
ぴえん
中国人女性がSNSで「無人島を買った」という投稿をして話題の屋那覇島で、火事があったと報道されましたね。実は、この屋那覇島にも遺跡があるんじゃないでしょうか!?

さくら
よっぽどじゃないと、歴史的に「無人島」ってほぼないよね。現在までに報告されている屋那覇島の遺跡について紹介するねっ!
こんにちは、今回はSNSで話題になっている沖縄県の屋那覇島についてご紹介したいと思います。さて、皆さんは屋那覇島をご存知でしょうか?
最近、中国人女性がこの無人島を買ったという投稿が話題になり、火事があったこともニュースで報道されました。しかしながら、実はこの屋那覇島には、歴史的な遺跡が綴るステキな風景があるんです。
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1. 屋那覇島とは?【沖縄最大の無人島データ】

沖縄本島の北西およそ 60 km、伊是名島のすぐ南西 1 km に浮かぶ屋那覇島(やなはじま)は、面積 0.74 km²・周囲約 5.3 km・最高標高 12 m――東京ディズニーランドとほぼ同じ大きさの“クロワッサン形”の小島です。隆起サンゴ礁が卓状に残った典型的なリーフアイランドで、外周の環礁と内側の遠浅ラグーンが生むエメラルドグリーンのグラデーションは息をのむ美しさ。とりわけ東〜南岸をぐるりと縁取る純白の「屋那覇の浜」は、無人島とは思えないほど完璧なホワイトサンドを誇ります。
島の中央部には、かつての集落跡を思わせる石垣と井戸が点在し、風障草原と呼ばれる低い草地にはボウコツルマメ(国内3例目の自生地)など希少植物が生育。野生化したヤギやウサギが草を食み、周囲の海ではモズク養殖いかだと色鮮やかなサンゴ礁が共存しています。釣り人垂涎の**大物タマン(ハマフエフキ)**も回遊し、夏にはウミガメが産卵に上陸することも。
所有構成とアクセスのハードル
屋那覇島の土地は国 8 %・伊是名村 26 %・民間 66 %に細分化され、筆数は 900 件超。1980 年代の原野商法で細切れ登記が進んだ名残で、2021 年には中国系企業が全体の約半分をまとめ買いしたニュースも話題になりました。公共交通は皆無で、伊是名島・仲田港から漁船やダイビングボートをチャーターして片道 5〜10 分(相場 2〜4 万円/隻)。上陸には伊是名村への事前申請と船長の安全計画が必須です。
なぜ“行く価値”があるのか
- 縄文後期の貝塚と土器が広がる「屋那覇島遺跡群」
- 18〜19 世紀の石切場跡が干潮時に姿を現す独特の景観
- 人工物の少ない環境で味わう無人島キャンプ&星空観察
美しいだけでなく、考古学・産業史・生態系の三拍子がそろう屋那覇島は、沖縄離島の中でもひと味違う「学べる冒険フィールド」。ただし水・トイレ・日陰ゼロのサバイバル環境ゆえ、装備とルール(火気厳禁・遺物持ち出し禁止・ゴミ完全持ち帰り)を守ることが、未来へこの宝を手渡す第一歩です。

