データサイエンスが社会の様々なセクターでの革新的な変化を牽引している今日、統計学や予測モデリングの理解はこれまで以上に価値を持つようになりました。それぞれのテーマやツールに関する情報は膨大で、どこから手をつければいいのか迷うことも多いでしょう。そこで、この記事では初心者から上級者までを対象に、予測モデリングと統計学の分野で非常に評価が高い5冊の書籍を厳選して紹介します。それぞれの書籍の特徴や読むことで得られるスキル、知識を明確に解説することで、読者の皆様の学びの旅をサポートします。データに潜む価値を引き出すための第一歩、最適な書籍選びの手助けとして、ぜひこの記事をご活用ください。
入門Rによる予測モデリング―機械学習を用いたリスク管理のために
近年、データサイエンスと機械学習の発展に伴い、予測モデリング(predictive modeling)が急速に注目を集めています。予測モデリングは、予測精度の高さを重視する統計的な解析手法およびその流儀を指します。本書『入門Rによる予測モデリング―機械学習を用いたリスク管理のために』は、予測モデリングの基本から実践的なトレーニングまでを網羅しており、特に統計ソフトRを使用した手法に焦点を当てています。
本書は、データを扱う現代の社会人にとって、予測モデリングの知識とRの技術の両方を学ぶための理想的なガイドとなっています。リスクは「不確定」で「避けたい」ものとされ、そのリスクを現代のデータサイエンスを駆使してどのように統計的に管理するかについて、具体的な実例を交えて詳しく解説しています。
内容として、第I部では予測モデリングの基本事項を解説。これには、「予測モデリングとは何か」、「予測モデリングの基本概念」、「予測モデリングの基本手順」が含まれています。第II部では、Rを使用した予測モデリングの実践的なヒントや、データの準備・前処理、モデルの選択・評価などの具体的な実例を紹介しています。さらに、付録ではRの環境の設定やR言語の基礎に関する情報が掲載されています。
著者の岩沢宏和氏は、東京大学を卒業後、保険数理やデータサイエンスの教育・普及活動を行うなど、その専門性と実績が確かであることが伺えます。彼の著書には、確率や統計に関するものが多数あり、本書もその一環として、予測モデリングの入門書としての位置づけができるでしょう。もう一人の著者、平松雄司氏も、東京大学出身で、現在はアクサ生命保険株式会社にてシニアデータサイエンティストとして活躍しており、実務での経験と学術的な背景を併せ持つ専門家です。
このように、本書は統計学と実務の双方からの視点を持つ著者によって書かれており、初心者から中級者までの読者に対して、予測モデリングとRの実践的な知識を効果的に伝えることができる1冊と言えるでしょう。
予測にいかす統計モデリングの基本 改訂第2版 ベイズ統計入門から応用まで
樋口知之先生による『予測にいかす統計モデリングの基本 改訂第2版 ベイズ統計入門から応用まで』(Published by 講談社, 2022)は、統計モデリングの入門から応用までを詳細に解説するロングセラーの書籍である。この改訂第2版は10年ぶりに発表され、内容やデザインに大きな変更が施されている。
まず、全ページがフルカラー化されたことで、図や表が非常に視覚的でわかりやすくなっています。また、非定常時系列データ解析の基本に関する新しい内容が追加され、第8章として新設されています。
この本は、データの見方や考え方を基本から学べる入門書として設計されており、読者が直面する「予測したい」という課題に対して自ら取り組むための知識や技術を網羅している。モデリングの重要性を理解して、それを実際に使いたいと考える人々に向けられており、統計の専門家からの「匠の技」や「匠の知恵」といったコラムも収録されており、実務での応用を意識した内容になっています。
東京大学特任教授であり、数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム議長の北川源四郎先生は、この書籍を「ベイズの定理(Bayes’ theorem)などの基本から、先端的な内容まで明瞭に解説している」と推薦しています。また、AIのブラックボックス型の予測だけでなく、自分自身のアイデアを統計モデリングに取り入れて説明可能な予測を行いたいと考える人々に、この本は絶対に読むべきと言っています。
本書の内容は、基礎編、展開編、そして実践編の3つの部分に分かれており、予測の本質から、計算アルゴリズム、時系列解析、そして具体的な実践例まで幅広くカバーしています。特に第11章の「確率ロボティクス(Probabilistic Robotics):お掃除ロボをつくる」は、統計学とロボティクスの融合を示す興味深い章となっています。
著者の樋口知之先生は、1989年に東京大学大学院理学系研究科の博士課程を修了し、2020年には「卓越した技能者(現代の名工)」をデータサイエンティストとして初受賞。現在は中央大学AI・データサイエンスセンターの所長として、また日本統計学会の会長として活躍しています。
