考古学は時の流れを超えた文化や歴史の謎を解明する魅力的な分野です。しかし、近年では、これだけでなく、先端技術や異なる研究分野との連携を通じて、新しい視点や解釈を追求する動きが活発になっています。そんな中、岡山大学とトリノ大学を筆頭に、国際的な共同研究が進行中。その名も「Beyond Archaeology(考古学を超えて)」。今回は、この興味深いプロジェクトの概要と、最新の研究成果展の様子をお伝えします。日本の古墳時代の秘密や、先端技術がもたらす新しいストーリーテリングの世界へ、一緒に足を踏み入れてみませんか?

国際共同研究プロジェクト「Beyond Archaeology」の概要

BE-ARCHAEO is an international joint research project with six European research institutes and companies, with Tohoku University as the main partner institution.
BE-ARCHAEOは岡山大学をメインのパートナー機関として実施する文理連携型国際共同研究プロジェクト

岡山大学とトリノ大学、その他の欧州の研究機関や企業との間で行われている「Beyond Archaeology(考古学を超えて)」は、日本と欧州の考古学者や考古科学(Archaeometry)を専門とするさまざまな分野の研究者との協力により推進されています。プロジェクトの目的は、古墳時代を中心に日本考古学に関する先進的な研究を進め、新しいストーリーテリングを提供することです。

国際共同研究プロジェクト 「Beyond Archaeology(考古学を超えて)」

Beyond Archaeology (BEyond ARCHAEOlogy)」は、東洋と西洋を科学、実地考古学、そしてインタラクティブな博物館体験を通じて結びつける先進的な取り組みを特徴としています。このプロジェクトは欧州の6つの研究機関および企業が、岡山大学を主要なパートナーとして推進する文理連携型の国際共同研究です。文明動態学研究所の松本直子所長を中心に、文学および理学の両分野からの研究者が参加しています。

この共同研究は、欧州の「ホライズン2020プログラム (Horizon 2020 Program)」の一部として、特に「RISEプログラム (RISE Program)」のもとで、トリノ大学を代表とする6つの研究機関・企業が、岡山大学を主要な協力機関として2018年に申請し、採択されました。このプロジェクトは2019年から2022年までの間に実施されます。

プロジェクトの中心的な研究テーマは、古墳時代の吉備を中心にした日本列島の古代国家形成期を取り上げ、国際的・学際的な交流を通じた先端技術と知識に基づく新しい歴史視点や専門技術の開発を目的としています。具体的には、ヨーロッパの考古学者や科学者たちは、岡山大学考古学研究室が実施する鳶尾塚古墳(岡山県総社市)の発掘調査に参加。この発掘から得られる資料は、岡山大学の理系研究者との協力のもとで分析され、古墳時代の祭祀、技術、地域間の交流、そして社会変化を深く理解する手助けとなります。

さらに、このプロジェクトで得られる新しい知識は、最新の情報科学とデジタル技術を活用したインタラクティブな展示手法を用いて、2022年度に日本およびイタリアの博物館で一般に公開される予定です。

この国際共同研究の果たす役割は、考古学の発展を促進するだけでなく、文化財専門家の育成、考古学と科学の新しい統合方法、学際的データの保存・活用、そして市民への新しい知識の伝達に資する新しいIT技術の開発へと繋がります。

参加機関には、トリノ大学の化学科やリスボン大学の歴史学科を始めとした学術機関、テクナートやテラ・マリンといった企業、さらに国際考古学人類学研究所やヴィジュアル・ディメンションなど、様々な専門分野からの機関や企業が含まれています。

このプロジェクトは、その独自の方法論と協力関係を通じて、考古学と先端技術の融合による新しい知識の創出を目指しています。

プロジェクトの歴史と資金調達

このプロジェクトは、欧州連合(EU)のMarie Skłodowska-Curie ActionのHorizon 2020研究・イノベーションスタッフ交換交流プログラム(RISE プログラム)の支援を受けて2019年に開始。これにより、国際的な共同研究が活発化しました。

研究活動と成果展

鳶尾塚古墳での共同調査や出土品の理化学的調査など、多岐にわたる調査が行われています。研究成果展では、これらのデータをVRを活用して再現し、先進的なデジタル技術を用いた展示が行われています。さらに、島根県立古代出雲歴史博物館でも関連の展示が開催されました。

両大学間の連携強化

岡山大学の那須学長とトリノ大学のStefano Geuna学長との間で行われた意見交換をはじめ、両大学は共同研究を通じて強固な連携関係を築いてきました。特に、岡山大学は、多数のトリノ大学からの研究者と共同研究を進めています。

岡山大学の国際的研究交流

岡山大学は、欧州との研究交流を積極的に進めています。これには、RISE プログラムの活用や、考古学だけでなく、高等教育や宇宙物理学、情報セキュリティーといった分野での連携が含まれています。これにより、国際的な研究交流の軸を持った研究拠点の形成を目指しています。

まとめ:考古学を超えて

Fascinating and interactive exhibits developed with the latest information science and digital technology
最新の情報科学およびデジタル技術によって開発する魅力的でインタラクティブな展示

Beyond Archaeology (BEyond ARCHAEOlogy)」は、東洋と西洋を結びつける画期的な国際共同研究プロジェクトです。欧州の6つの研究機関および企業と岡山大学が中心となって進めるこのプロジェクトは、文理連携のもと、先進的な科学技術と実地考古学を組み合わせて新しい歴史的視点を提示します。特に、古墳時代の吉備地域の研究を中心に、ヨーロッパと日本の考古学者や科学者が協力して、歴史の新しい解釈や先端的な技術開発を目指しています。

この研究の一部として、ヨーロッパの研究者たちは岡山県総社市の鳶尾塚古墳の発掘調査に参加し、得られた資料を共同で分析。その成果は、情報科学やデジタル技術を駆使したインタラクティブな展示として、2022年に日本とイタリアの博物館で公開される予定です。

このプロジェクトは考古学の新しい可能性を探るだけでなく、文化財専門家の育成や学際的データの保存・活用、さらに市民への新しい知識の伝達という点でも大きな意義を持っています。参加機関には、トリノ大学やリスボン大学などの学術機関から、テクナートやヴィジュアル・ディメンションなどの企業まで、様々な分野のエキスパートが集結しています。

総じて、「Beyond Archaeology」は、考古学と先端技術を組み合わせることで新しい歴史的認識を築くための試みとして、大きな期待と興味を集めています。