梅雨の季節がやってきました。窓の外に降り注ぐ雨、湿度が高く不快感を感じる日々が続くかと思います。しかし、この時期こそが、都内の博物館で贅沢に時間を過ごす絶好の機会ではないでしょうか。今回は雨でも楽しめる、利便性が高い都内の博物館展示を特集したブログ記事をお届けします。

この記事では、明治大学博物館、東京国立博物館、サントリー美術館、松岡美術館、五島美術館、大田区立郷土博物館、そして日本銀行金融研究所貨幣博物館の各展示について、その魅力を詳細に紹介します。

古代日本の考古学的な視点から「東国の古墳文化の実像を求めて-大塚初重と明大考古学-」展示、遥か海を渡った古代メキシコの文化を追求する「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」展示、吹きガラスの美しい形状とその技術を体感する「展覧会 吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」展示、ペルシアの美術への憧れを紹介する「憧憬のペルシア」展示、日本の古鏡の世界を探索する「[館蔵]古鏡展 めでたい鏡の世界」展示、そして考古学者、森本六爾の野帳から再発見された「上沼部の横穴式石室」展示、中国貨幣の歴史とその影響を探る「中国貨幣の世界-開元通宝までの道-」展示と、様々なテーマと視点から、博物館でしか体験できない知識と感動をご紹介します。

それぞれの展示は、そのテーマに対する深い理解と共に、人類の歴史、文化、技術の進化を感じさせるものとなっています。鮮やかな色彩から繊細な技術、遥か昔の文化まで、これらの展示を通じて、あなた自身の知識と視野を広げ、豊かな体験をお楽しみいただけることでしょう。

私たちの旅はここから始まります。梅雨の季節、雨音をバックに博物館の静寂と深淵を探求する時間は、あなたを待っています。各展示の詳細な解説と共に、私たちは一緒にこの豊かな知の海を航海します。どうぞ、心地よい一時をお過ごしください。

明治大学博物館:東国の古墳文化の実像を求めて-大塚初重と明大考古学-

明治大学博物館:東国の古墳文化の実像を求めて-大塚初重と明大考古学-
明治大学博物館:東国の古墳文化の実像を求めて-大塚初重と明大考古学-


明治大学博物館では、特別企画展「東国の古墳文化の実像を求めて-大塚初重と明大考古学-」を開催しています。この展覧会は、明治大学考古学博物館の初代館長であった故大塚初重名誉教授の遺志を継ぐもので、戦後の復員から考古学に取り組み始めた大塚先生の足跡をたどります。その始まりは静岡県登呂遺跡の調査に参加したことでした。その後、1950年に創設された考古学専攻とともに、日本全国の遺跡の発掘調査と研究を進めました。

この展覧会のハイライトは、大塚先生が長野県大室古墳群や茨城県虎塚古墳など、東日本の古墳文化を中心に調査・研究した成果を体験することです。数多くの出土品や調査記録、関連資料から構成されており、大塚先生がどのようにして東国の古墳文化の実像を明らかにしてきたのか、そしてその過程でどのように考古学を市民に普及させてきたのかを理解することができます。

主催は明治大学博物館で、共催は文学部史学地理学科考古学専攻です。会期は2023年5月27日(土)から8月7日(月)までで、開室時間は平日が10:00~17:00(最終入室16:30)、土曜日が10:00~16:00(最終入室15:30)です。ただし、日曜日と8月5日は休館日となっています。

展示資料には、大塚初重先生の旧蔵品から発掘品、調査記録、さらには国指定重要文化財まで含まれています。また、大塚先生最終講義のダイジェスト動画上映や虎塚古墳石室実物大模型も見どころの一つです。

さらに、特別イベントとしてギャラリートークと虎塚古墳石室ワークショップも開催されます。30分間の展示解説であるギャラリートークは、定員15名で各回とも予約が必要です。また、実物大模型を使用した虎塚古墳石室ワークショップでは、古墳の石室内部を擬似体験することができます。

入場料は無料で、考古学に興味のある方はぜひこの機会にご覧ください。

東京国立博物館:古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

東京国立博物館:古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン
東京国立博物館:古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン

