オデッサ歴史地区(Historic Centre of Odesa)は、その美しい建築や豊かな歴史により、訪れるすべての人々を魅了し続けています。2019年からUNESCO(ユネスコ)の暫定リストに名を連ね、2023年には世界遺産(World Heritage Site)として認定されました。しかし、現在はロシアのウクライナ侵攻により、危険にさらされている危機遺産(World Heritage in Danger)としても登録されています。この記事では、そのオデッサ歴史地区がいかにして誕生し、どのような魅力が評価されてきたのかを見ていきましょう。

オデッサの成立:カタリーナ大帝の野望

The Odesa National Academic Opera and Ballet Theatre
The Odesa National Academic Opera and Ballet Theatre (view from above from Rishelievska Street) © GN Consulting Agency

オデッサ(Odesa)という都市が誕生したのは、ロシアの皇帝エカチェリーナ2世(Catherine the Great)が温暖な海港の建設を決定した1794年のことです。これは、1787年から1792年にかけてのロシア・トルコ戦争(Russo-Turkish War)が終結した直後の出来事でした。新しい都市は、かつてのトルコの要塞(Turkish fortress)があった場所に建設され、初期の段階では軍のエンジニアによって計画されました。その後、19世紀に入るとオデッサは急速に発展を遂げ、港の成功、知事たちの有利な政策、そして1819年から1859年までの自由港都市(free port city)としての地位によって、多様な人々が集まり、多文化・多民族のコミュニティが形成されました。

オデッサの開発の速度、産み出した富、そして多文化性は、都市の建築表現に大きな影響を与え、現在でも都市景観に残るさまざまなスタイルを生み出しました。これらの要素は、1821年から始まる一連の暴力的な出来事を引き起こすきっかけともなりました。しかし、それらの困難を乗り越え、多文化的で多民族の東ヨーロッパの都市の発展を象徴する場所として、オデッサは今日でもその魅力を保ち続けています。

ヨーロッパのメルティングポット:19世紀のオデッサ

19世紀のオデッサは、その成長と繁栄を通じて、多様な文化と人々が混じり合う場所となりました。オデッサの港の成功、知事たちの有利な政策、そして1819年から1859年までの自由港都市としての地位は、多種多様な人々を引き寄せ、多文化・多民族のコミュニティが形成される土壌を提供しました。

オデッサの急速な発展は、都市の建築表現とその都市景観に多様なスタイルをもたらしました。多文化性は、都市の建築にエクレクティック(Eclectic)な多様性をもたらし、その影響は現在でも都市の景観に色濃く残っています。その一方で、これらの急速な変化と多文化性は、1821年から始まる一連の暴力的な出来事を引き起こす緊張も生み出しました。

しかし、そのような困難にも関わらず、オデッサは成長を続け、19世紀の東ヨーロッパの都市における多文化・多民族コミュニティの発展の象徴となりました。その歴史的な建築、広々とした通り、そして独特の文化風景は、オデッサが19世紀におけるヨーロッパの「るつぼ」であったことを今に伝えています。

建築の宝庫:オデッサの歴史地区

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オデッサの歴史地区は、都市の歴史を刻み込んだ建築の宝庫です。この地区は、広大な通りが交差するグリッドシステム(grid system)を基本にした都市計画が特徴で、大きな二つの渓谷がオデッサ高原を横切って海へと向かう方向に整然と並びます。

歴史地区の建築物は、初期のイタリア出身の建築家やエンジニアたちによって設計されたものが中心で、劇場、宗教施設、学校、個人の邸宅や集合住宅、クラブ、ホテル、銀行、ショッピングセンター、倉庫、証券取引所、ターミナル、そして他の公共施設や行政施設など、商業都市の主要な活動を網羅するように広がっています。

特に、プリモースキー大通り(Prymorsky Boulevard)、海岸へと下りるプリモースキー階段(Prymorsky Stairs)、オデッサ・オペラ・バレエ劇場(Odesa Opera and Ballet Theatre)、そしてパレ・ロワイヤル(Palais-Royal)は、都市の主要なランドマークとして挙げられます。これらの建築物や地域は、オデッサが19世紀の成長と繁栄を象徴し、多様な文化、価値観、社会構造、宗教を反映した都市計画と建築遺産の証となっています。

見逃せないランドマーク:オデッサ歴史地区の主要名所

Unmissable Landmarks: Key Sites in the Historic Centre of Odesa
Unmissable Landmarks: Key Sites in the Historic Centre of Odesa

オデッサの歴史地区には、その魅力を凝縮した多くの観光地が存在します。以下にその中でも特に目を引くいくつかのランドマークをご紹介します。

  • ルッソフ・ハウス(The Russov House):オデッサの豪華な建築物の一つで、歴史的な設計が特徴です。
  • ウォール・ハウス(The Wall House):この建物はそのユニークな外観で知られ、観光客にとって撮影スポットとして人気があります。
  • オペラハウス(The Opera House):オデッサ・オペラ・バレエ劇場は、その美しい建築と豪華な内装で知られる美術の宝庫です。
  • ポトツキー宮殿(Potocki Palace):古典的な美しさを誇るこの宮殿は、オデッサの豊かな歴史を物語っています。
  • ポチョムキン階段(Potemkin Stairs):この有名な階段は、市内の景色を一望できる絶好のスポットです。
  • ホテル・パサージュ(Hotel Passage):その装飾的な外観とエレガントな内装で知られるこのホテルは、訪れる価値があります。
  • ブジョゾフスキー宮殿(Bzhozovsky Palace):この壮麗な宮殿は、オデッサの豪華さを象徴しています。
  • 旧証券取引所であるフィルハーモニック(The Philharmonic, a former stock exchange):この建物は、かつての繁栄を偲ばせる歴史的な場所です。
  • オデッサ最大の正教会であるトランスフィギュレーション大聖堂(The Transfiguration Cathedral):この大聖堂は、その壮大な規模と美しい建築で訪れる人々を引きつけます。

以上が、オデッサ歴史地区における見逃せないランドマークの一部です。これらの地点は、オデッサの多様性と豊かな歴史を証明するもので、訪れる者に強く印象を与えます。