世界遺産と言えば、その美しさや歴史的な価値で我々を引きつけ、多くの旅行者が訪れる観光地として知られています。しかし、その裏には、その地域や文化の特性を認められ、それを保護し継承するという大きな意味が含まれています。今回の記事では、日本が新たに世界遺産に挑む2つの重要な候補地、「彦根城」と「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」について深掘りします。これらの地域が直面する課題や、これからの取り組みについても詳しく見ていきましょう。
日本の新たな世界遺産候補

日本の次世代の世界遺産候補として、現在「彦根城」と「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が挙がっています。これらの候補地は、それぞれに豊富な歴史と文化を秘めていますが、世界遺産への道は簡単なものではありません。
彦根城:近世城郭の価値を再評価

彦根城は、滋賀県彦根市に所在する17世紀初頭に築かれた近世城郭で、国内で数少ない天守閣が現存する貴重な歴史的建造物です。かわいい「ひこにゃん」も有名ですね!この城は、戦国時代から江戸時代初期にかけての日本の社会構造と防衛戦術を物語っており、日本の城郭建築の特徴を具現化しています。
しかし、その顕著な普遍的価値を明確化するためには、物証に基づいた具体的な説明や、なぜ彦根城が近世日本の城郭の代表であるのかという点について、詳しく述べることが必要とされています。この過程は、世界遺産として認知されるための重要なステップであり、世界遺産委員会の諮問機関であるイコモス(ICOMOS: International Council on Monuments and Sites)との対話を通じて行われます。
飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群:保護と管理の課題

「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」は、飛鳥時代から奈良時代にかけての日本の都城や遺跡、古墳が点在する地域です。この地域は、日本の古代文化や仏教伝来、国家の成立など、多様な歴史的事象の舞台となったことで知られています。
しかし、世界遺産登録に向けては、資産の保護と管理に関する課題が残っています。具体的には、文化財等の指定が十分になされていない地域があり、これに対する対策が必要とされています。また、資産の保護を確保するための取り組みの継続や、関係省庁や自治体による連携体制の構築が求められています。さらに、その価値を国際的に理解してもらうための精査・充実も必要とされています。
世界遺産登録への課題と挑戦

世界遺産登録への道のりは決して容易なものではありません。それぞれの文化財や自然財が世界遺産として認められるためには、数々の要件を満たし、さらには様々な課題を克服する必要があります。
顕著な普遍的価値の証明

まず、候補地が”顕著な普遍的価値”(Outstanding Universal Value)を持つことを示すことが求められます。この価値はその地域が人類の歴史、文化、または自然における独特の重要性を示していることを意味します。具体的な説明を通じて、なぜその地域や建築物が世界的に見ても重要であるのかを示さなければなりません。
資産の適切な保護と管理

次に、世界遺産として登録する資産が適切に保護・管理されていることも要件となります。これには、法的な保護措置、物理的な保存状態、管理計画や機関、地元コミュニティとの関わりなど、さまざまな側面が含まれます。
国際的な理解と支持

さらに、その価値が国際的に理解され、支持されることも重要です。専門家や一般の人々に向けた説明や、外国の専門家との対話などを通じて、その地域や資産の価値を広く認識してもらうことが求められます。
透明性と公正性

また、世界遺産の登録プロセス自体も透明で公正であるべきです。これは、候補地の選定から登録までの全過程において、公平性と透明性が保たれ、異なる国や地域、文化間で平等なチャンスが保証されることを意味します。
これらの要件と課題を克服し、世界遺産として認定されることは、その地域や国の文化的、自然的資源の価値を国際的に認められる大きな機会です。しかし、それは同時に、その資源を将来の世代に引き継ぐための重大な責任も伴います。
おわりに

日本はその美しい自然環境と古くからの伝統文化が豊かに混在する国として、世界遺産の登録を重要な目標としています。しかし、世界遺産の登録は単なる栄誉ではなく、それ自体が大きな責任を伴うものです。彦根城と飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群は、それぞれ日本の歴史と文化を象徴する貴重な資産であり、これらを世界遺産として認定することは、それらの価値を広く世界に伝えるとともに、後世へと継承する重要な一歩となります。
登録に向けての課題は多いですが、それぞれの課題を一つずつ解決していくことで、登録への道が開かれます。その課題解決の一環として、日本は新たな制度である事前評価制度を活用し、候補地の普遍的価値をさらに明確化しようとしています。
これらの取り組みは、日本がその文化と自然遺産を守るという誓いを世界に示すことに他ならないでしょう。また、それは日本人自身が自国の文化的・自然的遺産を見直し、それらを保護・継承するという意識を再確認する機会でもあります。世界遺産の登録は、地元コミュニティ、自治体、国全体が一体となって進める、共有の目標となるべきです。
日本の新たな世界遺産候補地が、その全ての課題を乗り越え、世界遺産としての登録を果たす日を楽しみに見守っていきましょう。その日は、日本の文化と自然がさらに国際的に認められる一歩となり、また、それらを守り続ける決意を新たにする日でもあります。
新たに認定された世界遺産が気になる方は、以前私が書いた2023年に新たに登録された世界遺産を紹介する記事もぜひご覧ください。レバノンの「ラシッド・カラミ国際見本市」、ウクライナの「オデッサ歴史地区」、そしてイエメンの『マリブ:古代サバ王国の代表的遺跡群』など、様々な国と文化が融合する世界遺産について詳しく紹介しています。これらの遺跡の歴史的、文化的価値を感じ、私たちがどういう視点で世界遺産を見ていけばいいのか考える機会にしていただければと思います。