屋那覇島の遺跡

では、話題の遺跡について詳しく見ていきましょう。
2. 屋那覇島遺跡群と石切場を徹底解説
屋那覇島が「ただの無人島」では終わらない最大の理由は、砂浜の背後にひっそり眠る縄文時代の貝塚と近世の採石跡です。白砂に足跡を残しながら内陸へ5分も歩くと、草むらの下から砕けた土器片や貝殻が顔をのぞかせ、さらに潮が引いた北東海岸では方形に切り取られた石灰岩ブロックが碁盤の目のように並んでいます。以下では島の考古学スポットを時代順に追いかけ、見どころと学術的意義、歩き方のコツまで一気にまとめました。
2-1 縄文後期の屋那覇島遺跡群〈A・B・C地点〉
島内の高まりや浜辺の背後に点在する3つの地点からは、縄文中期〜後期(沖縄編年:前Ⅲ〜前Ⅳ期、約4,000〜3,000年前)にあたる隆起線文系・爪形文系の土器片と厚い貝層が採集されています。A地点とB地点はラグーンに面した砂丘上に形成された典型的な浜辺の貝塚で、ホラガイの加工痕や貝輪素材も混在。C地点では石核や打製石器も見つかり、簡素な竪穴や掘立柱小屋が並ぶミニ集落があった可能性が高いとされています。いずれも平地なので歩きやすい反面、遺物は表土直下に眠っており、「掘る行為」は文化財保護法違反になるため絶対に手を出さないことが鉄則です。写真を撮るだけでも十分に“4,000年越しの時間旅行”を体感できます。
2-2 屋那覇島の8つの拝所が語る信仰の歴史
島には海岸線をぐるりと囲むように八カ所のウタキ(拝所)が残り、伊是名島のノロ(祝女)が定期的に渡島して祈りを捧げてきた歴史があります。縄文の貝塚と重なる地点も多く、屋那覇島が「食料採集の場」だけでなく「海の彼方と交信する聖域」だったことがうかがえます。現在でも静かな雰囲気が漂うため、訪問時は大声や音楽を控え、清らかな空気を味わいましょう。
2-3 18〜19 世紀の石切場跡が作る“幾何学模様”
北東海岸の干潟に降りると、卓状に残る琉球石灰岩に縦横1m前後の溝が幾重にも刻まれています。これが屋那覇島を再び“有人の島”へと呼び戻した近世後期の採石業の名残。切り出されたブロックは伊是名島の御殿石垣や港、防風石垣、さらには本土へも出荷され、一説には国会議事堂の一部に使われたというロマンも。専門職人ではなく“素人石切り”が中心だったため、切断面は荒々しく、工具痕がそのまま残るのが特徴です。干潮のタイミングで訪れると、格子状の採石マスが水鏡になってまるで抽象アート。SNS 映えを狙うなら日の入り1時間前がベストです。
2-4 見学のポイントと持ち物
- 干潮表の確認:石切場は潮位が 80 cm 以下で一面に露出。
- トレッキングシューズ:足下は石灰岩の鋭い割れ目&ぬかるみ。
- GPS アプリ:遺跡群 A・B・C は草原の目印が乏しい。
- マナー:遺物は拾わない、拝所では帽子を取り静粛に。
屋那覇島遺跡群は、離島に暮らした縄文人のリアルな生活痕を学べるフィールドワークの宝庫であり、石切場は近世沖縄の産業史を物語る“屋外博物館”。島全体が4,000 年分のタイムラインを歩いてめぐる教科書のような存在です。白砂ビーチと一緒に、ぜひ足を止めて“地下に眠る歴史”にも耳を澄ませてみてください。
石切場
屋那覇島の北東側の海岸には、石材を切り出した跡(方形の区画痕跡)が多数点在しており、干潮時には独特の景観を見せます。この石切場の操業時期については、1649年に作成された『正保国絵図』に屋那覇島が「人居なし」と記載されていることから、近世後半以降に形成されたものと考えられます。また、切り出された石材は屋那覇島内ではなく、隣接する伊是名島が主要な供給地であった可能性が高いです。
屋那覇島遺跡群
屋那覇島遺跡群は、3つの地点によって構成されます。この遺跡群の年代に関しては採集された土器片から縄文時代中期〜縄文時代後期(沖縄県史考古編年:前Ⅲ期〜前Ⅳ期)と考えられています。
遺跡名 | よみがな | 主な遺物 |
---|---|---|
屋那覇島遺跡群A地点 | やなはじまいせきぐんえーちてん | 土器、貝殻 |
屋那覇島遺跡群B地点 | やなはじまいせきぐんびーちてん | 土器、貝殻 |
屋那覇島遺跡群C地点 | やなはじまいせきぐんしーちてん | 土器、貝殻 |
3. 話題の “無人島購入” 投稿と火災報道をまとめて解説
屋那覇島は 2024 年夏から 2025 年春にかけて、SNS と報道メディアで二度注目の渦に巻き込まれました。
キーワードは ①「中国人女性が島を買った」投稿 と ② キャンプ客による山火事。現地に詳しい立場から、時系列で事実関係とポイントを整理します。
4-1 「屋那覇島を買いました!」―SNS バズの真相
日付 | 出来事 | 補足 |
---|---|---|
2021/02 | 東京の中国系コンサル企業が島内の私有地 約5割(約 24 ha)を約 3.5 億円で取得 | 登記簿で確認済。国・村有地はそのまま残存 |
2024/08 下旬 | 同社代表とされる中国人女性が Weibo・TikTok で「日本の無人島を購入した」と投稿 | 写真は屋那覇島のドローン空撮。再生数 1,000 万超 |
2024/09 | 日本国内メディアが “中国資本が沖縄の島を掌握” と見出しを付け拡散 | 島全体を買ったと誤解 → 実際は複数の筆をまとめただけ |
村の見解 | 伊是名村「開発計画の説明は受けていない。国境・安全保障上の問題はなし」 | 住民の一部に不安の声。議会で調査継続を決議 |
ポイント
- “購入=領土化” ではなく、あくまで 私有地の不動産取引。
- 国有地・村有地・他の民有地は引き続き別所有者のまま。
- 開発許可・環境アセスは未申請で、現時点でブルドーザーが入る兆候はない。
4-2 2025 年 2 月の山火事―無人島のリスクが顕在化
日時 | 2025/02/11 13:40 頃 |
---|---|
発生場所 | 屋那覇島中央の風障草原 |
原因 | 個人キャンプ客の 焚き火の不始末 と推定(警察・消防発表) |
被害 | 草地約 2 ha 焼失。人身被害なし |
鎮火まで | 約 6 時間 ― 海保ヘリと伊是名消防団が消火活動 |
影響 | 伊是名村が 個人キャンプを許可制へ移行 検討/火気全面禁止の看板設置 |
教訓
- 無人島=消防車ゼロ。軽い火遊びが数時間で島規模の災害に。
- 焚き火・バーベキューは 絶対に行わない or 焚き火台+消火用水 20 L が必須。
- 2025 年夏からは「村 有地=届け出制」「私有地=所有者の書面許可」が原則化予定。
4-3 フェイクニュースと向き合うコツ
- 「島を買う=領土拡張」ではない → 日本の民法&不動産登記制度では、買った土地も 日本の領域・国内法のまま。
- 一次情報を確認 → 法務局登記事項証明書、伊是名村議会議事録、消防本部発表。
- 感情を刺激する見出しに注意 → 「無人島爆買い」「沖縄乗っ取り」など大げさなワードは要精査。
4-4 今後の展望:課題とチャンス
- 土地利用計画の透明化
- 企業側がリゾート開発を掲げるなら、環境アセス・文化財調査は必須。
- 防災インフラの整備
- 消火用水タンク・避難誘導標識を最小限でも設置する必要。
- エコツーリズム規定
- 火気禁止・人数制限・ガイド同伴など、持続可能な観光モデルを模索。
屋那覇島は、SNS 時代ならではの「情報が独り歩きしやすい無人島」。
事実を押さえ、ルールを守って訪れることで、貴重な自然と歴史を次世代へ引き継ぐことができます。
終わりに

