市城内町 117、企画展示室A・B)。
本展では、江戸時代後期に編纂された図譜集『聆涛閣集古帖』を中心に、古器物への憧れや関心が盛んだった江戸時代の好古家たちの世界を紹介します。この図譜集には、考古資料、文書・典籍、美術工芸品など、様々なジャンルの著名な歴史資料約2,400件が、精緻な筆致で描かれています。
本展では、古器物の原品や複製・模造品等を立体的に展示し、二次元の世界を三次元に再現することを目指します。さらに、吉田家関連資料を通じて、好古図譜編纂の背景や豊かなコレクション、正倉院宝物図とその模造製作の世界、好古家のネットワークなどを紹介します。
この企画展を通じて、近代的な博物館が誕生する前の、江戸時代の「いにしえ好き」たちの歴史資料への豊かなまなざしを理解することができます。
令和4年度特別史跡加曽利貝塚発掘調査速報展
千葉市立加曽利貝塚博物館では、令和5年3月7日(火曜日)から同年7月2日(日曜日)まで、特別展「令和4年度特別史跡加曽利貝塚発掘調査速報展」を開催します(千葉市若葉区桜木8-33-1)。
本展では、令和4年(2022年)度に千葉市が実施した特別史跡加曽利貝塚の発掘調査について、最新の調査研究成果が紹介されます。この展示を通じて、加曽利貝塚の歴史と先史考古学・考古学的研究成果に関する最新の知見を学ぶことができます。
會津八一と瓦の蒐集
本庄早稲田の杜ミュージアム・早稲田大学展示室(埼玉県本庄市西富田1011)で、2023年3月4日(土曜日)から2023年6月4日(日曜日)まで、企画展「會津八一と瓦の蒐集」が開催されます。
會津八一(1881-1956)は、書家、歌人、東洋美術史学者であり、早稲田大学の歴史考古学の基礎を築いた人物です。彼は早稲田大学で東洋美術史の講義を担当し、「実学」を主張して実物資料の蒐集に力を入れ、学生の教育・研究のために用いました。
本展では、會津八一が生涯を通じて重視した「実学」の精神を、彼が蒐集した日本・朝鮮・中国の各時代の瓦塼(がせん)を展示することで紹介します。八一の瓦の蒐集への情熱と、その活用による教育・研究の成果について学ぶことができるこの展示をぜひお楽しみください。
東山文化と朝倉文化
福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井県福井市安波賀中島町8-10)の特別展示室にて、2023年3月1日(水)から2023年5月7日(日)まで、開館記念特別展Ⅱ「東山文化と朝倉文化」が開催されます。
この展示では、一乗谷に根ざした朝倉氏の文化が、室町幕府第8代将軍・足利義政によって築かれた東山文化を受け継ぎ、越前の地で独自の発展を遂げた様子を紹介します。東山文化の特徴である唐物の代表作品として、雲龍堆黒香合(サントリー美術館蔵)や牧谿筆「芦雁図」(個人蔵)が展示され、東山名所図屏風(国立歴史民俗博物館蔵)を通じて当時の京都の情景が紹介されます。
さらに、当時の朝倉氏が収集した唐物や、越前で生産された漆器や金属製品などの工芸品も展示されます。これらの展示を通じて、朝倉文化の独自性やその現代までの継承に迫ることができる特別展です。東山文化と朝倉文化の魅力を存分に感じることができるこの展示会を、ぜひお楽しみください。
おわりに
春の博物館巡りを楽しむうえで、各博物館の展示内容を把握し、日本の博物館が進化していることを認識することが大切です。今回紹介した東日本を中心とする地域の博物館展示を巡ることで、歴史や文化、芸術など幅広い分野を網羅し、春の博物館巡りの魅力を存分に引き出すことができます。
春の博物館巡りを楽しむうえで、日本の博物館が進化していることを認識することが大切です。かつては堅苦しく静かな場所とされた博物館も、今では知的好奇心を満たす場所として、多様な楽しみ方ができるようになりました。さらに、博物館はただの施設ではなく、人類の遺産を後世に伝える使命を持つ研究機関でもあります。
アクセシビリティや包摂性を重視し、博物館を地域振興や観光、国際交流の拠点として捉える考え方が広がっています。入館料収入は重要な財源でありますが、安易な値上げは避けるべきで、企業協賛やクラウドファンディングなど多様な財源の開拓が求められます。
本記事で紹介された13の東日本の博物館展示は、歴史や文化、芸術など幅広い分野を網羅し、春の博物館巡りの魅力を存分に引き出しています。博物館は学ぶ場所であると同時に、楽しむ場所でもあります。この機会に、春の博物館巡りで新たな発見や感動を体験し、博物館の進化を肌で感じてみてください。
- 国立アイヌ民族博物館:第4回テーマ展示「地域から見たアイヌ文化展 アカント ウン コタン — 阿寒湖畔のアイヌ文化 —」
- 三内丸山遺跡センター:さんまる速報展!2022
- 水子貝塚資料館展示室:企画展『打越遺跡~富士見市のもう一つの縄文時代前期・大規模集落跡~』
- 上高津貝塚ふるさと歴史の広場考古資料館:テーマ展「土浦の遺跡28 武者塚古墳と古代焼き物のさと」
- 相模原市立博物館:考古企画展「新発見!さがみはらの遺跡」
- 山形大学附属博物館:特別展「地上絵の謎と保護~挑戦する研究者たち~山形大学ナスカ研究所の10年展」
- 慶應義塾ミュージアム Keio Museum Commons (KeMCo) :【展示】 構築される「遺跡」:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの
- 山梨県立博物館:企画展「印章-刻まれてきた歴史と文化」
- 武蔵村山市立歴史民俗資料館:企画展「狭山丘陵 谷戸の自然と共生-後ヶ谷戸遺跡の古環境-」
- 国立歴史民俗博物館:いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-
- 千葉市立加曽利貝塚博物館:令和4年度特別史跡加
- 曽利貝塚発掘調査速報展 12. 本庄早稲田の杜ミュージアム:企画展 會津八一と瓦の蒐集
- 福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館:開館記念特別展Ⅱ「東山文化と朝倉文化」
これらの展示を巡ることで、日本全国の歴史や文化に触れるだけでなく、遺跡や古代の生活、地域の特色、アイヌ民族の文化やナスカの地上絵の研究など、幅広いトピックを学ぶことができます。また、企画展や特別展を通して、最新の発掘調査結果や研究成果を知ることができるため、博物館巡りがより深い知識や理解を生むきっかけになるでしょう。
さまざまな博物館の展示を楽しみながら、日本の歴史や文化、自然環境の多様性を感じてみてください。春の訪れとともに、博物館巡りを通じて新しい発見や知識を得ることで、より充実した季節を過ごすことができます。