遺跡・埋蔵文化財の発掘調査の現場は、新たな発見と共に、予期しないリスクや危険をも秘めています。熱中症、転倒、転落、そして崩落事故。これらは一見すると些細な出来事に見えるかもしれませんが、実際には重大な労働災害につながる可能性がある現実を私たちは常に知るべきです。

本ブログでは、そんな発掘調査に従事する全ての人々が十分に理解し、適切な対策を講じるための情報提供を目的としています。近年の事故事例を通じて、発掘調査の具体的なリスクを考えてみましょう。また、これらの事例をもとに、自身の調査が安全なものであることを確認するためのリスクアセスメントも重要ですね。

一人でも多くの方がこの記事を活用し、発掘調査現場での安全確保に貢献できれば幸いです。私たち全ての安全のため、一緒に学び、理解し、行動しましょう。ご安全に。

2023年4月 宮崎市:崩落事故

Collapse accident at the site of a survey to confirm buried cultural properties associated with residential land development in Miyazaki City, Miyazaki Prefecture.
宮崎県宮崎市の宅地造成に伴う埋蔵文化財の確認調査現場で崩落事故

令和5年4月18日15時30分ごろ、宮崎県宮崎市大字浮田の宅地造成に伴う埋蔵文化財の確認調査現場において、宮崎市文化財課職員の島田正浩さん(62)が、試掘坑内で作業をしていたところ、土の壁が崩落し、生き埋めの状態となった。その後救急隊員により救出、救急車で病院に搬送されたが、複数箇所を骨折し意識不明の重体。その後の容態は非公開。トレンチは幅1m、深さ2mの規模で、作業はもう1人の職員と委託業者のあわせて3人で実施。

2022年9月 鎌倉市:転落事故

Injured during excavation work in Kamakura, Kanagawa Prefecture, when he fell into the research area.
神奈川県鎌倉市で実施されていた発掘調査の作業中に、調査区内に転落し、負傷

令和4年9月1日、神奈川県鎌倉市教育文化財部文化財課に所属している会計年度任用職員が、鎌倉市雪ノ下一丁目(鎌倉市川喜多映画記念館付近)で実施されていた発掘調査の作業中に、調査区内に転落し、負傷した。 鎌倉市議会で長嶋竜弘議員が、議会に公表しなかったのは隠蔽なのではないかとの疑念を持ち、鎌倉市議会基本条例の規定に基づき2022年11月29日付で文章質問を実施。鎌倉市文化財課の安全管理に重大な懸念を示した。 鎌倉市教育文化財部文化財課は、職員の公務中における事故、怪我の状態については、事故の概要に個人情報が含まれるとして個別公表は控えていたと説明。 事故の概要は、発掘調査の調査区内で発生した掘削土を調査区際で受け取り、調査区外の廃土置き場へ運搬する作業を行っていた際にバランスを崩して約1.7m落下し、負傷したとのこと。 調査区際にロープ柵を設置するなどの、再発防止に向けた措置を講じたと説明。 ロープ柵では、開口部の危険を視覚的に明示しているだけで、開口部際でつまずいたりバランス崩したら転落を防止することは困難であるので、鎌倉市文化財課の安全対策の基本的な考えに大きな懸念が残ってモヤモヤしたままになっている事故。

2022年1月 神戸市:横転事故

Heavy machinery rollover accident at an excavation site in Kobe City, Hyogo Prefecture
兵庫県神戸市の発掘調査現場で重機横転事故

