日本の文化と歴史の根底に流れる、縄文時代の謎と魅力について一緒に探求してみませんか。日本全国、そして世界中から収集された縄文土器は、その美しさとユニークなデザインで、多くの人々を引きつけ、奥深い歴史と文化の物語を語ります。このブログ記事では、その物語を詳しく調査し、深く理解するための5冊の注目書籍をご紹介します。
『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』、『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』、『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』、『KAKERA』、そして『縄文土器ガイドブック―縄文土器の世界』は、縄文土器の芸術的、社会的、歴史的意義を探求する上で欠かすことのできないリソースです。
これらの書籍を通して、私たちは縄文土器と縄文人が持っていた生活、信念、そして技術の細部に迫ります。それぞれの書籍が提供する独特な視点と情報を組み合わせることで、私たちは縄文時代とその独特な土器について、より深い理解を得ることができます。興味深い旅の始まりはここからです。それでは、一緒に歴史の迷宮を探検してみましょう。
『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』
『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』(”Emerging from Jomon Fragments: Restorers and Anthropologists Explore the Labyrinth of Restoration”)は、縄文土器(Jomon pottery)の修復(restoration)に焦点を当てた興味深い著作です。著者たちは古谷嘉章(Yoshiaki Furuya)、石原道知(Michichi Ishihara)、および堀江武史(Takeshi Horiye)の三者で、それぞれが修復の異なる側面からこの複雑なテーマを探ります。
『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』は縄文土器の修復を初めて詳述した作品で、一般にはあまり知られていない「修復の迷宮」を読者に紹介します。縄文土器が地中から発掘され、修復され、最終的に我々が目の当たりにするまでのプロセスは、数々の厄介な、そして意外に身近な問題を伴います。欠損部分の意味、文様の反復、修復の過程での介入の度合い、修復部分の識別、完全な形の再現により見えなくなる部分、そして現代の感覚で修復する危険性など、これら全てが本書で探求されます。
古谷嘉章はブラジルを主たるフィールドとする文化人類学者(cultural anthropologist)で、九州大学の名誉教授および特任研究者です。彼は特に物質と文化との関わりについて深く探求しており、それが『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』における視点に影響を与えています。
石原道知は武蔵野美術短大学卒業後、考古資料の修復と複製を行う会社で働き、現在は自身が設立した武蔵野文化財修復研究所で働いています。彼の視点は、具体的な修復プロセスと技術的な側面からの洞察を提供します。
堀江武史は府中工房の主宰者で、文化財の修復と複製、縄文遺物と現代美術の展示などを手掛けています。彼は縄文遺物と現代美術の相互作用についての洞察を提供します。
この3人の専門家が縄文土器の修復を通じて、そして世界の修復事例を引き合いに出しながら、「修復とは何のために何をすることなのか」という深深な問いに向き合います。それは単に過去の破片を再構築するだけでなく、文化的、社会的、技術的な側面すべてにわたる複雑な問題を取り上げることを意味します。
縄文土器に関心があり、またその修復がどのように行われているのか、その過程でどのような問題が生じ、どのように解決されているのかについて深く理解したい読者にとって、『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』は絶対に欠かせない一冊となるでしょう。
『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』
『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』は、縄文時代の土器製作プロセスと、自身で小さな土製品を作る方法について詳しく解説した一冊です。望月昭秀氏の著述により、読者は古代の縄文時代と現代の我々との間に橋渡しをするかのような、魅力的な読書体験を得ることができます。
