古代エジプト。神々とファラオ、壮大なピラミッド、謎に満ちた象形文字、ミイラといったキーワードが浮かび上がるでしょう。そこには無尽蔵の知識と解明されていない謎が溢れています。今回は、まさにその奥深い世界を探求するため、日本国内で開催される3つのエジプトに関する展覧会をご案内します。角川武蔵野ミュージアムの「体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」、本庄早稲田の杜ミュージアムの「エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−」、そしていわき市立美術館の「古代エジプト美術館展」です。

エジプトの王、ツタンカーメンの一生を目の当たりにしたり、学術的な視点から古代エジプトの日常生活に迫ったり、また、先王朝時代からローマ支配時代までの幅広い時代を見渡すことができる質と量を兼ね備えたコレクションに触れる機会を提供します。それぞれの展示は古代エジプトの異なる側面を描き出し、それぞれの視点からこの壮大な文明を理解する道筋を示します。

この記事を通じて、それぞれの展示がどのような視点を持ち、何を提供しているのかをご紹介します。さあ、古代エジプトの神秘に満ちた世界へと足を踏み入れ、その魅力を一緒に探求しましょう。

角川武蔵野ミュージアム:体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春

1:ツタンカーメンとは誰か

「体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」は、角川武蔵野ミュージアムで開催される展覧会で、古代エジプトの若きファラオ、ツタンカーメンの生涯を探求します。2022年は、考古学者ハワード・カーターが1922年にツタンカーメンの王墓を発見してからちょうど100年という記念の年で、新たな研究や発掘が行われ、新しい発見が相次いでいます。本展覧会の目指すところは、単なる歴史上の人物ではなく、生身の人間としてツタンカーメンを捉え、その人生と物語を豊かに想像できる展示空間を提供することです。

2:歴史は物語である

この展覧会のコンセプトは「HISTORYはSTORYだ!」です。3000年以上前の歴史上の人物であるツタンカーメンを、物語の主人公として捉え直すことで、来場者は彼がその時代にどう生きて何を思ったのかをより具体的に理解することができます。ツタンカーメンは父・アクエンアテンの後をわずか8~9歳で継ぎ、19歳で亡くなったとされています。即位した期間は、人生の中で最も躍動感と不確宝性が重なる青春期でした。この展覧会では、少年王の生き様と物語を精巧な複製品と最新のデジタル技術を駆使して追体験します。

3:革新的な展示方法

本展覧会では、最新テクノロジーを駆使した展示空間を提供します。展示されるのは本物の発掘品や美術品ではなく、「超複製品(Super Replicas)」です。これは、ツタンカーメンの王墓に収められていた副葬品のうち約130点を精巧に再現したもので、これにより訪問者はまるで実物を目の前にしているかのような体験を得ることができます。

会場内では壁と床にプロジェクションマッピングを投影し、古代エジプトの創生から神々の変遷、ツタンカーメンの生涯をデジタルコンテンツとして提供します。これにより来場者は視覚、聴覚、体感の三方向からエジプト文明とツタンカーメンの人生を体感することができます。

加えて、「ワールド・スキャン・プロジェクト」の最新技術による高精細3Dスキャンデータから生成された映像コンテンツも展示され、これらのコンテンツはNFTアートとして来場者が持ち帰ることも可能です。

4:古代エジプトを全身で体験

展示はエントランスから始まり、訪問者はまるで古代エジプトへの旅に出かけたかのような体験を得ます。来場者はエジプトの風景をスキャニングしたデータを元に作られたプロジェクションコンテンツを体験し、ツタンカーメン発見の現場へタイムトラベルします。その他にも、ハワード・カーターとカーナヴォン卿が体験した“世紀の発見”を追体験できるインタラクティブな空間展示や、王墓の再現、ツタンカーメンの日常生活、一神教と多神教の間を揺れ動いた古代エジプトの神々の展示など、多彩な展示を行います。

5:古代エジプトの教科書展示

本展覧会と並行して、「神秘のミステリー!文明の謎に迫る 古代エジプトの教科書」展が開催されます。古代エジプトの歴史、ファラオや神々、ピラミッド、当時の生活などを多角的な視点から紹介します。

本展覧会は、2023年7月1日から11月20日まで開催され、主催は角川武蔵野ミュージアム(公益財団法人 角川文化振興財団)、監修は河江肖剰(名古屋大学高等研究院 准教授)

本庄早稲田の杜ミュージアム: エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−

Honjo Waseda Museum: Egyptian Culture Exhibition -Tracing the Waseda Unit's Research
本庄早稲田の杜ミュージアム: エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−

本展覧会、「エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−」は、早稲田大学が長年にわたってエジプトで行ってきた調査・研究の成果を公開するものです。本展覧会は、一般の人々の生活や信仰、死生観を理解するための新たな視点を提供し、古代エジプト文化の理解を深めることを目指しています。展覧会の期間は、2023年7月4日(火)から11月12日(日)までで、会場は早稲田大学の本庄早稲田の杜ミュージアムです。開館時間は午前9時から午後4時30分までとなっており、入館料は無料です。

1:早稲田大学のエジプト研究の歩み

1966年、早稲田大学の吉村作治氏(現、早稲田大学名誉教授・東日本国際大学総長)を学生隊長とする5人の学生と川村喜一早稲田大学講師(後の教授)が、ジェネラルサーベイ(General Survey、遺跡踏査)をエジプトで実施しました。これが早稲田大学のエジプト研究の始まりでした。その後、1971年に調査権を取得し、アジア人として初のエジプト発掘を行いました。その最初の発掘地となったのが、マルカタ南遺跡です。

