熊本城は、その壮麗な姿や歴史的背景で多くの人々を魅了してきた日本の名城の一つです。しかし、その外見の美しさや堅牢さだけが熊本城の魅力ではありません。地震の影響からの復興の過程、築城にまつわるエピソードや伝説、そして城とともに生きた人々の物語。これら多層的な要素が絡み合い、熊本城の深い魅力を形成しています。今回のブログ記事では、熊本城に関する五つの注目すべき書籍を取り上げ、その多面的な魅力を深掘りします。歴史好きはもちろん、これから熊本城を訪れる予定の方や、地震からの復興の過程に関心を持つ方にも、新しい視点や知識を提供できる内容となっています。さあ、熊本城の奥深い世界へ一緒に旅を始めましょう。
熊本城超絶再現記 巨大ジオラマでよみがえる本丸の全貌
熊本城(Kumamoto Castle)は、日本の歴史的建造物として知られる城の一つです。その熊本城を、驚異の詳細度で再現したのが、『熊本城超絶再現記 巨大ジオラマでよみがえる本丸の全貌』という書籍です。著者は島充(Mitsuru Shima)、そして新紀元社(Shinkigensha)が編集を担当しており、2019年10月12日に発売されました。
- 書籍の特色
この本の大きな特徴は、縮尺1/150の巨大ジオラマを使用して熊本城の本丸を超精密に再現したことです。そのサイズは、実に畳4畳半ほど。その精度は、これまでの模型やCGの再現をはるかに上回るものとなっています。特に「情景師アラーキー」も、この再現プロジェクトを絶賛し、書籍化のプロデュースにも参加しています。 - 熊本城の新たな一面
通常、「石垣の城」と称される熊本城ですが、この本を通して明らかにされたのは、実は天守に匹敵する櫓や巨大な城門がひしめき合う「過剰建築の城」であったという事実です。古絵図や高精細な古写真を総合的に解析し、建物の立体形状を明らかにしたこの過程は、新しい研究成果としても評価されています。 - 書籍の内容
- 巻頭グラビア:明治三年の熊本城本丸を完全再現した模型の写真を掲載。
- 第一章:模型制作の根拠となる古絵図や古写真をフルカラーで解読。
- 第二章:古絵図、古写真、石垣遺構を総合的に解析し、建物の立体形状を明らかにする過程を詳述。
- 第三章:巨大ジオラマの制作過程や著者の技術・考え方について深く探る。
- 第四章:模型写真と模型図面を使って、本丸内の主要建物を個別に詳しく解説。
- 第五章:明治期に失われた熊本城と、熊本地震後の復興過程を追いながら、建築物の運命について考察。
- 著者について
島充は城郭・古建築模型作家として知られる人物。福岡県柳川市に生まれ、慶應義塾大学で美学美術史学を専攻。幼少期から日本の伝統建築に魅せられ、様々な模型制作に情熱を注いできました。特に、時代や空間の「空気感」まで再現する独特な作風が、多くのファンから高い評価を受けています。
この書籍は、熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城の早期復興を願いつつ、これまで知られていなかった真の姿を明らかにしたいという城郭ファンや歴史ファンにとって、必読の一冊となっています。
熊本城天守閣常設展示図録 (復興熊本城別冊 天守閣完全復旧記念)
平成28年、熊本を襲った大地震により、歴史的な遺産である熊本城は甚大な被害を受けました。この悲劇は、熊本市民だけでなく、全国からの注目を浴びることとなりました。しかし、その傷痕を乗り越え、熊本城天守閣は令和3年4月に堂々と完全復旧を遂げ、一般に再び公開されることとなったのです。
この感動的な復旧の記念として、熊本市と熊本日日新聞社が共著で『熊本城天守閣常設展示図録 (復興熊本城別冊 天守閣完全復旧記念)』を刊行しました。本書は、熊本城天守閣内部にある展示物を中心に、その全貌を詳細に収録しています。さらには、各フロアや時代ごとに展示物を分類し、読者が熊本城の歴史を時系列に沿って追体験できる構成となっています。
