遺跡発掘調査は、考古学的な知見を得るために重要な作業ですが、同時に労働者の安全面にも注意が必要であることが改めて浮き彫りとなりました。宮崎県宮崎市で行われていた埋蔵文化財の試掘調査中に、労災事故が発生し、宮崎市役所の職員であるSさん(62歳)が重機で掘られた穴の中で作業中に土砂崩れが起こり、埋もれるという痛ましい事故が起こりました。
現場では、Sさんを含めた3人が作業を行っており、警察が事故の原因を調査しています。遺跡が埋まっていないかを確認するための作業中であったため、深さ約2メートルの穴に入っていたSさんは、突然の土砂崩れにより意識不明の重体となってしまいました。
この事故を受けて、発掘調査の際には、作業員の安全を確保するための対策やリスク管理が重要であることが改めて認識されました。今回のブログ記事では、遺跡発掘調査における崩落事故の危険性について検証し、今後の発掘作業で安全対策をどのように実施すべきか、労働者の安全を最優先に考慮した取り組みを提案します。
熱い夏が到来し、発掘調査中の熱中症の危険性が高まります。作業者の皆様、熱中症対策を十分に行いましょう。まず、十分な水分補給を心がけ、休憩時間を確保してください。また、帽子や日よけクールタオルなどの熱中症対策グッズを利用し、直射日光を避けることが重要です。環境によっては、熱中症対策用の保冷剤や扇風機を設置することも検討しましょう。仲間と共に体調をチェックし合い、異常があれば速やかに適切な対応を行ってください。皆様の安全を確保し、発掘調査を無事に進めるために、予防策を怠らず実行しましょう。熱中症対策で、安全かつ効率的な発掘調査を実現しましょう。
過去には熊本でも同様の事故発生。

2019年、熊本市中央区での遺跡調査中の事故も、土砂崩れによる労働者の安全が問題となった事例の一つです。この事故は、発掘調査中に壁面から土砂が崩れ落ち、作業を行っていた市臨時職員の男性3人が埋まってしまいました。Rさん(69歳)は病院での死亡が確認され、ほかの2人も足に軽傷を負いました。
熊本市では、大雨が断続的に降り続き、地盤が緩んでいた可能性が指摘されています。当時の現場はマンション建設予定地で、市が文化財保護法に基づき発掘調査を実施していました。約90平方メートルの範囲を深さ約1.9メートルまで掘削し、鎌倉~江戸時代のものとみられる溝の跡が見つかっていたとのことです。
事故が発生した際、3人はしゃがんでスコップなどを使い、溝周辺を掘っていました。壁面の土砂が幅7メートル、奥行き0.8~1メートルにわたって崩れ落ちたと報告されています。現場では、崩落防止措置が取られておらず、通常目視で安全を確認して作業を進めていたとされています。
熊本市の事故を踏まえると、発掘調査においては、地盤や天候条件を考慮し、十分な安全対策や崩落防止措置が重要であることが明らかになります。遺跡調査の安全管理が徹底されることで、労働者の命を守りながら、文化財の調査や発掘が円滑に進められることが期待されます。
発掘調査における崩落対策
- 事前協議と計画: 担当者および事前調整担当は、開発事業者と共に、予定される掘削深度に対して土止めの根入れ長が安全であることを確認し、落下防止柵や階段等の安全対策工事を行うこと、排土処理について十分に協議します。
- 土止め施工: 開発事業者は、土止めの最小根入れ長を土質、土圧、工法、土止め杭・壁の剛性等に基づいて計算し、掘削深度と同程度の根入れ長を確保します。
- 落下防止設備の設置: 土止め施工と合わせて、開発事業者は落下防止柵や階段などの安全対策を設置します。
- 排土処理: 開発事業者と協議し、場内での排土移動による調査上の手間や土止めへの土圧増加の危険性を回避するため、できる限り場外搬出を行います。
- 土止め範囲内の掘削: 調査担当者は、予定最大掘削深度と土止めの根入れ長について確認し、土止め範囲内をすべて掘削します。安全でない根入れ長の場合は、必要な犬走りの幅や掘削勾配について開発事業者と十分に協議します。
- 土止めの施工および管理: 開発事業者は土止めの施工および管理に責任を持ち、調査担当者は特別な理由がない限り開発事業者側の指示に従います。土止めの異常が発見された場合は、作業を中止し、担当者に報告し、開発事業者と安全について協議します。
- 段差・落差対策: 現地表面から遺構面までの深さが深くなる場合、調査区際に近寄らないよう事前に安全指導
- を行います。また、段差や落差がある場合は、開発事業者と協議し、階段やスロープなどの安全対策を実施します。
- 定期的な安全点検: 開発事業者は、土止めや落下防止設備などの安全対策が適切に機能しているかを定期的に点検します。問題が発見された場合は、速やかに修理や改善を行い、調査担当者や担当者に報告します。
- 緊急時の対応: 緊急事態が発生した場合、開発事業者と調査担当者は速やかに連絡を取り合い、適切な対応を行います。具体的な対応策は、事前に開発事業者、調査担当者が協議し、緊急時対応プランを策定しておくことが望ましいです。
- 掘削終了後の安全対策: 掘削作業が終了した後も、開発事業者は土止めや落下防止設備を維持・管理し、調査が終わるまで安全対策を続けます。調査が終了したら、遺構の保護や復元作業に移行し、適切な安全対策を踏まえて作業を行います。

発掘調査における崩落事故防止は、調査の成功と参加者の安全を確保するために極めて重要な安全対策です。開発事業者、調査担当者が緊密に連携し、事前のリスク評価から調査終了までの各段階で適切な対応を行うことが求められます。
事前のリスク評価では、発掘調査の規模や地形、地質条件などを考慮し、崩落リスクを予測・評価します。適切な計画立案により、発掘調査の進行に伴う安全対策が整備されることが重要です。
発掘作業中には、周囲の状況把握や適切な掘削方法の選択、土止めや落下防止設備の設置と維持など、細かな対策が実施されます。また、定期的な安全点検や緊急時の対応計画が策定されることで、万が一の事態にも迅速かつ適切に対処できる体制が整います。
調査終了後も、遺構の保護や復元作業において安全対策が継続的に行われます。崩落事故防止の取り組みは、発掘調査全体を通じて継続的に実施されることで、参加者の安全を確保しながら、遺跡の価値を最大限に引き出すことが可能となります。