2023年は、岩手県盛岡市が全世界の注目を浴びています。なぜなら、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ「ことし行くべき52か所の旅行先」で盛岡市が2位に選ばれたからです。この一帯には、美しい盛岡城跡公園や大正時代の建築が残る街並み、さらに現代的なホテルから古い旅館まで、歴史と現代が調和した風情があります。この記事では、そんな盛岡市で今夏開催される、遺跡の学び館の特別展示「おおむかしのくらしとSDGs」について紹介します。
展示の概要
「おおむかしのくらしとSDGs」展示は、令和5年6月3日から9月18日まで開催されます。ここでは、盛岡市内の遺跡の考古学的発掘調査成果を、国連が採択した「持続可能な開発目標・SDGs」の視点で紹介します。遺跡や歴史文化遺産に親しむきっかけとして、現代社会の課題について考える契機となる展示です。常に人は豊かに、よりよく生きるため、協力し発展してきたことが出土資料からうかがえます。
展示の内容とテーマ
展示は三つのテーマに分かれています。
- テーマ1: 冬に温かく、夏に涼しく、美味しいものを食べ、健康で長生きする。これは人間が今も昔も望んできたことです。人はこのためにさまざまな工夫を重ねてきました。
- テーマ2: 知識や知恵を共有したり、人と良い関係を持つなどの社会環境も大切です。世界にはさまざまな人がいます。みんなが住みやすい世界は、誰もがよりよく生きられる世界と言えるでしょう。
- テーマ3: 人は非力な生き物です。しかし協力しあうことで、効率よくより良い暮らしができます。昔の人たちも、最大限の工夫をし力を合わせて発展し、生きてきました。
学芸講座「遺跡・歴史文化遺産とSDGs」
展示に付随して、令和5年6月18日には学芸講座「遺跡・歴史文化遺産とSDGs」が開催されます。ここでは、展示担当職員がSDGs の観点から遺跡や歴史文化遺産について語ります。こちらは事前申込が必要で、定員は60人となっています。
終わりに
本記事では、岩手県盛岡市で開催される注目の展示「おおむかしのくらしとSDGs」について詳しく紹介しました。この展示は、遺跡の学び館で、国連が採択した「持続可能な開発目標・SDGs」をテーマにした、現代社会と昔の生活スタイルとの関連性を探るというものです。
ここで、SDGsとは、2030年までに達成を目指す17の具体的な目標で、貧困や飢餓をなくし、健康と福祉を提供し、気候変動に対処するといったことが含まれています。これらの目標は全て相互に関連しており、人々の生活や環境に対する全体的な視点を提供します。
本展示では、三つのテーマに沿って、過去の人々がどのように生活を豊かにし、社会と共生してきたかを出土資料を通じて学ぶことができます。具体的には、テーマ1では人々が暮らしを豊かにするためにどのような工夫をしてきたか、テーマ2では知識や知恵を共有し、良好な人間関係を築くことの重要性、そしてテーマ3では人々が協力して生活を効率よくより良くするための方法を学ぶことができます。
これらのテーマは、SDGsの視点から考えると、貧困の撲滅、質の高い教育の提供、そして持続可能な都市とコミュニティの構築といった目標に直接つながります。過去の人々の生活を通じて、私たちは現代社会で直面する問題をより深く理解し、それらに取り組むための新たな視点を得ることができます。
「おおむかしのくらしとSDGs」展示は、SDGsの達成に向けて全世界が連携して行動を起こす必要性を思い出させるとともに、過去の人々がどのように生活してきたかを学ぶことで、今日の我々がどのように生きるべきかについて考える機会を提供します。盛岡市への訪問者は、この展示を通じて、SDGsを深く理解し、自分たちの生活の中でどのようにそれを実現するかについて考えることができるでしょう。
おまけ:考古学とSDGsを考える。
考古学は、人間の過去から学び、持続可能な未来を築くための一助となる重要なツールです。その役割は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも大いに関連しています。考古学は、私たちがどのように過去の知識から現在、そして未来を形成するのかという視点から、SDGsの各目標に対する理解を深め、貢献を拡大することができます。
例えば、文化遺産の保存は、都市と人間の定住地が持続可能であること、つまりSDG 11を目指す上で重要な要素となります。古代の建築物や地域の伝統的な生活様式の研究から、持続可能な都市計画の新たな視点を得ることができます。
さらに、過去の気候変動パターンを理解するために考古学を活用することで、現在の気候課題に対処する手助けとなります。これは、SDG 13の「気候変動に対する具体的な行動をとる」を促進します。
また、教育の質の向上、SDG 4の目標を達成するためにも考古学は役立ちます。考古学的発見は、人類の歴史と文化的多様性について深い理解を促進し、教育カリキュラムを豊かにすることができます。
さらに、考古学的遺跡の保護は、陸上生態系の保全、つまりSDG 15の達成に寄与します。これらの遺跡はしばしば事実上の自然保護区として機能し、生物多様性の保護に役立ちます。
そして、考古学的観光は、SDG 8の「働きがいのある雇用を作り出し、経済成長を達成する」に対する具体的な方策となりえます。考古学的発見は地元の文化と伝統を促進し、観光を通じた経済的利益を生む可能性があります。
最後に、先住民の考古学の研究は、国内外の不平等を減らす、つまりSDG 10の目標を達成するために重要な役割を果たします。先住民の考古学は、そのコミュニティの声を高め、歴史的な不平等を理解し、克服するための洞察を提供します。
これら全ては、考古学が私たちの社会の持続可能な未来をどのように形成するかという視点から掘り下げることができるテーマです。それぞれのテーマは、持続可能な開発目標(SDGs)への寄与を示す一方で、人類が過去から学び、未来を見つめる方法を考察する有意義なフレームワークを提供します。