特に注目すべきは、加藤・細川時代の城づくり・町づくりに関する展示で、この時代が熊本城の基盤となる歴史的背景を持っているからです。また、明治の動乱や過去の地震被害など、時代ごとの出来事を通じて、熊本城がどのようにして現代まで続いてきたのかを理解することができます。
熊本城の歴史は、単なる建物の歴史ではなく、日本の歴史、特に熊本の地域の発展と深く結びついています。この本は、その熊本城の歩みを通じて、日本の城郭文化や地域の成り立ちを知る上で欠かせない一冊と言えるでしょう。
総じて、『熊本城天守閣常設展示図録 (復興熊本城別冊 天守閣完全復旧記念)』は、歴史愛好家はもちろん、熊本の文化や歴史に関心を持つ全ての人にとって、興味深く、また教育的な価値を持つ書籍となっています。
復興 熊本城 Vol.6 石垣被害研究編 令和4年度上半期まで
熊本地震の影響は、日本全国を揺るがすほどのものでしたが、中でも歴史的遺産である熊本城の被害は計り知れないものでした。その復旧の道のりは、長く困難なものとなっていますが、それを詳細に追って記録したシリーズが「復興 熊本城」として熊本市によって刊行されています。そして、その中でも特に注目を集めているのが最新刊となる『復興 熊本城 Vol.6 石垣被害研究編 令和4年度上半期まで』です。
この第6集は、熊本城の特徴的な部分である監物櫓石垣(Monitoring Turret Stone Walls)の復旧状況を主軸として取り上げています。令和4年度上半期までの石垣の修復の進行度や現場の様子が詳細に描写されており、その復旧作業の大変さと専門家たちの緻密な作業が伝わってきます。
また、特筆すべきは、宇土櫓・続櫓下空堀(Uto Turret and Continued Turret Lower Moat)の発掘調査結果の紹介部分です。これによって、熊本城の歴史的背景や構造的な特徴が明らかになっています。
さらに、平成28年の熊本地震の際の地震被害に関して、過去の石垣修理履歴との関連性を探るセクションも含まれています。これにより、石垣がどのような過去の修復を経て、どのような影響を受けやすかったのかという点についての深い洞察が得られるでしょう。
総じて、『復興 熊本城 Vol.6 石垣被害研究編 令和4年度上半期まで』は、熊本城の復旧の過程やその背後にある歴史的背景、そして地震という自然災害との関連性を深く探るための重要な文献となっています。歴史愛好家はもちろん、地震の影響や日本の城郭文化に興味を持つ方々には必読の一冊と言えるでしょう。
熊本城復活大作戦: 地震から二十年かけて進む道のり
日本の歴史的建造物の中でも、熊本城はその優美な姿と長い歴史で多くの人々から愛されてきました。しかし、2016年4月に熊本県を襲った熊本地震(Kumamoto Earthquake)によって、この名城は甚大な被害を受けました。この書籍『熊本城復活大作戦: 地震から二十年かけて進む道のり』は、熊本城の復興を目指す約20年間の取り組みを詳細に追いながら、その背後にある意義や哲学を解き明かしています。
熊本城の修復作業は単に被害を受けた部分を修理するだけのものではなく、その中には三つの大きな柱が含まれています。第一に、石垣や建物の修復に先立ち、しっかりとした調査研究が進められています。これにより、熊本城の築城技術やその歴史的背景、そして城の秘密が明らかにされています。このような調査研究は、歴史的価値を保護しながら最も適切な修復方法を探るための基盤となっています。
第二に、熊本城の被災状況をもとに、観光地での災害発生時の対策を考案しています。これにより、将来的な災害時における被害の最小化や、訪問者の安全確保が図られることを目指しています。
第三に、修復作業の進捗や手法を公開し、熊本城の歴史的価値や文化的意義を次世代に伝える活動が行われています。これは、熊本城が単なる建造物ではなく、日本の歴史や文化の象徴であり、それを未来の世代にしっかりと受け継いでいく必要があるという思いからの取り組みです。
