愛媛県は古代から近世まで、豊かな歴史の足跡が今も数多く残る地域です。県内には実に4,322箇所もの「周知の埋蔵文化財包蔵地」(遺跡の存在が確認されている場所)が存在しており、歴史ファンにとって格好の探訪地となっています。今回は、愛媛県を訪れる際に特に見逃せない史跡や埋蔵文化財を、地域ごとにご紹介します。遺跡や発掘調査の成果から見える愛媛の歴史に、思いを馳せる旅に出かけましょう。

松山エリア:伊予の国の中心地に残る歴史の宝庫

読み手:松山市教育委員会
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松山城-現存12天守のひとつ

松山市のシンボルとして君臨する松山城は、日本に12か所しか残っていない「現存12天守」のひとつで、江戸時代以前に建造された天守を有する貴重な城郭です。ロープウェイかリフトで「長者ヶ平(ちょうじゃがなる)」まで上り、そこから徒歩で天守へ向かいます。

天守からの眺めは絶景で、重要文化財に指定されている歴史的建造物や石垣など、見どころがたくさんあります。城内では発掘調査も継続的に行われており、本丸跡の調査では江戸時代の建物配置などが明らかになってきています。

「伊予の小京都」とも呼ばれる松山の街並みを一望できる天守閣からの景色は、訪れる価値があります。城下町の雰囲気も残る松山市街を散策するのも楽しいでしょう。

著:日下部 正盛
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文京遺跡-弥生時代の「都市」の痕跡

愛媛大学城北キャンパスに広がる文京遺跡は、弥生時代中頃(1世紀)から古墳時代にかけての大規模な集落跡です。特筆すべきは、東西8.5~9m×南北9.5m以上、柱直径40cmという超大型建物群が発見されたことで、これは『魏志倭人伝』に記載された「宮室」に相当する可能性があります。

100軒を超す住居跡や貯蔵用の穴蔵、高床式の倉庫が幾重にも重なり合った状態で見つかっており、「弥生都市」とも呼べる大集落の跡として全国的にも注目される貴重な遺跡です。

愛媛大学のキャンパス内にあるため、一般公開の機会は限られていますが、松山市考古館などで関連資料が展示されていることもあります。

教学社
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来住廃寺-古代寺院の遺構

松山市の来住廃寺は、発掘調査によって飛鳥時代から平安時代にかけての古代寺院の遺構が確認されている重要な史跡です。金堂基壇が現存しており、調査では創建に先行する飛鳥時代の瓦や白鳳期の瓦などが出土しています。

さらに中世の溝も確認されており、この地域の丘陵部における土地利用の変遷を示す重要な資料となっています。古代から中世にかけての歴史の重層性を感じられる場所です。

松山市立埋蔵文化財センター・松山市考古館

松山総合公園内にある松山市立埋蔵文化財センター・松山市考古館は、市内の遺跡情報の拠点として、発掘調査・研究及び資料の整理・保存・収蔵などを行っている施設です。

常設展示室では市内から出土した旧石器時代から江戸時代までの資料約600点を19のコーナーに分けて展示しており、特別展示室では企画展や特別展も開催されています。

また、エントランスホールでは古代を身近に感じてもらうための体験コーナーも設けられているので、家族連れにもおすすめです。毎年10月~11月には「いにしへのえひめ」という特別展も開催され、最新の発掘調査成果を見ることができます。

姫原遺跡-弥生時代から中世までの集落跡

松山市姫原一丁目にある姫原遺跡は、弥生時代中期から中世までの遺構や遺物が発見された遺跡です。特に弥生時代の竪穴建物や溝、土坑が数多く見つかり、大量の土器や石器が出土しています。

分銅形土製品や紡錘車など多数の土製品は、この地が祭事を担う重要な場所であった可能性を示しています。また、全国的にも出土例の極めて少ない手焙り形土器がほぼ完全な状態で出土したことも特筆されます。

古墳時代から古代にかけての建物跡や中世の水田址も発見されており、松山地域における人々の暮らしの変遷を知る上で貴重な遺跡です。

編集:菅原 康夫, 編集:梅木 謙一
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新居浜・今治エリア:鉱山と古墳の歴史を訪ねて

別子銅山-「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる産業遺産

著:馬場孝三
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新居浜市にある別子銅山は、1690年から282年間にわたって70万トンもの銅を産出した日本有数の銅山跡です。現在は廃坑となっていますが、山奥に残された遺構群は「東洋のマチュピチュ」とも呼ばれ、多くの観光客を引きつけています。