東京国立博物館では、2023年6月16日から9月3日までの期間、特別展「古代メキシコ -マヤ、アステカ、テオティワカン」を開催します。本展は、メキシコの多様な環境に適応しながら、3千年以上にわたり発展した独自の文明を紹介します。この展覧会は、メキシコ国内の主要博物館から厳選した古代メキシコの至宝の数々を、近年の発掘調査の成果を交えてご紹介します。古代メキシコの普遍的な神と自然への祈り、そして多様な環境から生み出された独自の世界観と造形美を通して、その奥深さと魅力に迫ります。

展覧会は4つの章に分かれており、各章はそれぞれ異なる文明またはトピックに焦点を当てています。

第1章「古代メキシコへのいざない」では、メソアメリカ文明のルーツであるオルメカ文明の象徴的な一作品を紹介します。トウモロコシ、天体と暦、球技、人身供犠という4つのキーワードを解説し、「マヤ」「アステカ」「テオティワカン」のそれぞれの文明に通底するテーマを明らかにします。

第2章「テオティワカン 神々の都」では、メキシコ中央高原にある都市遺跡、テオティワカンに注目します。この章では、近年の発掘調査や研究成果をもとに、この巨大な計画都市の全貌を明らかにします。

第3章「マヤ 都市国家の興亡」では、前1200年頃から後16世紀までメソアメリカ一帯で栄えたマヤ文明に焦点を当てます。特に王朝美術の傑作と名高い「赤の女王のマスク」をはじめとする王妃の墓の出土品を本邦初公開します。

第4章「アステカ テノチティトランの大神殿」では、14世紀から16世紀にメキシコ中央部に築かれたアステカ文明を取り上げます。本章ではアステカの優れた彫刻作品とともに、近年テンプロ・マヨールから発見された金製品の数々を紹介します。

展覧会は東京国立博物館の平成館で開催されます。開館時間は通常は9時30分から17時00分ですが、土曜日は19時00分まで、6月30日から7月2日、7月7日から9日の期間は20時00分まで開館しています。なお、入館は各閉館時間の30分前までとなっています。休館日は月曜日と7月18日ですが、7月17日と8月14日は開館しています。

この展覧会は、古代メキシコ文明の深遠な魅力と美しさを伝えるための重要な機会であり、観覧者はこれらの貴重な遺産を通じてメキシコの歴史と文化をより深く理解することができます。

サントリー美術館:吹きガラス 妙なるかたち、技の妙

サントリー美術館:吹きガラス 妙なるかたち、技の妙
サントリー美術館:吹きガラス 妙なるかたち、技の妙

サントリー美術館では、2023年4月22日から6月25日まで、展覧会「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」を開催しています。吹きガラスは、熱く溶けたガラスに息を吹き込んで器を作る技術で、ガラスの状態を見極めて素早く形成する方法です。この技法はガラスという素材の性質を最大限に活用し、ガラスならではの形状を生み出します。

本展覧会では、紀元前1世紀に始まった吹きガラスの技法を通じて、ガラス容器の生産や流通がどのように変化したかを紹介します。さらに、古代から現代まで、東西の吹きガラス作品の特色を展示し、作り手の技に焦点を当てます。現代のガラス作家や研究者とのコラボレーションによる研究成果も紹介し、かつての名もなき吹きガラス職人たちの創造性を探ります。

展覧会は以下の5章構成で進行します。

第Ⅰ章「自然な曲線美―古代ローマの吹きガラス」では、吹きガラスが紀元前1世紀中頃にローマ帝国下の東地中海沿岸域で始まったことを紹介します。この時期の吹きガラスは自然な曲線美をもつ形状と、飴細工のような装飾が特徴で、これらのローマ時代の作品を一部紹介します。

第Ⅱ章「ホットワークの魔法―ヨーロッパの吹きガラス」では、15~17世紀のイタリア、ヴェネチアで開発されたホットワークと呼ばれる熱いガラスを成形・加工する技法を紹介します。特に、ヴェネチアの吹きガラスは、その美しい素材と優美な形、そしてホットワークによる繊細な装飾でヨーロッパのガラス市場を独占しました。

第Ⅲ章「制約がもたらす情趣―東アジアの吹きガラス」では、5世紀頃に始まったとされる東アジアの吹きガラスを取り上げます。この章では、吹きガラスの技法が東アジアに伝わった経緯とその進化を探ります。古代の中国や朝鮮半島、そして日本のガラス作品を通じて、東アジア独自の美意識と精神性を紹介します。

