大雨は、我々の身の回りだけでなく、価値ある文化遺産にも深刻な影響を及ぼします。特に、日本のように古い歴史を持ち、数多くの文化財が点在する地域では、その影響は計り知れません。今回、九州北部で発生した大雨は、その地域の豊かな歴史と文化を象徴する数々の文化財に被害をもたらしました。

この記事では、大雨によって被害を受けた福岡、佐賀、大分の3県の文化財の被害状況を詳細に調査し、その全容を明らかにします。古墳(Burial Mound)から重要文化財の庄屋住宅(Important Cultural Property, a traditional farmer’s house)まで、被害の範囲は幅広いです。また、被災地の現状について報告するとともに、これからの課題と対策についても考察します。これは、私たちが文化財を適切に管理し、将来の世代へと引き継いでいくために不可欠な取り組みです。

日本が持つ豊かな歴史と文化の価値を理解し、それを保護・保存するための対策を探る一助になれば幸いです。

古墳群の被害状況


Damage such as flooding and collapses were confirmed at several ancient tombs and a village headman's house, a nationally important cultural property.
複数の古墳や国の重要文化財の庄屋住宅などで浸水や崩落といった被害が確認された

福岡県にある2つの重要な古墳、仙道古墳と塚花塚古墳、重定古墳が大雨による浸水の被害を受けました。これらの古墳は九州地方で特に重要な歴史的価値を持つ遺跡とされ、それぞれ独特な特徴を有しています。

仙道古墳は、福岡県筑前町に位置し、直径49メートル、墳丘径35メートル、高さは復元前2.5メートルとされる6世紀の2段築成(double-terraced)の円墳(Circular Tumulus)です。その内部主体は、複室の横穴式石室で、残存している石室の全面に赤・緑色で〇・◎・△の幾何学文(geometric pattern)の装飾(decoration)が施されています。さらに、墳丘や周溝からは、盾持武人埴輪などの形象埴輪や円筒埴輪・朝顔形円筒埴輪・柵形円筒埴輪が多量に出土しました。この古墳では、大雨により石室内部の壁や床から水が湧き出し、墳丘にはひび割れが生じているとの報告があります。

一方、福岡県うきは市の塚花塚古墳と重定古墳は、それぞれ円墳と前方後円墳(Keyhole-shaped Tumulus)として知られ、それぞれ装飾壁画が存在する石室を有します。これらの古墳もまた、浸水による被害を受け、装飾壁画への影響が懸念されています。

これらの被害は、これら古墳の保存と修復が急務であることを示しています。また、それぞれの古墳の特性とその価値を理解することが、適切な修復計画を立てるための第一歩となります。

国重要文化財の被害状況



The Naganuma Family Residence (National Important Cultural Property), a headman's residence built in the Edo period, suffered a partial collapse of the adjacent hill at the rear of the house, and the foundation was covered with earth and sand.
江戸時代に建てられた庄屋住宅の永沼家住宅(国重文)では、隣接する裏山の一部が崩れた

この大雨では、福岡県と大分県に位置する重要文化財が被害を受けました。これらには江戸時代の庄屋住宅と現存する石造りアーチ橋で国内最長とされる橋が含まれます。

福岡県みやこ町にある永沼家住宅は、江戸時代に建てられた庄屋の住宅で、その建築様式と保存状態から国の重要文化財(Important Cultural Property)に指定されています。永沼家住宅は、隣接する裏山の一部が崩れ、押し寄せた土砂が基礎部を覆い、建築物自体に損傷を与えました。この貴重な歴史的建築物の保存と修復は、地域文化財の保全にとって重要な課題となります。

一方、大分県中津市にある耶馬渓橋は、石造りアーチ橋として国内で最も長い構造物で、1923年に竣工されました。この橋は石造アーチ橋としては日本唯一の8連構造を持ち、日本百名橋の一つにも選ばれています。また、地元ではその特異な石積みの技法から「オランダ橋」という愛称でも親しまれています。この耶馬渓橋で、大雨により欄干の一部が流失しました。この橋の損傷は、地域の景観だけでなく、歴史的建造物の保全という観点からも重要な問題となります。

これらの重要文化財が被った被害は、災害に対する文化財の脆弱性を浮き彫りにし、それぞれの特性と価値を理解した上での修復計画の必要性を強く示しています。

現地対応と将来の課題

A number of cultural properties damaged by heavy rains in northern Kyushu since the end of June were identified.
6月末からの九州北部の大雨で被害を受けた文化財が多数確認された

被害の全容把握を急ぐ中、地元自治体と文化庁は、国指定史跡や国の重要文化財の保全活動に全力を尽くしています。古墳や住宅、橋といった異なる特性を持つ各文化財に対しては、それぞれ専門的知識を活用し、被害の詳細な調査と修復計画の立案を行うことが求められます。

古墳の場合、浸水やひび割れなどによる内部構造の安定性への影響を確認するため、考古学者や土木工学者が共同で調査を進めます。また、装飾壁画の保全も重要な課題で、アートコンサーバトリー(Art Conservatory)の専門家が水損による色素の劣化や剥がれ等の問題を評価し、修復方法を提案します。

一方、被災した重要文化財の建物や橋の修復には、建築保存技術者や構造工学者の専門的な知見が必要です。永沼家住宅や耶馬渓橋の修復に当たっては、オリジナルの素材や技術を尊重しつつ、被害の度合いに応じた適切な修復法を選定し、適用します。

さらに、これらの対応を通じて明らかになった重要な課題は、文化財の防災計画の確立です。歴史的価値を持つこれらの文化財は、変わりゆく気候条件や自然災害に対する脆弱性を持っています。そのため、将来的には各地域で文化財の防災計画を策定し、適切な保全策を実行に移すことが必要となります。災害はいつ起きるかわかりません。≪防災士監修 基本30点防災セット(1人用)≫【ピースアップ】や、防災士厳選の防災グッズ39点セットを用意して、常日頃から災害に備える必要があります。

これら一連の課題解決の過程は、自然災害が我々の文化遺産に与える影響を理解し、その保護と保存に対する重要な学びを提供します。