白砂とコバルトブルーがまぶしい沖縄の海。その只中にある屋那覇島は、〈沖縄最大の無人島〉というだけでも十分レアですが、島内には縄文後期の貝塚・土器散布地が点在し、干潮時に姿を現す近世石切場も残る。まさに「自然・冒険・考古学」が一度に味わえるトリプルレアスポットです。徒歩1周わずか4時間の小島で、4000 年前の暮らしと 200 年前の産業遺構、そして今日の透き通るラグーンが同じフレームに収まる場所は、沖縄広しといえど他にありません。
一方で、島は水もトイレもライフセーバーもないサバイバル環境。火災事故を機にキャンプ許可制が検討されるなど、「守りながら楽しむ」バランスがいま問われています。上陸の際は伊是名村への事前申請、ゴミ持ち帰り、焚き火厳禁、この3原則を徹底し、遺物や希少植物には絶対に手を触れないこと。それが未来の探検者に屋那覇島の魅力をバトンタッチする最短ルートです。
沖縄本島のリゾートとは一味違う、“歴史と自然のタイムカプセル”屋那覇島。チャーター船と少しの準備さえ整えれば、あなたもこの無人島で、太古の人びとと星空を共有する特別な1日を体験できます。次の旅の候補に、ぜひ「屋那覇島」をメモしてみてください。
参考文献
沖縄県立埋蔵文化財センター 2012 『沖縄県立埋蔵文化財センター調査報告書64:具志川島遺跡群』沖縄県立埋蔵文化財センター 沖縄県立埋蔵文化財センター 2017 『沖縄県立埋蔵文化財センター調査報告書87:沖縄県の水中遺跡・沿岸遺跡』沖縄県立埋蔵文化財センター