2:展示のハイライト

本展覧会では、ジェネラルサーベイとマルカタ南遺跡の資料を展示します。これらは、早稲田大学本庄キャンパスに保管されていた貴重な資料で、古代エジプト文化をより深く理解するための重要な手がかりとなります。これらの資料からファラオだけでなく、一般の人々の生活や信仰、死生観を読み解くことが可能です。

3:特別講演会

さらに、本展覧会では特別講演会も開催されます。講演会のタイトルは「私のエジプト調査60年」で、講師はエジプト研究の第一人者である吉村作治氏(早稲田大学名誉教授・東日本国際大学総長)です。吉村氏の60年にわたるエジプト調査の歩みと、その間に得られた知見を直接聞くことができる貴重な機会となります。講演会は10月14日(土)午後2時から3時30分まで、早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンター(早稲田大学本庄キャンパス93号館)3階レクチャールーム1で開催され、受講料は無料です。

4:展覧会への期待

本展覧会「エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−」を通じて、古代エジプトの文化を深く理解し、その世界を体感することができます。長年の研究と調査を通じて得られた貴重な資料と、研究者自身の言葉による直接の説明を通じて、古代エジプトの人々の生活や信仰、死生観について理解を深めることができます。この機会を通じて、古代エジプト文化に対する興味と理解を深めることを願っています。

いわき市立美術館 : 古代エジプト美術館展

Iwaki City Museum of Art : Ancient Egypt Museum Exhibition
いわき市立美術館 : 古代エジプト美術館展

「古代エジプト美術館展」は、2023年6月24日(土)から8月20日(日)まで、いわき市立美術館で開催される展覧会です。この展覧会では、先王朝時代からローマ支配時代までを網羅した「古代エジプト美術館 渋谷」のコレクションを初めて館外で大規模に公開します。出品点数は約200件で、開館時間は09:30から17:00まで(最終入場16:30)、7月と8月の金曜日は20:00まで開館(最終入場19:30)です。

第一章:コレクションの起源と内容

「古代エジプト美術館 渋谷」のコレクションは、中近東の古美術の収集家で知られる石黒孝次郎氏など、著名な所蔵家たちの旧蔵品を基に構成されています。このコレクションは、国内において質と量の両面で第一級の内容を誇っており、それらがこの展覧会で一堂に会する機会となります。

第二章:展示のハイライト

本展では、ミイラやミイラマスク、木棺、神殿の柱、ツタンカーメンの指輪といった世界的に貴重な遺物から、当時の生活様式がわかる容器や装身具まで、様々な遺物を展示します。また、過去100年間学術的な調査がほとんど行われてこなかったメイドゥム(Maidum/Medum)・ピラミッドの最新調査(2022年)の様子も紹介します。これらを通じて、古代の巨大文明に幅広く触れる機会を提供します。

第三章:学術的な背景と協力関係

本展覧会の監修は、古代エジプト美術館 渋谷の主任学芸員であるロバート・スティーヴン・ビアンキ氏が務め、学術協力として近藤二郎氏(早稲田大学名誉教授)と大城道則氏(駒沢大学教授)が参加しています。また、企画協力としてアートプランニングレイ、協力として駒澤大学、FARO、関西大学が名を連ねています。さらに、エジプト大使館の後援と、西日本新聞イベントサービスの企画制作により、本展覧会は開催されています。

終章:展覧会への期待

「古代エジプト美術館展」は、古代エジプトの美術品と文化を一堂に観ることができる貴重な機会です。そのコレクションの質と範囲、そして未開のピラミッドの最新調査結果を含む学術的な内容は、訪れるすべての人々に深い洞察と新たな視点を提供します。この機会を通じて、古代エジプト文化について深く理解し、楽しんでいただければ幸いです。

総括:エジプト展覧会の多角的魅力

Ancient Egyptian view of life and death, mummies and ancient sacred script hieroglyphs are recommended.
古代エジプトの死生観とミイラや古代の神聖な文字ヒエログリフはおすすめ

このブログ記事で紹介した3つのエジプトに関する展覧会、すなわち、角川武蔵野ミュージアムの「体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」、本庄早稲田の杜ミュージアムの「エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−」、そしていわき市立美術館の「古代エジプト美術館展」は、それぞれが独特な視点から古代エジプトの豊かな歴史と文化を紐解いています。

「体感型古代エジプト展 ツタンカーメンの青春」は、特定の歴史的人物、ツタンカーメンの生涯を中心に据え、その人物像と歴史的背景を、来館者が直接体感する形で伝えています。展示はツタンカーメンの生涯を描いた美術作品や生活用品を通じて、訪問者は古代エジプトの王とその時代を直接体験することが可能となっています。

一方、「エジプト文化展−早大隊の調査から辿る−」では、早稲田大学の調査隊が収集したエジプトの遺物を通じて、古代エジプトの日常生活と文化の広範な全体像を描き出しています。これはより学術的な視点を提供し、エジプトの文化がどのように日常生活に反映され、発展していったかを探求する機会を提供します。

最後に、「古代エジプト美術館展」では、古代エジプト美術館 渋谷の質量ともに第一級のコレクションを中心に展示しています。そのコレクションは先王朝時代からローマ支配時代までのエジプト美術を網羅しており、特定の個々のコレクションアイテムを通じて、エジプト文化の幅広い側面と時代背景を理解することが可能となっています。

これら3つの展覧会は、個々の人物から日常生活、そして広範な美術コレクションまで、それぞれ異なる角度から古代エジプトの魅力を展示しています。これらは、古代エジプトを探求する様々な入り口を提供し、それぞれが独自の視点と手法で古代エジプトの深遠な魅力と洞察を来館者に提供します。それぞれの展覧会は、エジプト文化の異なる側面を照らし出し、その結果、訪問者は古代エジプトの理解を深めるとともに、その多様性と広範さを感じることができるでしょう。