静岡県では、新たな文化の拠点となるべく、新静岡県立中央図書館の開館を2027年度後半に見込んで進行中の計画があります。この新図書館は、JR東静岡駅南口の県有地に建設予定で、その基本設計案が先日明らかにされました。しかし、その背後にはさらに興味深い歴史的で考古学的な発見があり、古代東海道道路遺構が発掘された曲金北遺跡との共存が課題となっています。
新図書館は9階建てで、全体の中心に「資料体」を設置し、これに書庫などを集約することで、資料への好奇心を刺激し、学びや交流の広がりを促すことを計画しています。さらに、温かみのある空間作りには県産の木材をふんだんに活用し、富士山が見える方向を中心に閲覧室やテラスを配置します。また、公共図書館としては国内最大級の約200万冊の蔵書が可能で、そのうち80万冊は来館者が自由に手に取って閲覧できるようになる予定です。
一方で、計画地は歴史的な遺跡である曲金北遺跡の一部を含んでおり、古代東海道の遺構の存在が確実視されています。これらの遺構は地域の貴重な歴史資産であり、現状保存するべきと判断されているため、新たな建築計画との調和が重要な問題となっています。
このブログでは、新静岡県立中央図書館の計画と、古代東海道の遺構が発掘された曲金北遺跡との共存について詳しく探っていきます。静岡県の新たな文化拠点の開館と、古代の歴史が共存する未来にどうぞご期待ください。
新静岡県立中央図書館整備計画の概要

静岡県立中央図書館(Library of Shizuoka Prefecture Central)の整備計画について。同図書館は、施設の老朽化とスペース不足の問題が深刻化してきました。これに対処するため、平成29年度(2017年度)に全館を東静岡駅南口県有地へ移転整備する方針が決定しました。その後、教育委員会は新図書館の基本理念及び整備方針を集約し、令和2年度(2020年度)までに詳細な構想と計画を作成しました。
この計画地は東静岡駅南口県有地と呼ばれ、東静岡駅周辺地区に位置しています。この地区は静岡市が主体となり、平成5年度(1993年度)から土地区画整理事業を進め、平成29年度(2017年度)に完了しました。この区画整理により、街路、駅前広場、公園緑地等の都市基盤や街区が整備されました。さらに平成10年度(1998年度)には、JR東静岡駅が開業し、静岡県コンベンションアーツセンター『グランシップ』が開館しました。これにより新たな都市拠点が形成されつつあり、周辺には商業施設、金融機関、高層マンション等が立地しています。

計画地の面積は約 24,300 m²(東西約 230m、南北約 120m)で、現在はグランシップの駐車場として暫定的に利用され、普通車約 550台、大型バス 36 台の収容が可能です。また、都市計画法第8条に基づき、商業地域(建ぺい率 80%、容積率 500%)及び防火地域として指定されています。さらに、都市計画法第12条の4に基づく地区計画が決定され、「文化・交流施設、高度情報施設等の集積を図り、地区の中心的存在とする一方、新都市形成の先導的役割を担う街区として土地利用を図る」こととされています。
なお、計画地は曲金北遺跡という埋蔵文化財包蔵地の範囲に含まれており、地表から約 1.8mの深さに奈良時代から平安時代前期に使われた幅約 12~13mの古代東海道の遺構の存在が確認されています。これは地域の貴重な歴史資産であり、県では遺構を現状保存すべきとの立場を明確にしています。この点は図書館の整備計画においても重要な要素となります。
曲金北遺跡の道路遺構

静岡県コンベンションアーツセンター『グランシップ』建設に伴う曲金北遺跡の発掘調査から明らかになった最大の成果は、古代東海道の駅路と見られる道路遺構の発見です。この道路遺構は、両側に幅2~3mの側溝を持ち、その側溝間の距離は12~13m、そして調査区内での延長は約350mにわたる直線形状を保っています。その規模は全国各地で発見されている古代の官道と比較しても遜色なく、特にその一直線の形状から、古代の官道であると推定されます。
側溝や路面から出土した遺物を調査した結果、この道路は少なくとも8世紀の第2四半期から10世紀の初頭まで使用されていたと考えられます。そのため、この道路遺構は、古代東海道の駅路であるとほぼ確定されています。また、この道路遺構の位置と方向性を考慮に入れると、静岡・清水地域の地形を理解する上で大きな手がかりとなります。この遺構の推定路線は、その平野部を丘陵などの障害物を避けつつ一直線に貫く位置にあり、その方向性はほぼ北東から南西で、本地域の古代条里区画(ancient cadastral division)の東西軸と一致しています。