そして、復興の道のりの中で、熊本城の特別公開が開始され、多くの人々が再びその天守閣に近づくことができるようになりました。この書籍は、そんな熊本城の復興への道のりを一歩一歩紐解きながら、読者を熊本城の奥深い世界へと案内してくれる一冊となっています。
もっこすの城 熊本築城始末 (角川文庫)
日本の歴史の中で数々の名城が築かれてきましたが、その中でも熊本城は「天下無双の名城」として知られ、多くの歴史愛好者や観光客を魅了しています。この書籍『もっこすの城 熊本築城始末』は、その熊本城がどのような背景やエピソードを持って築かれたのかを、深く掘り下げた作品となっています。
物語は、天正10年、京都本能寺の変で織田信長が命を落とした事件から始まります。織田信長の家臣であり、名城「安土城」の築城主でもあった木村忠範は、主の死を悼みながら、自らの築いた城を最後まで守るために戦い抜きます。彼の嫡男、藤九郎は家族とその名誉を守るため、猛将として名を馳せる加藤清正に仕官します。物語は、藤九郎が菊池川の治水工事や朝鮮出兵などの数々の難局を乗り越える中で、築城の秘伝を父から受け継ぎ、熊本城の築城に挑むまでの道のりを描いています。
著者、伊東潤は1960年、神奈川県横浜市に生まれ、早稲田大学を卒業後、外資系企業に勤務。その後、文筆業に転職し、多くの受賞歴を持つ作家として知られています。彼の作品には、時代背景や人々の生き様を詳細に描写し、読者をその時代へと引き込む力があります。『もっこすの城 熊本築城始末』も、その中の一つとして、熱い戦国ロマンを感じさせる作品となっております。
この書籍は、熊本城の誕生にまつわる壮大な物語を、藤九郎という一人の男の視点から描いており、熊本城や戦国時代に興味がある方には必読の一冊と言えるでしょう。
まとめ
熊本城は、日本の歴史と文化の象徴として長い間多くの人々を魅了してきました。近年、さまざまな書籍がこの名城の過去、現在、そして未来について照らし出しています。ここでは、五つの注目すべき書籍を紹介し、その独自の視点から熊本城の魅力を再認識しましょう。
- **『熊本城超絶再現記 巨大ジオラマでよみがえる本丸の全貌』**は、熊本城の歴史的な風景をジオラマ(diorama)を通して物語る一冊。読者に、かつての城の壮大さとその詳細な構造を目の前に再現することで、実際に時間を遡るかのような体験を提供しています。
- **『熊本城天守閣常設展示図録 (復興熊本城別冊 天守閣完全復旧記念)』**は、熊本城天守閣の再建を記念して制作された図録。これは、天守閣の魅力を細部まで網羅し、一つ一つの展示物の背後にある歴史や意義を解説しています。
- **『復興 熊本城 Vol.6 石垣被害研究編 令和4年度上半期まで』**は、熊本地震後の熊本城の復旧過程を深く探求するシリーズの一部。石垣の復旧状況やそれに関連する過去の修復履歴を通じて、熊本城がどのように時代の変遷とともに変わってきたかを詳細に描写しています。
- **『熊本城復活大作戦: 地震から二十年かけて進む道のり』**は、熊本地震後の20年間の熊本城の修復の道のりを描いた書籍。これは、単なる復旧作業の記録ではなく、その過程での調査、文化財の保存という大きな取り組みや、観光地としての災害対策についても考察しています。
- **『もっこすの城 熊本築城始末 (角川文庫)』**は、熊本城の築城背景を中心に、戦国時代の熱いロマンを描いた作品。伊東潤の緻密な筆致で、熊本城がどのような背景やエピソードを持って築かれたのかを深く掘り下げています。
これらの書籍を通じて、熊本城はただの歴史的建造物ではなく、時代や文化、人々の思いが絡み合った、深い物語性を持った場所であることが伝わってきます。これからも、熊本城に関する様々な研究や文献が増えることでしょう。その都度、私たちはこの名城の新たな一面を発見し続けることとなるでしょう。