全体として、この書籍は統計モデリングを深く学び、それを実務や研究に応用したいすべての人々にとって、貴重な一冊となることでしょう。
データサイエンスのための統計学入門 第2版 ―予測、分類、統計モデリング、統計的機械学習とR/Pythonプログラミング
『データサイエンスのための統計学入門 第2版 ―予測、分類、統計モデリング、統計的機械学習とR/Pythonプログラミング』は、データサイエンスの核心ともいえる統計学と機械学習(Machine Learning)についての詳細な解説を提供しています。この書籍は、Peter Bruce、Andrew Bruce、Peter Gedeckの3人の著者により執筆され、大橋真也氏が監修し、黒川利明氏が翻訳を手掛けました。
本書は、52の基本的な概念と関連用語を中心に、データサイエンスの幅広い領域にわたる知識を網羅的にカバーしています。それぞれの概念に対して、簡潔な説明、必要最低限の数式、グラフ、そしてRとPythonのコードを組み合わせて提示することで、理論と実践のバランスを取りながら深い理解を追求しています。
データサイエンスのプロセスにおいて、データの分類(Classification)、分析(Analysis)、モデル化(Modeling)、予測(Prediction)といったステップをどのように進めるべきか、そしてその中で統計学のどの部分が必要で、どの部分が不必要であるかを明確に示しています。これにより、読者は効率的に統計学の基本とデータサイエンスの実践技法を学ぶことができます。
特筆すべきは、この第2版においてPythonのコードが追加された点です。前版ではRのみの対応であったのに対し、今回はデータサイエンス分野でのPythonの増加する人気を取り入れ、Pythonにも対応したコードを提供しています。さらに、これらのコードはGitHubからダウンロード可能で、実際のデータ分析作業に役立てることができます。
著者について、Peter BruceはStatistics.comという統計教育の機関を設立しており、データサイエンティストの教育や専門家の育成に尽力しています。Andrew Bruceは統計学の博士号を持ち、統計とデータサイエンスの分野で30年以上の経験を持つベテランです。Peter Gedeckは創薬の分野での機械学習アルゴリズムの開発を専門としています。また、黒川利明氏はICTやビッグデータの分野での豊富な経験を持ち、大橋真也氏は教育の現場で数学やコンピュータを用いた教育方法を探求しています。
ベイズ統計で実践モデリング: 認知モデルのトレーニング
『ベイズ統計で実践モデリング: 認知モデルのトレーニング』は、マイケル・D. リー (Michael D. Lee) とエリック‐ジャン ワーゲンメイカーズ (Eric‐Jan Wagenmakers) によって執筆された、ベイズ統計の実践的な応用を取り扱った書籍です。2017年9月28日に北大路書房から発売され、井関 龍太と岡田 謙介による日本語訳が施されています。
この書籍の主題は、近年多くの科学的領域で注目されているベイズ推論の実践的な活用です。特に、認知モデリングの領域でのベイズ統計の応用に焦点を当てており、数多くのケーススタディを通じてモデリングの具体例が示されています。読者は、MatlabやRといったプログラミング言語を使用し、WinBUGS、JAGS、Stanといったツールを活用してベイズ推論を体験的に学ぶことができます。
書籍の「まえがき」には、統計学に対する新しい理解を深めるとともに、ベイズ統計の専門的なスキルを身につけることが強調されています。これにより、非ベイズ派の認知科学者であっても、先進的な統計モデルを実装する能力を身につけることが可能となります。
また、「訳者あとがき」によれば、本書はMichael D. LeeとEric-Jan Wagenmakersによる「Bayesian Cognitive Modeling: A Practical Course」の日本語訳とのこと。昨今の心理学界において、ベイズ統計学は盛んに議論されるトピックとなっており、関連書籍も増加しています。しかし、認知心理学や認知科学の基礎的な領域の研究者たちの中には、ベイズの理論や実践方法に対する理解が深まっていない方もいる。この書籍は、そうした研究者や学生にとって、ベイズ統計学の実践的な応用についての有益なガイドとなるでしょう。
「解説」部分からは、ベイズモデリングが持つ可能性やその応用例についての説明があります。ベイズモデリングは、単なる「差がある/ない」といった質的な結果に留まらず、量的な観測データを活用して豊かな情報を提供する手法として紹介されています。そのため、心理学や認知科学の新しい時代を切り開くキーとなると信じられています。
著者たちについて、マイケル・D・リーはカリフォルニア大学アーバイン校の認知科学部教授、エリック-ジャン・ワーゲンメイカーズはアムステルダム大学の心理学研究法学部教授として活躍しています。日本語訳を手掛けた井関龍太は大正大学の心理社会学部専任講師、岡田謙介は専修大学の人間科学部准教授としてそれぞれ研究や教育に従事しています。