第Ⅳ章「新世界の出会いと交流―アメリカの吹きガラス」では、19世紀から20世紀初頭にかけて、吹きガラス技法がアメリカでどのように発展したかを追います。アメリカ大陸でのガラス制作は、ヨーロッパからの移民がもたらした伝統的な技法と新世界の自由な精神が融合し、新たな可能性を生み出しました。ここでは、特にルイ・コンフォート・ティファニーやデール・チフーリーなどの著名なアメリカのガラスアーティストの作品を展示します。

最後に、第Ⅴ章「現代の表現と可能性―現代の吹きガラス」では、現代における吹きガラスの技法と芸術的表現を探ります。新たな技法や表現を追求し続ける現代のガラス作家たちの作品を通じて、吹きガラスが持つ無限の可能性を見せます。

この展覧会では、吹きガラスの技法が時代と地域を越えてどのように発展し、多様な表現を生み出してきたかを体感できます。また、ガラスの素材感、透明感、そして優雅な曲線美を存分に楽しむことができます。

松岡美術館:憧憬のペルシア

憧憬のペルシアと題されたこの展覧会は、2023年2月21日から6月4日まで松岡美術館の展示室4で開催されます。この展覧会では、中近東のイスラーム時代に制作された陶器、通称ペルシア陶器が一挙に公開されます。

この展覧会の起源は、1972年に初代館長が海外オークションに参加し、その帰途にイランのテヘランに立ち寄ったときまで遡ります。その際に9世紀から13世紀のペルシア陶器を一括して取得したことが始まりで、今回、その一部が初公開となります。

展示される約50点の作品は、豊かな色彩と細やかな技法が詰まった、悠久の時間を物語るエキゾチックな世界を表現しています。貴人や動物が描かれた鉢、独特な色彩のターコイズブルーの水差し、そして魅力的な光沢を放つラスター彩の壺などが一部です。

さらに詳しく見ていくと、彩画陶器、ミナイ手陶器、ラスター彩陶器、青釉陶器という4つのカテゴリーに分けることができます。それぞれが異なる時代や地域、そして異なる技法や美意識を反映しています。

彩画陶器は9-10世紀にイラン東北部やトランスオクシアナで作られたもので、深鉢が特徴です。黄色や白を基調に人物、動物、文字が描かれています。

ミナイ手陶器はセルジューク朝期を代表する高級陶器で、その名前はペルシア語でエナメルを意味する「ミナイ」に由来します。白地または青地に多彩な上絵付けが施され、文様は物語や騎馬人物などが描かれています。この緻密な文様描写と端正な器形が特徴的です。

ラスター彩陶器もまた、セルジューク朝期を代表する高級陶器で、金属的な光沢を持つ表面から「輝き」を意味するラスター彩と名付けられています。初めはガラスの装飾に使われていたこの技法が9世紀にメソポタミアで陶器に応用され、12世紀以降は中部イランのカーシャーンなどで盛んに生産されました。

青釉陶器はセルジューク朝期に、複数の陶土を混ぜた複合陶土が用いられるようになった結果、これまで剥がれやすかったアルカリ釉が主流となり、ターコイズブルーの青釉が流行しました。多彩な装飾技法や複雑な形の器物が作られています。

さらに、この展覧会では古代ガラスも特別展示されます。ガラスは陶器よりも古く、紀元前1世紀頃から吹きガラスという技法が始まりました。この技法は生産を大幅に増大させ、ローマ領だったエジプトにも広がりました。今回の展示では、2世紀から12世紀頃のガラス器を5点展示します。

このように、「憧憬のペルシア」展では、ペルシア陶器の美しさとその歴史、技術的な進化を感じることができます。イスラームの世界がもたらした独特な芸術と歴史を堪能していただきたく、皆様のご来場を心よりお待ちしております。

五島美術館:古鏡展 めでたい鏡

五島美術館では、古代中国の吉祥の象徴としての鏡、日本古墳時代の権力の象徴としての鏡、近世以降の文人の愛玩品としての鏡の変遷を展示する「[館蔵]古鏡展 めでたい鏡」を開催します。美術館のコレクションから、中国と古墳時代の古鏡約60面を展示するほか、特別展示として、大東急記念文庫収蔵の著名な人物による書き入れ本や自筆資料も公開します。

