アンデスの神秘に包まれた雄大な地には、古代からの風が今も息づいています。インカ帝国が栄華を極めた高地から、スペイン征服者による激動の時代を経て、現代における新たな発見まで、その歴史は深く、そして色鮮やかです。本ブログ記事では、この不可解で魅惑的なアンデスの歴史と文明を掘り下げ、それを紐解くための重要な書籍5冊を紹介していきます。

古代インカ・アンデス不可思議大全

著:芝崎 みゆき
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「古代インカ・アンデス不可思議大全」は、芝崎みゆき(Shibasaki Miyuki)著による、アンデス文明(Andean civilizations)に関する綿密な研究と情熱が込められた作品です。2022年2月1日に草思社(Soushisha)から出版されたこの書籍は、古代文明研究における重要な一歩を記すものです。インカ帝国(Inca Empire)だけでなく、その前身となる様々な文化にスポットライトを当てています。

芝崎氏は1966年生まれの著者で、古代マヤやアステカに関する著書『古代マヤ・アステカ不可思議大全』や『マヤ・アステカ遺跡へっぴり紀行』、さらにはマチュピチュ(Machu Picchu)に関する『アンデス・マチュピチュへっぽこ紀行』、そして『イースター島不可思議大全』など、複数の注目すべき作品を手がけています。これらの作品は、同じく草思社から出版され、読者に古代文明の魅力を広めてきました。

本書では、インカ帝国の謎多き歴史だけでなく、アンデスの神話(Andean mythology)、プレインカ(pre-Inca cultures)、インカ、そしてスペイン人の侵略(Spanish Conquest)に至るまでの歴史的な流れを、鮮やかなイラストと共に紹介しています。ナスカの地上絵(Nazca Lines)などの不思議にも触れながら、古代アンデス文明の全貌に迫る試みがなされています。

著者はこの書籍の制作にあたり、最初はインカ文明に焦点を当てる予定でしたが、研究を進めるうちに、その背後にある広範なアンデス文化に魅了されたと述べています。読者もまた、本書を通じてインカ文明の先に存在する豊かな文化遺産とその謎に心を奪われることでしょう。

この「問答無用の」(©著者)稀有な一冊は、アメリカ大陸の先住民族文明として知られるインカ文明だけでなく、それを取り巻く古代アンデス文明全般についての理解を深めるための重要な資料です。芝崎みゆき氏の他の作品と同様に、本書もまた、古代文明に興味を持つすべての人々にとって価値ある読み物となることでしょう。

高地文明―「もう一つの四大文明」の発見

著:山本 紀夫
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『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』は、山本紀夫(Yamamoto Norio)氏によって著された、従来の四大文明に対する新たな視点を提供する一冊です。山本氏は1943年大阪府に生まれ、京都大学(Kyoto University)で農学博士(Doctor of Agriculture)及び学術博士(Doctor of Science)を取得後、多数の学術賞を受賞し、国立民族学博物館(National Museum of Ethnology)名誉教授としても活躍されました。

本書では、「四大文明」とされるメソポタミア(Mesopotamia)、エジプト(Egypt)、インダス(Indus)、黄河(Yellow River)文明が大河流域で誕生したことに疑問を投げかけ、熱帯高地(tropical highlands)であるアンデス(Andes)、メキシコ(Mexico)、チベット(Tibet)、エチオピア(Ethiopia)において独自の文明が発展していたことを探求しています。これらの地域は、特異な環境に適応した栽培技術や家畜飼育の方法、精巧な建築物など、独自の文化と技術を発展させました。

山本氏は民族学(ethnology)や環境人類学(environmental anthropology)の専門家として、それらの高地での生活や文化について深い洞察を提供しています。本書では、高地での生活がどのように現代の私たちに影響を与えているかについても考察しており、これまでの歴史理解に対する一石を投じています。

山本氏のこれまでの著作、例えば『インカの末裔たち』や『ジャガイモとインカ帝国』では、特定の文化や作物に焦点を当てて深掘りを行い、環境と文明の相互作用に光を当ててきました。『高地文明』はその集大成とも言える作品であり、高地での文明発展について総合的かつ多角的に解析を試みています。

この中公新書による出版は、一般の読者にも理解しやすい形で、これら高地文明の全貌を明らかにしています。高地で栄えた文明の発見は、これまでの世界史の枠組みに新たな次元を加え、教科書に書かれた歴史に留まらない幅広い知識を求める読者にとっては、目から鱗の一冊になることでしょう。

アステカとインカ 黄金帝国の滅亡

講談社
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『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』は、文化人類学者であり、イベリアおよびイベロアメリカ文化史の専門家である増田義郎によって著された作品です。この書籍は、16世紀にスペイン人によって始められたアメリカ大陸の征服の歴史を掘り下げています。探検家クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)、フランシスコ・ピサロ(Francisco Pizarro)、エルナン・コルテス(Hernan Cortes)などの黄金を追求する者たちと、モクテスマ(Moctezuma)、トゥパック・アマル(Tupac Amaru)など抵抗したインディオ(Indios)たちの間で繰り広げられた激しい戦いを、一般的な「勝者の視点」ではなく、「敗者の視点」から見直しています。

