真夏の陽光が煌びやかに輝く海に反射し、絶景のビーチが観光客を迎える季節、沖縄の夏が到来します。沖縄と言えば、首里城や美ら海水族館などの名所旧跡や、シュノーケリングやダイビングのスポットで知られ、その豊かな自然と独特の文化が魅力の観光地です。しかし、沖縄の魅力はそれだけではありません。その土地深くに眠る歴史や文化を発掘し、解明する遺跡調査もまた、大きな見どころの一つです。
今回、私たちはこの記事を通じて、そんな沖縄の新たな一面をご紹介します。沖縄県立埋蔵文化財センターが2023年度に展開する企画展「発掘調査速報2023」の詳細と見どころ、そして今後の発掘調査予定について深掘りします。宮古島や石垣島の美しいビーチから離れ、首里城の石垣を越えて未知の遺跡へ踏み出す冒険。皆さんも一緒に沖縄の歴史を旅しませんか?旅行の新たな楽しみ方、知的好奇心を満たす冒険がここにはあります。
沖縄県立埋蔵文化財センター企画展『発掘調査速報2023』
2023年の夏、沖縄県立埋蔵文化財センターでは令和5年度の企画展「発掘調査速報2023」が開催されます。この企画展示会では、昨年度に実施された発掘調査や保存処理の成果が一堂に展示されます。通常、調査が開始されてから報告書が刊行されるまでには数年を要するため、このような企画展は調査の成果をいち早く公開するための貴重な機会となります。
展示概要
7月11日から8月27日まで、沖縄県立埋蔵文化財センター企画展示室で開催されます。開館時間は午前9時から午後5時までで、最終入館は午後4時30分となっております。月曜日と一部の祝日(こどもの日、文化の日を除く)、年末年始、慰霊の日を除き、一般の観覧者を歓迎しています。また、観覧料は無料で、お問い合わせはセンターの調査班までお願いします。
展示内容
今回の展示では、四つの主要な発掘地点の成果が紹介されます。まずは、首里城の北にある龍渾という池のそばにある「松崎馬場跡」。ここでは、グスク時代から近代にかけて何度も行われた土地造成の跡や、首里城を起点に各地に延びていた宿道の跡が確認されました。
次に、「大工廻八所集落跡」は、沖縄市の嘉手納弾薬庫地区(知花地区)内にある遺跡で、ここは廃藩置県後に首里や那覇などの町方から移住した人々が開拓した集落跡です。発掘により、フール(伝統的な調理道具)、家畜小屋、住居に伴う柱穴などの遺構が見つかり、それらからは生活用具も出土しました。
那覇市宮城に所在する「宮城平田原遺跡」は、近世・近代の集落跡で、陶磁器や食後の貝殻などの生活道具、そして当時の道の跡が発見されました。
最後に、「大山岳之佐久原第一遺跡、伊佐上原南遺跡」は、宜野湾市の普天間飛行場内北側に存在する遺跡で、縄文時代の土坑やグスク時代の柱穴、近世・近代の石列などが検出されました。
この展示会では、それぞれの遺跡から発掘された遺物や調査結果が詳細に紹介されるとともに、その地域の歴史的背景や文化の変遷も解説されます。沖縄の歴史と文化に興味がある方は、ぜひこの機会に沖縄県立埋蔵文化財センターの「発掘調査速報2023」をご覧ください。この展示を通じて、私たちの暮らしを取り巻く歴史と文化の深さを感じ、そして学びを深めることができるでしょう。
第94回文化講座「発掘調査速報2023」
今回の「発掘調査速報2023」企画展と並行して、沖縄県立埋蔵文化財センターでは第94回文化講座も開催します。こちらでは、センターの担当職員が講師となり、具体的な発掘調査の成果やそれらが示す地域の歴史について深く掘り下げた内容をお届けします。
この講座は令和5年8月6日(日)の14時00分から16時00分まで開催されます。会場は沖縄県立埋蔵文化財センターの研修室で、受付開始は13時30分からです。定員は100名程度で、受講料は無料となっています。
講座では4つの主要な発掘地点それぞれについて、担当の調査員が詳しく解説します。
まずは、「松崎馬場跡」について、羽方誠さんが発掘調査の成果について深く解説します。次に、「大工廻八所集落跡」の発掘調査成果は、屋比久大翔さんが語ります。
その後、馬上理恵子さんが「宮城平田原遺跡」の発掘成果とその意義について話し、最後に、「大山岳之佐久原第一遺跡・伊佐上原南遺跡」について廣岡凌さんが詳しく解説します。
この講座は、沖縄の歴史に興味がある方はもちろん、文化遺産や考古学に興味がある方にもおすすめです。各地の発掘調査の裏側に迫り、具体的な成果を直接講師から聞くことができる貴重な機会となるでしょう。皆様のお越しをお待ちしています。
沖縄県立埋蔵文化財センターの令和5(2023)年度の発掘調査予定遺跡
沖縄県立埋蔵文化財センターは令和5年度(2023年度)にも様々な発掘調査を計画しています。
まず4月から6月までに、「大工廻八所集落跡」(沖縄市)の発掘調査が行われます。過去の調査では沖縄の近代史を反映する遺物が出土しましたが、更なる調査が期待されます。
次に、7月から11月までに「中城御殿跡」(那覇市)の発掘調査が予定されています。中城御殿は琉球王国時代の歴史的遺跡で、その全貌解明に向けた調査が進行します。
そして、8月から翌年1月までに「ヤニバマ遺物散布地」(名護市)の発掘調査が行われ、散在する遺物から地域の歴史や生活文化が明らかにされます。
最後に、9月から翌年2月まで「伊佐上原第三遺跡」(宜野湾市)の発掘調査が予定されています。縄文時代からグスク時代、近代までの多様な遺構が確認されていますが、今回の調査により新たな発見が期待されます。
これらの調査は、遺跡の価値を後世に伝えるだけでなく、私たちが沖縄の歴史や文化を理解する上でも非常に重要な活動となります。
歴史と文化が融合する沖縄の旅
沖縄県立埋蔵文化財センターの2023年度企画展「発掘調査速報2023」は、遺跡から紡ぎ出されるストーリーを通じて、沖縄の魅力を新たな視点から探求する絶好の機会となることでしょう。この展示を訪れることで、宜野湾市の普天間飛行場内に潜む古代の秘密から那覇市の中城御殿跡にまつわる歴史まで、沖縄の深層を旅することができます。
白い砂浜の続く美ら海水族館近くのビーチで海亀と泳ぎ、首里城の壮麗な風景に心を奪われ、そしてこの企画展で沖縄の未知の歴史に触れる。それが、この夏の沖縄旅行の理想的な過ごし方と言えるでしょう。
さらに、この企画展では遺跡の発掘調査結果だけでなく、次年度の発掘予定地も紹介しています。名護市のヤニバマ遺物散布地や、沖縄市の大工廻八所集落跡など、新たな発掘調査が待ち受けています。これからの発掘調査によって、新たな歴史の断片が明らかになることでしょう。
沖縄の自然や伝統文化に触れるだけではなく、地元の考古学的な側面を探ることで、沖縄の多面的な魅力を感じ取ることができます。この夏、沖縄での時間をさらに濃密なものにしたいのであれば、沖縄県立埋蔵文化財センターの企画展「発掘調査速報2023」は見逃せません。あなたの沖縄旅行が、ただの観光から一歩進んだ深い体験へと昇華するきっかけとなることでしょう。