『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』は大きく二つのパートに分けられています。Side A「土から土器ができるまで」では、縄文文化の根幹を担う土器製作を追体験します。北海道・北東北の縄文遺跡群、特に是川縄文館の協力を得て、土器、土偶、土製品がどのように作られていたのかを文書化しています。山から粘土を採取し、形を作り、乾燥させ、焼き、黒くするまでの一連のプロセスを丁寧に追跡します。読者は、この部分を通して縄文人がどのように生活していたのか、土器をどう使っていたのかを理解することができます。
一方、Side B「小さな土製品を作る」では、読者自身が手を動かして小さな土製品を作る方法を学びます。望月氏の考察とともに、現代の人間がどのような土器や土偶を作るべきか、また造形家の山内崇嗣氏の魅力的な土製品が紹介されます。さらに、青森県八戸市の中高生たちによる土製品のワークショップの様子や作品も紹介されており、読者はこれらの事例を参考に自分自身の創作活動に活かすことができます。
望月昭秀氏は、都会の縄文人を対象としたマガジン、フリーペーパー『縄文ZINE』の編集長で、その独自の視点と深い理解をもとに、現代と縄文を繋げる一方、縄文文化に対する新しい魅力を引き出しています。一方の山内崇嗣氏は、個性的な作品を生み出す造形家として広く知られています。彼らの共同作業により、この『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』は縄文文化の理解と創作活動の手引きとして、多くの読者にとって魅力的な一冊となっています。
縄文土器や土製品に興味を持つ人、自身で土製品を作ってみたいと思っている人にとって、『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』は価値ある一冊と言えるでしょう。この『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』を手に取ることで、読者は縄文時代の生活と現代の創作活動の間にある繋がりを深く理解することができます。
『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』
『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』は、阿部芳郎氏編集のもと、多角的な視点から縄文土器とその時代を探求する学術書籍です。この『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』は縄文土器研究の最前線を知るための一冊といえるでしょう。
まず、阿部氏自身が述べている「縄文土器と社会」では、縄文土器がその時代の社会とどのように結びついていたのかを考察しています。また、型式学の観点から見た縄文土器の地域性についても詳しく解説されています。
藤山龍造氏の「狩猟採集社会における土器の誕生」や栗島義明氏の「日本列島における最古土器群の特質」では、土器が生まれた当初の状況や最古の土器群の特徴について詳細に探求されています。
さらに『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』では、南九州の早期土器の独自性や九州と朝鮮半島の土器型式の関係性など、特定の地域や時期に焦点を当てた具体的な研究も紹介されています。これらの研究は、土器が地域ごとに異なる特徴を持ち、また異なる地域間の交流を示す重要な手がかりとなることを明らかにしています。
『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』の特筆すべき点は、土器研究の多様な分析視点が提示されていることです。例えば、蒲生侑佳氏の「前期漆塗土器の技術構造」や小畑弘己氏の「レプリカ法―土器の情報構造を読み解く―」など、土器の製作技術や解析方法についての新たな視点が提供されています。
さらに、理化学分析を用いた土器の用途の解明も行われています。米田 穣・阿部芳郎氏による「土器付着炭化物の同位体分析で探る土器の使い分け」や、阿部芳郎氏の「製塩土器と製塩行為―土器型式学と微小生物遺存体の分析が明らかにする土器製塩の実態―」など、科学的手法を駆使した研究も豊富に収録されています。
また、最後には、中村耕作氏による「注口土器・香炉形土器の異形化・顔身体化と社会背景」や藤原秀樹氏の「埋葬儀礼と土器」のように、土器が社会や文化とどのように関わっていたのか、土器の形状や利用方法が何を意味していたのかについても考察されています。
全体として、『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』は、縄文土器研究の深さと広がりを理解するための重要な書籍となっています。縄文土器について学びたいすべての人々に対して、新たな知識と洞察を提供する一冊と言えるでしょう。
『KAKERA』