総括すると、『ベイズ統計で実践モデリング: 認知モデルのトレーニング』は、ベイズ統計学の理論と実践を体系的に学びたい方に向けた、実践的かつ理論的な内容をバランス良く取り扱った一冊となっています。
改訂2版 RユーザのためのRStudio[実践]入門〜tidyverseによるモダンな分析フローの世界
本書は、松村 優哉氏を始めとする4人の著者によって執筆され、2021年6月3日に技術評論社より発売された。R言語の統合開発環境(IDE)であるRStudioと、現代的なデータ分析を可能にするtidyverseパッケージの使い方を詳しく学ぶことができる入門書となっています。
書籍は、RStudioの基本的な操作から始まり、データの収集、整形、可視化、そしてレポーティングの各ステップを段階的に学べる構成となっています。これにより、データ分析のワークフローを網羅的に学ぶことができるのが特長です。
また、本書は2018年に初版が出版されて以来、最新の情報を加えて改訂されています。具体的には、RStudioのバージョンv1.4に対応した内容や、新たなVisual Editor機能、さらには「Jobs機能」といった新機能の紹介が含まれています。データ処理のライブラリとしてのdplyr 1.0にも対応しており、新たな関数の解説も追加されています。
加えて、付録として「stringrによる文字列データの処理」や「lubridateによる日付・時刻データの処理」という章も新たに追加され、より幅広いデータ処理についての知識を得ることができます。
おすすめの対象者:
- RやRStudioを用いて現代的な分析環境を手に入れたい方
- 分析の流れを意識した業務や解析を行いたい方
著者についての簡単な紹介:
- 松村優哉氏:IT企業に勤務しており、学生時代の専門はベイズ統計学やマーケティングの応用分野。RやPythonに関する情報をブログで発信しており、Rの勉強会であるTokyo.Rの運営にも携わっています。
- 湯谷啓明氏:IT企業での勤務の傍ら、Rに関する情報を技術ブログで発信。特に、データの可視化やtidyverseに関する貢献が多数あります。
- 紀ノ定保礼氏:静岡理工科大学情報学部の講師として活動し、専門は認知心理学や交通心理学。Rを用いた統計モデリングやtidyverseへの深い興味を持っています。
- 前田和寛氏:IT企業に勤めながら、Rを使ったデータ分析の分野で活躍しています。
このように、各著者はそれぞれの分野での深い知識と経験を持ち、そのエキスパートとしての知見を本書に凝縮しています。
「改訂2版 RユーザのためのRStudio[実践]入門〜tidyverseによるモダンな分析フローの世界」は、R言語とRStudioの最新の機能や、tidyverseパッケージを使用したモダンなデータ分析の手法を学ぶための最適なガイドブックです。データ分析の初学者から経験者まで、幅広い読者層に対して有用な情報を提供しています。
予測モデリングと統計学の5冊の総括
近年、データサイエンスと機械学習の進化に伴い、予測モデリングと統計学の分野も急速に変革を遂げています。ここでは、その変革をリードする5冊の書籍を総括します。
まず『入門Rによる予測モデリング―機械学習を用いたリスク管理のために』は、R(R language)を用いたリスク管理の実践的手法を提供しています。初心者向けの入門書として、予測モデリングの基本をRを使用して身につけることができます。
次に、『予測にいかす統計モデリングの基本 改訂第2版 ベイズ統計入門から応用まで』は、統計学の中でも特にベイズ統計(Bayesian statistics)に焦点を当て、予測モデリングの理論的背景から応用手法までを網羅しています。ベイズ統計の基本から応用までを一冊で学べるのは、非常に価値があります。
『データサイエンスのための統計学入門 第2版 ―予測、分類、統計モデリング、統計的機械学習とR/Pythonプログラミング』は、統計学の基本原則をデータサイエンスの文脈で解説しています。特にRとPython(Python language)の両方でのプログラミング技術を取り入れている点が魅力で、実践的なスキル習得に役立ちます。
『ベイズ統計で実践モデリング: 認知モデルのトレーニング』は、ベイズ統計を用いた認知モデリングの実践的な手法を提供。ベイズ統計の理論だけでなく、実際のモデリングの技術を深めることができます。
最後に、『改訂2版 RユーザのためのRStudio[実践]入門〜tidyverseによるモダンな分析フローの世界』は、R言語のIDEであるRStudio(RStudio IDE)とtidyverseパッケージを用いたモダンなデータ分析の流れを体系的に解説しています。初心者から上級者まで、Rを使ったデータ分析を効率的に進めるための一冊です。
これら5冊を通じて、予測モデリングと統計学の実践的な技術と理論的背景を学ぶことができます。データサイエンスの分野での研究や実務を進める上で、これらの書籍は必携のものとなるでしょう。