佐賀県には、長い歴史と豊かな自然環境に育まれた独自の食文化が息づいています。

本記事では、佐賀県を代表する三大伝統食──ふなんこぐい（鮒の昆布巻き）、嬉野温泉湯どうふ、須古寿し──を、歴史、特徴、文化的意義とともに深掘りしてご紹介します。

佐賀の味わい深い郷土料理に触れ、地域の魅力を再発見してみませんか？

ふなんこぐい（鮒の昆布巻き）｜保存食と神事をつなぐ味

歴史と由来

ふなんこぐいは、佐賀県鹿島市に伝わる伝統的な保存食です。生きた鮒を昆布で巻き、大根やレンコンと共に10時間以上じっくり煮込むこの料理は、寒い冬を越えるための知恵でもありました。

名前の由来には、「鮒の煮こごり」が訛った説や、中国福建省の魚料理「焙魚（コグイ）」に由来する説など、複数の説があります。

300年以上続く「ふな市」とも深い関わりがあります。毎年1月19日、鹿島市で行われるこの伝統行事では、ふなんこぐいが恵比須様へのお供えとして振る舞われます。

特徴と調理法

• 鮒を丁寧に昆布で巻き、かんぴょうで結ぶ
• 赤味噌をこした「すめ汁」でじっくり煮込む
• 骨まで柔らかく、旨味が野菜にも染み渡る

時間と手間をかけたこの料理は、単なる保存食を超えた、佐賀の冬の味覚を代表する存在です。

嬉野温泉湯どうふ｜美肌の湯が生んだ奇跡のとろける豆腐

起源と文化

嬉野温泉は奈良時代から知られる名湯で、「万人の病を癒す湯」と称えられてきました。

この温泉の成分を活かして生まれたのが、嬉野温泉湯どうふ。初代「宗庵よこ長」が考案し、今では嬉野の宿や食堂の名物料理となっています。

嬉野温泉湯どうふの名称は嬉野市によって正式に商標登録され、全国にその名を知られる存在となりました。

驚きの特徴と美味しい食べ方

• 温泉成分の働きで、豆腐がとろけるような食感に
• 煮汁が白く濁り、まろやかな風味を楽しめる
• 専用の「湯どうふ用豆腐」を使用することで、絶妙な溶け具合に

溶けた豆腐をポン酢やごまだれで味わい、最後は雑炊にして楽しむのが嬉野流です。

口の中でとろける食感は、ここでしか体験できない極上の味わいです。

須古寿し｜米文化と感謝の心を象徴する押し寿司

歴史的背景

須古寿しは、佐賀県白石町須古地区で500年以上にわたって受け継がれてきた伝統の押し寿司です。

地元領主・平井氏への感謝の意を込めて作られたことが始まりとされ、豊かな稲作文化を象徴する料理でもあります。

須古地区は米どころとして知られ、その品質の高さから「すし米」「酒造米」としても全国に名を馳せました。

特徴と作り方

• もち米を混ぜたご飯を昆布と炊き、酢飯にする
• 木箱に寿司飯を敷き詰め、区切りを入れて具材を盛り付ける
• 卵焼き、シイタケ、奈良漬、ムツゴロウの蒲焼など多彩な具材を使用

田んぼを模した寿司の見た目は、田園風景をイメージさせる美しい芸術品。

郷土の豊かさと自然への感謝の気持ちが一皿に込められています。

まとめ｜佐賀三大伝統食に息づく誇りと未来

ふなんこぐい、嬉野温泉湯どうふ、須古寿し。

これら三大伝統食は、単なる料理ではなく、佐賀県民の誇りであり、自然と人間の共生が生んだ文化の結晶です。

地域の風土、歴史、生活に根ざしたこれらの食文化は、今も人々の心と絆を結び続けています。

そして、観光やブランド化を通じて、現代においても新たな価値を生み出し続けています。

佐賀県の伝統食に触れることで、日本の食文化の豊かさ、奥深さを改めて実感できるはずです。

次の旅先に、ぜひ佐賀県を加えてみませんか？