『KAKERA』は田附勝氏によって撮影された一連の写真作品であり、それは縄文時代の土器のかけらと、それが保管されていた状態を記録したものです。田附氏はかつてデコトラ(デコレーション・トラック)の撮影で注目を浴び、その後は東北地方の風土や文化、人々の生活を追求し続けてきました。
『KAKERA』では、新潟県津南町を始めとする各地の博物館や発掘現場で保管されていた縄文土器のかけらを中心に描かれています。これらのかけらは、新聞紙とともに保管されていた状態をそのままに撮影されており、そこには複数の時間軸が交錯しています。そのひとつは縄文時代の土器そのもの、また一つは土器が発掘された当時の新聞、そしてもう一つは田附氏が撮影した現在という時間です。
この作品を通じて、「声なきもの」、「わからぬもの」との対話が生まれ、その歴史や手の痕跡、失われた時間までが捉えられます。田附氏の他の作品と共通する視座をここでも見ることができます。つまり、それは時間の多層性や人間の生活の痕跡、歴史の流れといったものを捉える視座であり、その視座を通じて自分たち自身と、自分たちを取り巻く社会を見つめ直す機会を提供します。
田附氏のステートメントによれば、「平箱の中にあった時間の断片の層は、過去と現在と未来は一続きとさせず、歪み、ねじれ、絡み合っていると気付かせる。 私たちはそういった時間の層の中を踏みしめている。」と述べています。つまり、時間は一直線に進むのではなく、複数の断片が絡み合い、ねじれ、歪みながら私たちの周りで展開されているということです。
『KAKERA』は、過去・現在・未来の時間が積み重なる作品となっています。この作品を通じて、私たちは自己や社会を深く見つめ直し、時間の複雑な流れを理解することができます。
『縄文土器ガイドブック―縄文土器の世界』
『縄文土器ガイドブック―縄文土器の世界』は、井口直司氏による詳細かつ視覚的な縄文土器の解説書であり、約一万年間にわたって日本各地で作られた縄文土器の世界を読者に提示します。
井口氏は立正大学文学部史学科(考古学専攻)を卒業後、東久留米市郷土資料室学芸員、千葉大学非常勤講師、文化財保存全国協議会監査員などを務めてきました。その豊富な経験と専門知識を活かし、このガイドブックでは縄文土器を深く理解するためのキーワードをわかりやすく解説しています。
また、主要な縄文土器を写真を通じて紹介し、その多様な造形美がどのようにして人々を引きつけ、その文化と時代を反映しているかを解き明かします。本書を通じて、縄文土器と縄文時代の視点がぐっと広がり、その魅力を新たな角度から発見することが可能となります。
井口氏は、縄文土器には「風土に適応しながら生活する日本列島人として、いま考えるべき何かが込められている」と述べています。つまり、これらの古代の工芸品は単なる遺物ではなく、現代の我々が自身の生活や社会を理解し、反省する手がかりとなるのです。
『縄文土器ガイドブック―縄文土器の世界』は、その美的価値だけでなく、縄文土器が持つ社会や文化に対する洞察を提供することで、読者にとって価値ある読み物となることでしょう。縄文土器に関心があるすべての人にとって、この本は理解を深める上で欠かせない一冊と言えるでしょう。
まとめ
以上の5冊の書籍を通じて、縄文土器についての広範で深遠な理解を得ることができます。それぞれが縄文土器についての異なる視点を提供し、組み合わせることでより広範で深遠な理解を可能にします。
『縄文の断片から見えてくる : 修復家と人類学者が探る修復の迷宮』では、土器修復家と人類学者が連携して縄文土器の修復についての謎を探り、その過程で縄文土器の細部にまで視点を向け、その歴史的な価値と意味を詳細に解析します。
一方、『土から土器ができるまで/小さな土製品を作る (縄文ZINE books)』では、土器の製作プロセスを解説し、読者自身が手作りの縄文土器を作るためのガイドブックとして機能します。これにより、実際の製作過程を通じて縄文人の生活や技術を体験することができます。
『土器研究が拓く新たな縄文社会 (季刊考古学)』は、最新の研究結果とともに縄文社会を理解する新たな視点を提供します。これにより、縄文土器が描く社会像と縄文時代の生活像を理解することが可能となります。
『KAKERA』は、田附勝氏による縄文土器の写真集であり、縄文土器のかけらが時間を超えてどのように保管され、発掘され、再評価されてきたかを視覚的に探求します。そして、縄文土器が持つ時間的な深淵を探ります。
そして最後に、『縄文土器ガイドブック―縄文土器の世界』は、井口直司氏による縄文土器の詳細な解説書で、縄文土器とその時代の深い理解を可能にします。
これらの書籍を通じて、読者は縄文土器がもつ文化的、歴史的、芸術的価値を理解することができます。それぞれの視点を組み合わせることで、縄文土器とその背後にある縄文時代の人々の生活と文化についての広範で深遠な理解が可能となるでしょう。これらの書籍は、考古学者でもアマチュアでも、縄文土器やその時代に興味を持つすべての人々にとって、極めて有益なリソースとなることでしょう。