さらに、時間的視点からも、8世紀後半代までしか遡れない条里遺構よりも、この古代東海道の駅路と考えられる道路遺構の方が先に存在していたと考えられます。これは、静岡・清水地域においては、まず平野部を一直線に貫く形で古代東海道の駅路が設定され、その後にその道路を基準線として条里区画が設定されていったという考察を可能にします。地方においては、このような計画的な直線路を基準として、条里の施行や国・郡・郷の境界の設定などが行われる例が多いとされています。
古代東海道の駅路の存在は、地域計画の大規模さを物語ります。例えば、安倍・有度・慮原の各郡衛の位置や、国府の位置、そして息津や横田(太)の駅家の位置など、地域全体の配置がこの駅路に関連していると考えられます。8世紀後半に創建されたとされる片山廃寺の位置や性格も、この古代東海道と密接に関連していると推察できます。このように、古代東海道という視点から、古代の地域全体の状況を再評価し、理解を深めることができるでしょう。
新県立中央図書館計画地は既に発掘調査完了

新静岡県立中央図書館の整備計画は、曲金北遺跡(Kanegane Kita site)という埋蔵文化財包蔵地を含む地域に位置しています。この遺跡は奈良時代から平安時代前期に使われた古代東海道(Ancient Tokaido)の遺構があり、特に計画地の北側では地表から約1.8mの深さにその存在が確認されています。これらの古代東海道の遺構は地域の貴重な歴史資産であると考えられ、県ではその現状保存を推進しています。
この計画地は古代東海道の遺構が存在すると予想される範囲を含んでおり、施設計画エリアと駐車場エリアの北側にその存在が推測されています。敷地の北側は埋蔵文化財未調査エリアであり、地表面より約1.5m以深を掘削する場合には本格的な調査が必要となることが明示されています。加えて、古代東海道の遺構は現状保存を重視するため、地表面より約1.5m以深の掘削は禁止されています。
敷地の整備計画では、これらの要素を考慮に入れて、敷地の東側約9,700 m²を「施設計画エリア」とし、西側約14,600 m²を「駐車場エリア」として整備することを予定しています。
また、この地域は「平成19~23年度 東静岡駅南口県有地調査事業」による埋蔵文化財発掘調査の対象となり、古代東海道道路遺構の延伸範囲を除いて既に発掘調査が終了しています。この調査は2007年6月11日から2009年3月25日にかけて行われ、約16,100㎡の地域が発掘されました。

曲金北遺跡の第12次調査では、古代東海道を発見した南西側に位置する地域で水田5枚が検出されました。その中で最も上位に検出された水田は古代東海道の検出層位に相当します。検出された畦畔は全て擬似畦畔であり、規則的な配列が認められず、出土した遺物も長期にわたるため明確な時期決定は行えませんでした。しかし、弥生時代後期から古墳時代前期にかけては大量の木製品列が検出され、これらは大畦畔の芯材と考えられています。
以上の情報から、新静岡県立中央図書館の整備計画では、文化財の保護と現状保存を重視しつつ、適切な調査と整備を行うことが重要となります。このプロジェクトにおいては、考古学的な視点からの調査と現地の文化資産の保存が強く求められます。
参考文献 財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所 1996 『静岡県埋蔵文化財調査研究所調査報告68:曲金北遺跡 (遺構編)』財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所 財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所 1997 『静岡県埋蔵文化財調査研究所調査報告92:曲金北遺跡 (遺物・考察編)』財団法人静岡県埋蔵文化財調査研究所 静岡県埋蔵文化財センター 2012 『静岡県埋蔵文化財センター調査報告16:曲金北遺跡Ⅱ』静岡県埋蔵文化財センター