山の細道を上がった先に突如として現れる広大な遺跡群は圧巻で、当時の人々がこのような山奥に銅山を発見し、大規模な施設を建設した技術力と労力に感嘆せざるを得ません。

道が狭く山奥にあるため、アクセスには注意が必要ですが、その分、訪れた時の感動は大きいでしょう。近代日本の産業化を支えた重要な産業遺産として、早期の遺産登録と保全が望まれています。

新居浜市の埋蔵文化財包蔵地

新居浜市内には44箇所の周知の埋蔵文化財包蔵地があり、弥生時代から戦国時代までの多様な遺跡が確認されています。特に金子山古墳は県指定考古資料かつ市指定史跡となっている重要な古墳で、石室からは埴輪、鏡、銅器、鉄器、玉類などが出土しています。

また、河内寺遺跡(市指定史跡)、小山古墳(市指定史跡)、桧端遺跡(市指定史跡)など、市指定の史跡も複数存在し、新居浜地域の古代から中世にかけての歴史を物語っています。

乗禅寺石塔-鎌倉・室町期の石造物

今治市にある乗禅寺の石塔群は、鎌倉後期から室町前期にかけての石造五輪塔や石造宝篋印塔など、合計11基の石造物が重要文化財に指定されています。日本の中世における石造技術と仏教美術の融合を示す貴重な文化財です。

編集:四国中世史研究会, 編集:戦国史研究会
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西条・その他のエリア:古代山城と最新発掘成果

国史跡 永納山城跡-古代山城の遺構

西条市にある永納山城跡は国指定史跡で、古代の山城跡として貴重な遺跡です。発掘調査では多数のピット(柱穴)や須恵器を含む遺構が確認されており、古代山城の内部施設の実態解明につながる重要な発見がなされています。

全国の古代山城でも内部施設の実態はほとんど解明されておらず、今後の調査の進展が期待される遺跡です。

梓書院
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宮之前遺跡-金属製舎利容器の発見

西条市の宮之前遺跡では、約800年前の金属製の舎利容器が発見されました。舎利とは仏教を開いた釈迦の遺骨のことで、出土した容器には遺骨に見立てた青銅の粒が3~4粒納められていたとのことです。

全体で2.5cmととても小さな容器ながら、愛媛県内では3例目の発見となる貴重な遺物で、松山市考古館で開催される「いにしへのえひめ2024」展(2024年10月1日~11月24日)で見ることができます。

愛媛県の史跡巡りプラン:効率的な回り方

編集:JTBパブリッシング
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愛媛県は東西に長いため、地域ごとに分けて訪問することをお勧めします。

松山エリア1日コース

  1. 午前:松山城(ロープウェイで登城)
  2. 昼食:松山城周辺のレストラン
  3. 午後:松山市考古館と坂の上の雲ミュージアム

新居浜・西条エリア1日コース

  1. 午前:別子銅山(早めに出発すると良い)
  2. 昼食:新居浜市内
  3. 午後:金子山古墳と永納山城跡

各地域で発掘調査の現地説明会が開催される場合もあるので、事前に松山市や愛媛県の文化財関連ホームページで情報を確認しておくと良いでしょう。

まとめ:愛媛県の埋蔵文化財が語る豊かな歴史

Be sure to visit Ehime Prefecture in search of the romance of history.
ぜひ、歴史のロマンを求めて愛媛県を訪れてみてください。

愛媛県は弥生時代から近代まで、さまざまな時代の遺跡や史跡が重層的に残る地域です。特に弥生時代の文京遺跡や古代の来住廃寺、中世の城郭、そして近代産業遺産の別子銅山まで、多様な歴史の足跡をたどることができます。

松山市考古館や愛媛県埋蔵文化財調査センターなど、埋蔵文化財の調査・研究・展示施設も充実しており、最新の発掘調査成果を知ることもできます。

愛媛県内には4,322箇所もの周知の埋蔵文化財包蔵地があり、紹介しきれないほど多くの遺跡がありますが、今回紹介した主要な史跡を中心に訪れることで、愛媛の歴史と文化の深さを体感することができるでしょう。

歴史好きな方はもちろん、歴史に詳しくない方でも、愛媛県の遺跡巡りは新たな発見と感動に満ちた旅となるはずです。