令和4年1月6日、兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町の古墳時代の遺跡の発掘調査現場で、調査のため市の委託を受けて作業していた神戸市北区の「恵商事」の重機が横転し、下敷きになったオペレーターが意識不明の重体となった。 現場はマンションの建設予定地で、古墳時代の住居の跡が見つかったため、神戸市は2021年12月から記録のための発掘調査を実施し、1月6日も朝から、神戸市の職員や調査を委託された神戸市北区の「恵商事」の作業員あわせて5人で作業に実施していた。 調査を行う神戸市文化財課は「被害に遭われた方には本当に申し訳ないと思っています。事故を繰り返さないように、再度、安全管理を徹底してまいります」とコメント。 2022年3月に安全対策を怠ったとして、文化財の発掘調査事業を行う神戸市北区の「恵商事」と60代の男性の社長が労働安全衛生法違反の疑いで書類送検されました 労働安全衛生法の規則では、傾斜地で重機等の建設機械を扱う場合、転倒や転落を未然に防ぐため、安全に重機を誘導する人を配置するよう決められていますが、現場に配置されていなかった疑いがあることが労働基準監督署の調べで判明。

2021年7月 小松島市:水道管破裂事故

Accidental breakage of water pipe at excavation site in Komatsushima City, Tokushima Prefecture
徳島県小松島市の発掘調査現場で水道管破損事故

令和3年7月9日、徳島県小松島市中田町の日峯大神子広域公園(脇谷地区)旧テニスコート付近で事故発生。日峯大神子広域公園(脇谷地区)旧テニスコート付近の地点で行われていた埋蔵文化財の発掘調査の過程で、掘削中に地下に埋設されていた水道管が破損された。この破損により、中田町在住の男性の宅の水が止まる事態となった。そのため、小松島市はこの事故について市の義務に属する損害賠償を行うことを決定し、損害賠償額を16,500円と設定した。この決定は令和3年10月20日の専決第9号により行われ、小松島市長の中山俊雄によって承認されている。

2019年7月 熊本市:崩落事故

Fatal collapse at an excavation site in Kumamoto City, Kumamoto Prefecture
熊本県熊本市の発掘調査現場で崩落死亡事故

令和元年7月5日(金)15時45分過ぎ、熊本県熊本市中央区呉服2丁目24-1,25-1,26-1の共同住宅の新築に伴う古町遺跡群第12次調査区において、発掘調査中に調査区の壁面が崩落し、作業中の男性3名(1名は全身、2名は下肢のみ)が生き埋めとなった。熊本市南区御幸笛田2丁目の淋義秀さん(69)が約30分後に救出されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。他2名は2人(59歳、70歳)軽傷だった。
調査区は約90平方mの範囲を深さ約1・9mまで掘削しており、この3人はしゃがんだ状態でスコップなどを使い鎌倉~江戸時代のものとみられる溝の跡周辺を掘っていたところ、壁面の一部が幅約7m、奥行き1mにわたって崩れた。当時現場では、壁面の崩落防止措置などはなかったという。発掘調査は6月27日から雨などの天候不良で休工しており、7月4日に再開していた。通常、目視で安全確認し、作業を進めているという。
熊本県警熊本南署は2020年3月23日、市の安全管理に問題があったとして、現場監督だった市職員2人を業務上過失致死容疑で熊本地検に書類送検、刑法第211条前段(業務上過失致死)等に抵触するとして、罰金50万円の略式命令を受けた。その後、令和3年(2021年)2月18日発令でこの熊本市文化市民局の文化財保護主任主事(男性・43歳)は地方公務員法第29条第1項第1号(法令違反)及び第2号(職務上の義務違反又は職務怠慢)の停職3ヶ月の処分。

2010年11月 厚木市:崩落事故

Collapse accident at an excavation site in Atsugi, Kanagawa Prefecture
神奈川県厚木市の発掘調査現場で崩落事故

平成22年11月1日、神奈川県厚木市三田の開発事業用地にて、埋蔵文化財の試掘調査中の事故発生。作業員が土砂崩れで埋まり、重傷。救急車で病院へ搬送されるも、約5時間後に死亡。掘削作業は3カ所で実施。幅2m、長さ20m、深さ2mのトレンチを設置。事故は3カ所目のトレンチで発生。作業員が掘削作業後の清掃作業中に巻き込まれた。直ちに救出、東名厚木病院へ搬送。その後、東海大学病院へ転送。午後9時前に親族へ死亡伝達。