増田氏は、帝国と文明の栄華がどのようにして破壊されたのかについて詳細に記述し、それが西欧(Western)と非西欧(Non-Western)の文明間での激しい衝突という枠組みを超えたものであったことを明らかにしています。彼は征服の歴史をただ記録するだけでなく、その後の植民地時代から現代に至るまでのラテンアメリカ(Latin America)の歴史的経路をたどります。

著書には、黄金の夢にかられた探検者たちの物語から始まり、コロンブスが目指した伝説的な富の地「シパンゴ」の話、冒険者バスコ・ヌーニェス・デ・バルボア(Vasco Nunez de Balboa)、メキシコの「発見」、そしてアステカ帝国(Aztec Empire)の首都テノチティトラン(Tenochtitlan)の攻防に至るまでが描かれています。また、悲劇的な「悲しき夜」(La Noche Triste)や英雄たちの敗北、太平洋(Pacific Ocean)と中央アメリカ(Central America)の探検、南海におけるカハマルカ(Cajamarca)の悲劇、そしてインカ帝国(Inca Empire)の首都クスコ(Cusco)の占領など、さまざまな歴史的瞬間が詳細に語られています。

本書は、征服者たちの黄昏と題されたエピローグで締めくくられ、読者に植民地化の過程とその結果がもたらした深い影響を考えさせます。また、年表、民族と地域の紹介、人名検索などの付録も含まれており、読者が歴史的文脈を理解するのに役立ちます。

増田義郎氏は、1928年東京生まれで、東京大学文学部卒業後、同大学の名誉教授を務めました。彼は『大航海時代叢書』の刊行を推進するなど、その学問分野における重要人物であり、彼の多くの著書や翻訳作品はその分野の研究において引き続き参照されています。

『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』は、これまでに語られざる歴史的視点を提供し、ラテンアメリカの過去と現在をつなぐ架け橋となる1冊です。歴史に興味がある読者はもちろん、様々な文明の出会いと衝突による世界の形成について学びたい人々にとっても、非常に価値のある読み物と言えるでしょう。

興亡の世界史 インカとスペイン 帝国の交錯

講談社
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『興亡の世界史 インカとスペイン 帝国の交錯』は、アンデス社会史における専門家である網野徹哉(Tetsuya Ameno)によって執筆されました。本書は、講談社(Kodansha)の創業100周年を記念する学術文庫版「興亡の世界史」シリーズの一部として、2018年11月11日に発売されたものです。網野は、東京大学(University of Tokyo)大学院総合文化研究科で教授を務め、その学術的背景は、西洋史学科(Western History)を専攻し、アンデスの歴史を詳細に研究してきた経験に基づいています。

この作品では、16世紀初頭にアンデス全域を支配したインカ帝国(Inca Empire)の興亡を追います。一方で、同時期にイベリア半島(Iberian Peninsula)でイスラーム帝国(Islamic Empire)を駆逐したカトリック王国スペイン(Catholic Kingdom of Spain)が新大陸への進出を進めていました。本書は、これら二つの強大な帝国の生成から成熟、そして交錯する歴史を深掘りし、特にインカ帝国がスペイン人の手によってどのように征服されたのか、そしてその後の300年間でアンデスがどのようにスペインとの訣別を迎えたのかを詳述しています。

インカ帝国の征服後に生まれた植民地社会(colonial society)は、征服者であるスペイン人(Spaniards)、インカ族(Incas)、混血の人々(Mestizos)、そしてユダヤ人(Jews)など多様な民族集団が共存していた空間でした。本書では、スペイン人による寛容と排除の思想がアンデス社会にどのような変化をもたらしたのか、インカ帝国がどのようにしてその命脈を保ち続けたのか、さらにインカ皇女をはじめとする女性たちの生き方や、ユダヤ人迫害(Jewish persecution)、異端審問(Inquisition)、インディオの反乱(Indigenous rebellions)など、さまざまな視点からアンデスの植民地社会の姿を描き出しています。

また、本書は元々2008年に講談社から出版された『興亡の世界史第12巻 インカとスペイン 帝国の交錯』の文庫版であり、より手軽にこの複雑な歴史を学ぶことが可能です。網野徹哉氏の他の主要な著作には、『インディオ社会史』や『世界の歴史18ラテンアメリカ文明の興亡』などがあり、アンデス世界における社会変動と文化的動態に光を当てた作品として高く評価されています。

『興亡の世界史 インカとスペイン 帝国の交錯』は、アンデス社会の変遷を理解するための決定版とも言える作品であり、歴史愛好家や学生、研究者にとって貴重な資料となるでしょう。

マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く

著:マーク・アダムス, 翻訳:森夏樹
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『マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く』(Turn Right at Machu Picchu: Rediscovering the Lost City One Step at a Time)は、アメリカ合衆国の作家兼ジャーナリストであるマーク・アダムス(Mark Adams)による快心の冒険ノンフィクションです。この書籍は、1911年にマチュピチュ(Machu Picchu)を「発見」したハイラム・ビンガム(Hiram Bingham)博士の軌跡を現代の視点から追体験し、世界遺産(World Heritage)としても著名なこのインカ帝国(Inca Empire)最後の都市遺跡の数々の謎に光を当てています。

アダムスは1967年に生まれ、イリノイ州オークパーク(Oak Park, Illinois)出身です。彼は「ナショナル・ジオグラフィック・アドヴェンチャー」(National Geographic Adventure)の寄稿編集者としても知られ、「GQ」、「Outside」、「The New York Times Magazine」、「Fortune」といった著名な出版物での寄稿があります。また、「New York」雑誌の人気コラム「It Happened Last Week」も担当し、その才能は多岐にわたります。現在は家族とともにニューヨーク市郊外で生活しています。

本書は、スペイン人征服者(Spanish Conquistadors)の手が及ばなかったマチュピチュの秘密に迫るため、アダムスがビンガム博士と同じ地を踏み、時には苛烈な自然環境と戦いながらインカ文明(Inca civilization)についての新たな発見を目指します。アダムスはビンガムの伝説的な足跡をたどりながら、その探検旅行がどのようにインディージョーンズ(Indiana Jones)のモデルとなったのかを紐解きます。ビンガムの発見は、後に全米図書協会(American Library Association)ベスト25に選ばれ、NYタイムズ・ベストセラーリストにも名を連ねました。さらに、世界最大のトラベルブログ「Gadling」では、現代の旅行記ベスト25に選出されるなど、幅広い層からの注目を集めています。

翻訳家の森夏樹(Natsumi Mori)が日本語版の翻訳を手がけており、青土社(Seidosha)より2013年6月24日に出版されています。森夏樹の翻訳によって、アダムスの洞察に満ちた物語は日本語読者にも生き生きと伝わり、インカ帝国の壮大な歴史に新たな一章を加えています。

この書籍を読むことで、読者はまるで自らがアンデス山脈(Andes Mountains)の険しい道を歩いているかのように感じられるでしょう。インカ文明の複雑な過去、ビンガムの功績、そしてアダムス自身の探検の詳細が、本書には詰まっています。『マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く』は、歴史愛好家だけでなく、冒険に憧れる心を持つすべての読者にとって魅力的な作品です。

まとめ

Explore stories of discovery, culture, and conquest, from architectural wonders like Machu Picchu to the dramatic destruction of the Spanish Conquistadors
マチュピチュのような建築の驚異からスペインのコンキスタドールによる劇的な滅亡まで、発見と文化、征服の物語を探求

古代から近世にかけてのアンデス地域は、多様で複雑な歴史を有することで知られています。その歴史を理解するためには、文明の発展、栄光の瞬間、そして最終的な衰退や滅亡の過程を綿密に追いかける必要があります。上記の書籍群は、この地域特有の文明とその歴史のさまざまな側面を探求し、読者に対して、古代アンデス文明(Ancient Andean civilizations)に関する包括的な理解を提供しています。

『古代インカ・アンデス不可思議大全』は、インカ文明(Inca civilization)だけでなく、その前身となる文化や宗教的慣習を探り、アンデス地域が有していた多様性とその文化の豊かさを明らかにしています。ここから始まり、『高地文明―「もう一つの四大文明」の発見』では、メソポタミア、エジプト、インダス、黄河と並び称されるアンデスの高地文明(Andean highland civilization)について深掘りし、その発展の軌跡を追っています。

次に『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』は、欧州からの征服者たちの到来により、アステカ(Aztec)とインカ両文明がどのように崩壊したかに焦点を当てています。この書籍は、文明の交差点での歴史的な出来事と、それに続く影響について考察します。

『興亡の世界史 インカとスペイン 帝国の交錯』では、インカ帝国とスペイン帝国(Spanish Empire)との間の衝突と、それが後世の国々にどのように影響を及ぼしたかを詳細に解説しています。この交錯する歴史は、文明間の衝突がもたらす文化的、政治的な変化を示しています。

最後に、『マチュピチュ探検記 天空都市の謎を解く』は、インカ帝国の象徴的な遺跡マチュピチュ(Machu Picchu)を探検し、冒険者ハイラム・ビンガム(Hiram Bingham)の足跡をたどることで、現代における発見と再発見の物語を紡ぎ出しています。この書籍は、歴史的発見が現代にどのような影響を与えるかを読者に示します。

これらの書籍は、古代のインカ文明からスペインによる征服、さらに現代の発見に至るまで、アンデス地域の深い歴史とその影響を総合的に理解するための枠組みを提供しています。読者はこれらの作品を通じて、古代文明の日常生活、信仰体系、社会構造、そしてそれらが現代文明にどのように影響を与え続けているかを学ぶことができるでしょう。それぞれの書籍が独自の視点でアンデス文明に光を当て、読者に対し、過去を深く掘り下げ、未来に向けての理解を新たな視点から拡張する機会を与えています。