館の開館時間は午前10時から午後5時までで、入館受付は午後4時30分までとなっています。休館日は毎月月曜日、ただし7月17日は開館します。また、7月18日は休館となります。入館料は一般1100円、高・大学生800円、中学生以下は無料です。障害者手帳をお持ちの方、および介助者の方1名は200円引きとなります。展覧会をご覧にならない場合の庭園入園のみの料金は1人300円(中学生以下無料)となっています。

また、展示に関連して、学芸員によるスライドを交えた展示作品に関わる解説のギャラリートークを実施します。こちらは事前予約制となっており、予約は各講演日の前日(休館日の場合はその前日)午後5時までに電話にて行うことができます。各日の定員は100名で、満員になり次第締切となります。また、五島美術館別館講堂でのクァルテット・リゾナンツァ弦楽四重奏のミュージアム・コンサートも開催されます。こちらも事前予約が必要で、全席自由席4500円となっています。

展示品としては、重要美術品に認定されている「銘帯鏡 居攝元年銘」や「[貼銀鍍金]双鳳狻猊天馬紋菱花形鏡」など、さらに、重要文化財に認定されている「[鍍金]細線式獣帯鏡(同型鏡)」や「画紋帯仏獣鏡(同型鏡)」、「迦陵頻伽紋葵花形鏡」などがあります。また、宮崎県百塚原古墳群出土の「国宝 金銅馬具類」も展示されます。

なお、館内整備のため、2022年7月31日から8月25日まで休館します。皆様のご来館を心よりお待ちしております。

大田区立郷土博物館:再発見!上沼部の横穴式石室~考古学者、森本六爾の野帳から~

大田区立郷土博物館では、「再発見!上沼部の横穴式石室~考古学者、森本六爾の野帳から~」という特集展示を開催しています。大田区田園調布から世田谷区野毛にかけての多摩川左岸の台地上に広がる荏原台古墳群の一角で、上沼部と呼ばれた地域に分布する多数の古墳がこの展示の主題です。

1926年に、若き考古学者森本六爾と彼の仲間たちがこの地を訪れ、3基の横穴式石室を調査しました。森本はその調査結果を野帳に記し、図面や写真を残しました。この展示では、その森本の野帳に記された精細な図面、調査時に撮影されたガラス乾板写真、そしてそれらをもとに再現した模型などを通じて、上沼部の横穴式石室の実態を再現し、明らかにします。

この特集展示は、令和5年4月20日から7月23日まで開催されますが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止により中止・変更となる可能性もあります。開館時間は午前9時から午後5時までで、展示は郷土博物館の1階特集展示コーナーにて行われます。入館料は無料です。休館日は月曜日ですが、月曜日が祝日の場合は開館します。

考古学の世界に足を踏み入れ、森本六爾の野帳から繋がる過去の痕跡を追いながら、上沼部の横穴式石室の魅力と歴史を体感していただける、この特集展示をぜひお楽しみください。

日本銀行金融研究所貨幣博物館:中国貨幣の世界-開元通宝までの道-

日本銀行金融研究所貨幣博物館は、「中国貨幣の世界-開元通宝までの道-」というテーマ展を開催しています。この展示は、2023年4月18日から7月9日までの間に訪れることができます。

約1300年前の日本で作られた貨幣「和同開珎」は、7世紀から10世紀にかけて中国の唐で使われた貨幣「開元通宝」を模範にして作られました。しかし、中国の金属貨幣の歴史はこれよりも遥か昔、紀元前8世紀頃まで遡ります。

古代中国では、数多くの国や王朝が独自の貨幣を制作しました。それぞれの貨幣は形状や銭銘、つまり貨幣に刻印された文字が異なる多種多様なもので、その多様性と豊かな歴史は本展示の一部を形成しています。

このテーマ展では、中国最初の金属貨幣が作られたとされる春秋戦国時代(紀元前8世紀から前3世紀)から唐時代までの貨幣が紹介されます。ここでは、「開元通宝」がつくられ、それが後の「和同開珎」へと繋がる道のりを辿ることができます。

古代中国の貨幣の世界には深い歴史と物語性があります。金属貨幣の誕生から、「開元通宝」の制作、そして日本の「和同開珎」へとつながる貨幣の変遷を紐解きながら、中国貨幣の世界を一緒に探索し、その豊かな歴史と文化をお楽しみいただけます。